気づいたときには常にそばにいました。
そこから今日まで、その流れが途切れたことはありません。
そんな私という人間が、世界中にたくさんいると思います。
2024年3月8日お昼時。突然でした。
漫画家・鳥山明さん死去。
こうして書いている今も信じられません。こんなことを書いている自分が信じられません。
ひとしきり泣いて、これを書きながらまた泣いています。
そして今、私が物心ついてから、今日にいたるまでを思い出しています。
鳥山先生の作品といえば私にとってはドラゴンボール(以下DB)です。
私が気づいたころにはもうそれはそばにありました。Dr.スランプもアニメで見ていましたが、断然DBでした。漫画を読んでアニメを見て、ストーリーを理解するとか、このキャラが好きだとか、そういうのを考える前からただひたすらにDBが好きでした。フリーザの最終形態の見た目がすごく恐ろしいということだけは理解できました。
そんな小さな頃ですから、私の意思とは関係なく私の人生の一部になっていたのです。
ここでついでに私の家での話を書かせていただくと、超絶にDBが流行っていた頃(常に流行っていますが)、兄がDBの映画を観に行きたいと親に頼んだそうです。その頃まだ我が家にはDBの漫画はなく、母はそんな野蛮な漫画の映画を~?と渋ったそうですが観に行くことに。するとまさかのバトル漫画とは無縁だった母がはまってしまい、漫画を揃え、一気にファンになったそうです。そんな経緯があって、そののち私も鳥山先生のことを好きになりました。全然興味のなかった人までいきなり虜にする、そんな圧倒的なエネルギーがそこにはあったのです。
DBは話が面白い。でもそれと同時に、絵が魅力的です。その半端ない画力。キャラクターはもちろんのこと、乗り物や建物の造形美がすごい。現実には存在しない乗り物なのに、実は存在していてそれを模写したんじゃないかというほど細部にまでこだわったイラストは、ちょっと調べればいくらでも出てきます。
いやこんな誰でも知っているようなことを書いても仕方ないですね。それほどの存在です。
というわけで、そんな急にめちゃくちゃハマった母ですから、当然ドラクエも買うわけです。RPGなんぞついぞやったこともないのに、鳥山先生がキャラクターデザインをしているから買うわけです。そういう人が、今に至るまでたくさんたくさんいたと思います。
だから、ドラクエもいつのまにか気づけばそばにありました。すぐには遊ばせてもらえなかったけど、家族が遊んでいるのを後ろから眺め、画面に映る小さなキャラクターがあちらへ行ったりこちらへ行ったりするのを、ストーリーもわからないのに眺めていました。説明書を見て、こんな小さなドット絵が、このキャラクターなんだと想像力を働かせました。
1だと鎧とか着てるのに2は全然デザインが違うなぁとか、5はDBみたいに筋肉がすごいな!とか、7は急にデザインが変わったな!?とか……。8でもう筋肉は描かないのかぁと思ったり、11でやっぱり鳥山絵はいいなぁ!と思ったり。そうやってあの頃からずっと、連続性を持って、私は鳥山先生の絵を見てはいつもわくわくしていました。12は、どんな主人公かなと思いを馳せたり……。
モンスターだってそうです。今ではもう当たり前になったスライムのデザインはもちろんのこと、愛嬌があったり不気味だったり、他のRPGでは見られない個性豊かなモンスターたち。それらと戦って強くなっていく。
当たり前すぎて気づかなかったけれど、すごく贅沢な時間だったと思います。
今でもメタリックモンスターズギャラリーを店頭で見ると、かっこいいなぁほしいなぁと思います。それってやっぱり、鳥山先生がデザインしたモンスターたちが素晴らしいから。私の部屋には、ちょうどいま左のSwitchを置いている棚には35周年のときに買ったシャンパンゴールドのキングスライムが、右の本棚にはプレゼントでもらったスライムナイトが、後ろの棚にはPS4のスライムコントローラーとUSJで買ったキングスライムのポップコーンバケットがあります。ベッド下の衣装ケースを開けばまだまだ出てきます。こんな風に、生活の目に入るところに鳥山先生の作品があります。
そんな風に、あらゆる部分でそばにいて当たり前の存在でした。普段意識していなくたって、そばにいた存在でした。
だから多分今こんなに泣いていて、そんな私が世界中にたくさんいるんだと思います。
これからのドラクエはどうなるのかとか、ドラゴンボールDAIMAはどうなるのかとか、そういうことを考える余裕は今はなくて、ただ自分がこれまでどんな風に鳥山先生に触れてきたかを考えていたいです。
正直何も書けないと思っていましたが、思い出をなんとなしにつづっていると気持ちがあふれて、つらつらと書き連ねてしまいました。
今はまだ悲しみだけが勝ってしまうけど、それでも私のこれまでのたくさんの部分を豊かにしてくれたことは確かで、これからもそうであると思っています。
私、本当にドラゴンボールが大好きです。ドラクエも鳥山先生じゃなかったら出会ってなかったかもしれません。
悲しくて悲しくて、とてもありがとうございますなんて言えない気持ちで、こうして初めの頃からを書いてようやく今その気持ちが自然とこみ上げてきました。
ありがとうございます。たくさんたくさんありがとうございます。
でもやっぱり、もうしばらくは悲しいし、泣いていると思います。
今は泣いている場合なんだと思います。
(文・やなぎアキ)
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