ドラクエ7はドラクエ初の3Dグラフィック。
従来のドット絵の雰囲気を残しつつ、プレステならではのグラフィックで立体的な世界を冒険することができるようになった。
それにより、表現の幅とできることが一気に広がった。
各地を冒険していると、ああ~3Dになったからこういう表現なのね、とか、3Dになったからこういうことが出来るのね、というのを見かける。
今回は、そんな「3Dになったから開発陣が嬉しくなって作ったんだね~」と思っちゃうものを紹介しよう。
階段裏の階段
これ。すっごくこれ。お城などの大きな階段、の裏に地下への階段があるやつ。これ。
しかもこれの何がすごいかというと、旅の始まり、グランエスタード城にあるのだ。
「ほぉらほら、今作は3Dだぞ~」と言わんばかり。「ほぉら、3Dだから回さないとこういう要素見逃しちゃうよ~」といきなり突き付けてくる。
浮かれすぎだろ。
とはいえ、これは実は大好きだ。「わー、裏に階段がある~」と素直に喜んだものだ。3Dになったんだぁとまんまと嬉しくなった。術中である。
ちなみにグランエスタードの階段裏の階段は、説明書にしっかりと書いてある。
なんと階段の下に階段が!これは回転させなきゃ分からないよ!
とのことだ。説明書もノリノリ。
各地の宝箱
各地の宝箱、主に街中にある宝箱だが、これらの中には回転させないと見つけられないようなものがある。
フォーリッシュの小部屋、山頂の教会の倉庫の宝箱、ブルジオさんちの地下の宝箱。
初期位置からだと壁などに隠れてしまっていて見えないのだが、回転させることで「あ!こんなところに扉が!」「あ!こんなところに宝箱が!」となる。
3Dであることを最大限に生かした隠密だ。これを思いついたときはさぞ嬉しかっただろう。しかもこういうのに入っているアイテム、石板である確率が高い(主観)。重要アイテムだからこそ、隅々まで見渡して見つけてもらおう!と思ったのかもしれない。
いや許されねぇよ。いくら3Dであることを活かしたかったとはいえ、許されねぇよ。フォロッドの占いババに話を聞き、「いやなくない?は?」と思いながらも見つけたときのあの感情、「やったー!」じゃなくて「こんなとこに置くなや!」だからな。
聖風の谷
何かを挟んで両側に集落があるという構図はドラクエ4のリバーサイドが思いつく。
それの強化版が聖風の谷だ。
町の中であれば基本360°回転できるドラクエ7だが、聖風の谷では屋外では回すことが出来ない。
その代わり、対岸を結ぶ橋を渡る時、それは起こる。
なぜか急にカメラワークがぐいっと、こうぐいっと回るのだ。対岸にカメラを向けるため、橋を渡っているときにカメラをぐいっと勝手に回すのだ。
悦~~~。これは悦に浸ってるやつ~~~。この演出があることで、まさに谷に生きているのだなということがわかり、リファ族がいかに辺境の地に住んでいるかがひしひしと伝わる。
ぶっちゃけ好きな演出。
が、ドラクエ7を知らない人にこれを見せて、「な?」と言ってみたところ、「何が?」と言われてしまった。当時の感動は現代ではもう通じない。
風の迷宮
もうこれだろ。むしろこれだろ。
グランエスタードの階段も捨てがたいが、これだろ。だってこれだもの。
3D、でもどこかしらドットっぽい世界観のドラクエ7だからこそ実現したダンジョンである。ドラクエ8からのグラフィックだと逆に実現できないだろう。
立体的なダンジョンを、床が変わるたびに上が下へ下が上へ、上を下へのジレッタである(違う)。
最初に見たときは度肝を抜いた。始祖の村もすごかったが、青でのみ構成されたそのダンジョンは、どこに向かえばいいのかまったくわからず平衡感覚が混乱した。
通常なら、下から出てきたなら上へ、右から出てきたなら左へ向かえばいいが、風の迷宮にはそれがない。我々はどこから来てどこに行くのか、それはだれにも分からない……。
さすがにめんどくさすぎるダンジョンなので階層自体は浅いが、もしもう1階層増えていたら多分キレてた。絶妙なバランス調整だったと言える。キレさせないでくれてサンキュー。
初3Dのドラクエなだけあって挑戦的な要素が色々とあった。7のシステムを使ったドラクエ4リメイクや、比較的近いPS2版ドラクエ5などもあるが、結局は平面だったFC版SFC版を基にしている。そして次作のドラクエ8ではさらなる進化を遂げたので、この独特な雰囲気というのはドラクエ7だけのものとなった。
だからこそ、「なんだよそれぇ!」と思ったとしても、この要素を愛でていきたいと思う。
いやでもやっぱり、回転させないと見つからない宝箱は許されないぞ。
(文・やなぎアキ)
関連記事