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【ドラクエ11】初見の人にはSを勧めるけど、無印もいいんだよなと心の内で葛藤しない?

ドラクエ11はPS4と3DSで発売された無印版と、その後多くのプラットフォームで発売されたS版がある。

今から初めて11をプレイするとなるとどちらをあそぶのか。グラフィックもほとんど変わりないしシステム的に便利になっているし、Sを選ぶのが普通だろう。なんといってもSには追加ストーリーがある。

 

だがしかし、その追加ストーリーゆえに初見プレイにSを勧めてもいいものかと葛藤することがないわけではない。

追加ストーリー自体は私もすごく好きだ。今まで見たことのないシルビアの弱気な姿には心打たれたし、カミュが記憶喪失になっていた理由もすごく納得した。ロウの追加ストーリーは涙なしには語れない。素晴らしい追加要素だったと思う。あのストーリーのおかげで、仲間との絆がまた一つ深まったのだから。

 

この記事でもその素晴らしさを語っている。

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しかし、いかんせんストーリーの挿入タイミングが気になってしまう。

 

追加ストーリーのタイミングは世界崩壊から勇者が魚として目覚めるまでの間。

無印では世界崩壊のちに勇者が目覚め、実はあの日から既に何か月も経っていることが伝えられる衝撃の展開が待っている。仲間たちは誰もおらず、一体彼らはどこにいて何をしているのかもさっぱりわからない。完全な絶望状態からスタートする。

これがSでは完全になくなってしまっているのがもったいない。Sだけプレイした人も多くいるだろうし、その方たちも十二分に11を楽しんだのだろうから多分私の考えすぎなのだが、それでも本当にいいのだろうかと思ってしまう。

追加ストーリーによって、仲間は無事で各々こういうことをしていましたよ~ちなみに各町はこんな感じです、とけっこう見せてくれるため、最後の砦での攻防と人々の絶望がやや薄れている気がしてならない。少なくともみんなは無事だし、どこにいるのかわかっているメンバーもいる。無印のときに感じたあの悲しさ寂しさがSだとだいぶん薄れてしまうのではないかと思ってしまう。

また一つ懸念点として、追加ストーリーは主に離れている期間に仲間はどうしていたのかを描いているが、セーニャとベロニカにはそれがない。ベロニカについては当然である。またベロニカだけを描かないのは明らかにおかしいので妹であるセーニャの追加ストーリーもないのだろう。だが、この二人がいないことで、どうして?何かあったのか?と思う余地ができているのはいいのだろうかと思う。それでなくともフラグめいたことを言っていたベロニカなので、勘のいいひとは気づくかもしれない。

ここまで考えると、頭の固い私はSを無条件で勧める勇気がはなくなってしまう。私にその決断は難しすぎる。

 

せめて追加ストーリーを、仲間が集結したあとに入れるとかだったらよかったのだが。

で、じゃあ「追加ストーリーはすごくいいんだけど挿入されるタイミング的にちょっと勘づいちゃう部分があるかもしれないから~、それが気になるんだったら無印がいいと思う」といって勧めればいいかというと正直厳しい。それ自体が下手したらネタバレになるからだ。ネタバレの基準は人それぞれだが、単にストーリー展開をバラすだけでなく、先入観を植え付けることも場合によってはだめだと私は感じる。映画の予告の「ラスト〇分、全てがひっくり返る!」みたいなのが良くないなと思うのと一緒。

11をプレイしていて、うっすらとフラグを感じたものの、彼女が本当にいなくなってしまうことを誰が予期しただろうか?予期できなかったから驚き、それと同時に言いようのない悲しさが溢れてきた。これを先入観を与えてしまっては、その純粋な感情の動きを阻害してしまうことになる。だからそういうふうには勧められないし、となってくると無印をやる利点が伝えられずにSやっとくのがいいよと言ってしまう。追加ストーリーのタイミング以外は絶対Sの方がいいに決まっているのだ。あくまでタイミングがちょっと……なだけで内容は素晴らしいのだから。

無印やったあとSをやるというのはもっと言えない。さすがにそれをやるにはボリュームがありすぎる。

あと、こういった理由で無印を勧めるのはちょっとやりすぎかなと自覚があるので、結局Sを勧めている。

 

こんなことを考えている私ですら、結局「Sで良いと思う」と言うのだろうから、今更11の無印をやる人は稀有なのかもしれない。だから最初に11を何の情報もなくやれたことは自分にとって財産なんだと思う。

まだなんの情報もなく、仲間たちがどんな人たちなのかもよくわからず、これから何が待ち受けているのかもわからなかった時。

世界が崩壊し、たった一人になってしまった私はひたすらに仲間たちと再会したかった。頼もしい新しい仲間グレイグと共に情報を集めながら旅をし、奇妙な格好をして練り歩いている集団がいると聞いたときは、純粋に魔物だと思ったものだ。それが世助けパレードであると知った時の、なんだよぉ!シルビアじゃんか~!という心からの安堵。これは無印でなければ味わえない。

まさかあの気高いマルティナが魔物化していたときの驚きと絶望感だってそうだ。

そして私は、離れ離れになった仲間たちの中でも、相棒であるカミュに早く再会したかあった。カミュならきっと一人でもたくましく生きて、再会すればまた相棒として一緒に戦ってくれると思っていた。それが蓋を開けてみれば、記憶喪失の気弱な青年になっていたのだ。あのカミュがこんな風になるなんて。それもそうだ、それほどまでに命の大樹の崩壊が世界と人に与えた影響は大きかったとショックだった。これも、追加ストーリーを見ていれば、カミュが記憶喪失であることはわかり切っている。

仲間と離れ離れになり心細かったあの気持ち、仲間一人一人と再会し喜び、時には悲しみ、その一つ一つを私はよく覚えている。これがもしSだったら、この気持ちは味わえなかったのだろうと思うと、無印をやれてよかったなと思う。

 

最初から全てを過不足なく描くことは良いことだが、不足していたものを最初にプレイしたからこそ、感じたものがある、思い出がある。それを皆にも味わってほしいと思いながらも、それはただの私のわがままであり押し付けである。

が、こういう葛藤を分かってくれる人もいるのではないかと今回書いてみた。

色々考えて勝手に一人で悩んでいるわけだが、それもドラクエ11が大好きゆえである。結局無印だろうがSだろうが、ドラクエ11をやってくれるならそれが一番良いわけだ。

 

(文・やなぎアキ)

 

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