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【ドラクエ11】ドラクエ11ってこれまで以上に仲間たちの過去を語ってくれたなと思う

ドラクエ11は、これまでのナンバリング作品に比べてもかなり仲間たち一人一人にしっかりと焦点を当てていたように思う。

それだけに愛着がわきやすく、旅の途中での離散や別れに心をかき乱されたものだ。

 

そして改めて考えてみると、それまでのドラクエ作品に比べると主人公に出会う前の物語が一人一人わりとしっかり目に描かれているなと感じた。

それまでの作品でも過去を描かれた仲間たちは多くいたが、どんな人生を送ってきたか謎なキャラクターも多い。例えばドラクエ6のチャモロは、ゲントの一族の長老の孫であることはわかるが、どのように育ってきたかの描写は一切ない。

 

カミュ

カミュの過去については、本人があまり語りたがらないというのもあり、かなり後の方にならないとわからない。彼の故郷であるクレイモランを訪れた際はどこかそわそわしており、何かあるんだなということはわかるが、それが分かるのはもう少しあと。

彼には妹を助けてやることが出来なかった苦い思い出があり、その贖罪のために旅をしていたことが明かされる。勇者の相棒なだけあって、このあたりのイベントはかなり力が入っており泣かされたプレイヤーも多いだろう。

キャラクターの過去を語るだけではなく、そこで起こった悲劇までも解決できたのだからドラクエの仲間キャラの中でも破格の待遇である。

過去エピソードで言えば、イシの村で平和に暮らしていた勇者に比べてなんと波乱万丈なことか。そんな君が相棒になってくれてありがとう。

さらに彼の場合スピンオフのトレジャーズものちに発売されたわけだが、これは11本編とは関係ないため割愛。

 

ベロニカ・セーニャ

他の仲間に比べると明確に過去エピソードがあったわけではないのがこの二人。

しかし会話の端々で彼女たちの幼少期からの絆を感じることはできる。また、聖地ラムダで一定期間の間読める天才まほう使いベロニカの日記からも、二人の仲の良さを知ることはできる。

また彼女らの場合は深く語りすぎないことによって、ベロニカのイベントの際の聖地ラムダの悲しみとセーニャの想いと決意が深々と伝わってくる部分はあると思う。勇者たちにとって彼女は何よりも大切な仲間であることには違いないが、一緒に過ごしてきた長さ、見守ってきた長さが違うわけで、その微妙な違いがあのラムダでの夜にアンニュイと漂っていた。ベロニカとセーニャの間には、自分たちは知らない様々な想いと記憶がある。それを今はセーニャしかわからない。過去を語らないことはそんな切なさを演出することに一役買っている。

他の仲間たちのことが色々わかるからこそ、あえて二人はわからないのがいい。

 

シルビア

ソルティコを訪れた際のシルビアらしからぬ奇妙な行動。カミュの時と同じく、これは何かあるなと思わせてくれる。

そしてその後のプチャラオ村でのバハトラ親子のイベントによって、父親と確執があることを明かされる。彼女がどうして旅芸人として人々を笑わせているのか、どうして騎士道の心得があるのかが一気にここで明かされる。

いつでも誰かを楽しませようとしてくれて、パーティーがくじけそうなときも大人として時には引っ張ってくれたシルビア。でもそんな彼女にも壁はあって、それをなかなか乗り越えられなかったんだと思うと、これまでも十分魅力的だったのに一気に人間味が増していく。そして、シルビアだって人の子なんだなという、当たり前すぎることも思い出させてくれた。ティーンなキャラならともかく、30代のキャラの親を想定することはあまりなかったのでなかなか新鮮な体験だった。

 

マルティナ

旅の武闘家、でも実はデルカダールの姫、というのはかなり早い段階で明かされる。

お姫様だったというのを伝えるだけではなく、ちゃんと回想シーンを用意してドレスを着たお姫様なマルティナを見せてくれる。勇者の母エレノアと仲良しで、赤ん坊の勇者も可愛がってくれており、マルティナは姉のような存在なんだと思わせてくれる。もちろんそのあとユグノアは魔物に襲撃されてしまうわけだが、その際に勇者のことを逃がしてくれたのもマルティナ。いや実際は川の流れが激しすぎて抱えていた勇者を手放してしまったわけだが、十分命の恩人だろう。

ここまで丁寧に語ってくれるからこそ、マルティナの勇者を守りたいという想いに説得力が生まれる。この人すごい守ってくれるなぁではなく、だから守ってくれるんだ……と染み渡る。自分がまだ赤ん坊だったときから、そんな風に思ってくれていた人がいたんだという、ゲーム外の物語に思いを馳せる。

あと赤ちゃんの頃の姿も出てくるの良い。マルティナは勇者の赤ちゃん時代見てるけど、勇者もマルティナの赤ちゃん時代見ちゃったよ~って。

 

ロウ

勇者の唯一の肉親で、パーティーの最年長。

オープニングではユグノアの先代の王としての威厳を示し、11Sではさらに過去が細かく深堀された。

王様だったけれど、親しみやすくて誰にでも慕われる。そんな今と変わらない姿を見ては、その後に起きる悲劇を思い出し、それでも変わらず明るいおじいちゃんとして元気に生きていてくれているのがとても頼もしい。

勇者が知ることのできない、平和な時代のおじいちゃんの姿。本当だったら一緒に過ごせたはずのおじいちゃんの姿。ユグノアはなくなってしまったけれど、そんな過去の幸せなおじいちゃんを取り戻すために、必ず世界を平和にしようとプレイヤーの気持ちが引き締まる。

 

グレイグ

グレイグのことを語る上で欠かせないのがホメロスの存在。

幼い頃から切磋琢磨して来た唯一無二の親友。袂を分かつことになってしまった二人だが、その幼少期の姿を見せられると、なぜこの二人が……と思わざるを得ない。あんなにも未来に目を輝かせいた少年たちだったのに、今はこうして対峙している。

物語前半で勇者のことを執拗に追っていたその姿だけでは、二人の間にこのような物語があることもわからなかっただろう。誓いのペンダントから二人が親友であることはわかっても、そのペンダントにどんな思いが込められていたかまでわからなかっただろう。

堅物な英雄にも、まっすぐで純真な子供時代があったのだ。デルカダールのために、小さな姫を守るために、友と強くなろうとした過去が。あの過去を見せられたからこそ、ホメロスの最期が、そのときのグレイグの言葉が忘れられない。

 

 

通常仲間たちのことは出会ってからのことしか分からない。これまでの作品でも過去を語ってくれたキャラはいたが、11のようにほぼ全員というのはめずらしい。当然彼らも一人の人間。勇者に出会うまでの人生があり、それだけ思い出がある。その一部でも共有できることは喜ばしいことだ。一部であっても、彼らのことをより深く知ることができる。彼らもゲームの中で自らの人生を歩んできたのだとわかる。それに触れることで、より彼らの息遣いを間近に感じる。

だからこそ悲しみは半分こに、喜びは倍にをこれまで以上に実感できたように思う。仲間の別れに涙し、仲間との再会に涙し、8人で大空の上喜びを分かち合えたのだ。

 

(文・やなぎアキ)

 

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