バーン様の最終形態、鬼眼王(画像は鬼岩城)。
人型のままでは竜魔人となったダイには勝てないと判断し、自身の鬼眼の力を解放した究極の姿です。
バーン様は自身の魔力を他者に送り込むことでドラムーンという雑魚モンスターのゴロアを強力な魔物に変化させました。
それと同じことを自身にもすることで、巨大な岩山のような体を持つ魔獣の姿になりました。しかしゴロアの時とは違い、魔力の源である自分そのものを変化させているため、二度と元には戻れません。
それゆえにバーン様はこの奥の手は生涯使わないだろうと思っていました。
なんせバーン様は無敵。天地魔闘の構えが誰にも破られたことがなかったように、バーン様が負けるかもしれないという状況に陥ることなどあり得ぬことだったのですから。
だからこそ彼は鬼岩城を作らせるさいに、せめて城だけでも自身の最強の姿にしようと形を似せ、名前も鬼岩城にしたのです。かわいいね。
それほどまでに、バーン様にとってはなるはずのない姿でした。この姿になってしまっては、太陽を手にした魔界を統治することもかなわないだろうからです。
しかしダイの勝利への執念が、バーン様にそれを決意させました。勝つために全てを捨て竜魔人となったダイの猛攻に恐れをなし、敗北するよりは良いとバーン様は判断したのです。
そうして成ったのが鬼眼王。
それまでのカイザーフェニックスやカラミティウォールなどの多彩な技は身を潜め、単純な殴り、蹴りという打撃攻撃が中心になりました。その威力は圧倒的!巨大ゆえにスピードではダイが勝りそうなところですが、そこも抜け目がなく、まさに最強にして最凶のパワーで蹂躙していきます。
勝利だけを追求したことにより、ダイは絶対絶命のピンチに陥ります。
が、そこはやはり勇者。変身前からバーン様の胸に刺さっていたダイの剣を使いダイは勝利をおさめます。さすが勇者の一太刀は違うぜ!
しかしこれ、かなり紙一重の勝利です。
バーン様の勝利も全然あり得たと思います。
なんせ、これでとどめを刺すに違いない!という華々しい再登場を果たした真魔剛竜剣を、へし折るほどに頑強な身体です。
外からの攻撃などほとんど受け付けないのではないかという鉄壁防御、その肉体から放たれる強烈な打撃。どこをとっても隙がありません。
鬼眼王になる前にダイの剣を刺せていなければ、まず勝てなかったでしょう。そしてダイの剣が、勝つことを諦めず抜かせないぞ!と踏ん張っていてくれたおかげでもあります。持ち主であるダイが諦めかけていた時も、剣は決して抜かれまいと踏ん張っていました。そんな剣君の意思が勝利を手繰り寄せたのです。
これがなかったら、ダイは正真正銘次の手を失ってしまい負けていた可能性、ありますね。
この紙一重の勝利を引き寄せる奇跡こそが、勇者の力であり絆の力です。
ところでバーン様はあの戦いに勝っていたらその後どうやって生きていくつもりだったのでしょうか。
鬼眼王になったときは、大魔王バーンの名を守り恐怖の対象としてあがめられ続けられればいいみたいな発言していましたけど……。
勝利したところであの体で生き続けるんですよね。しかも魔族なのでめちゃくちゃ寿命が長いです。凍れる時の秘法はもう使えないとは思いますが、それでもかなりの余生があるはず。仮に凍れるときの秘法が仕えたとしたらシュールですけど。ネクストミストバーンがバカでかいってことですもんね。バカでかい無口なミストバーン。
それはいいとして、あの体で長い時を生きていくとさすがに不便さが際立ちます。
まずもう二度とチェス打てない。
いちいちチェスで例えてくるくらい、あんなにチェスがお好きなバーン様がもうチェスを打てないんですよ。これはショックですよ。特注のバカでかいチェスを作ってもらうという手もありますが、そうなってくると今度は一緒に指してくれる相手がいないです。
あといつもたしなんでいるワインを飲むこともかなり難しいでしょう。
チェスにしろワインにしろ、上の方にいるバーン様本体がせめて腕だけでも出ていればまだやりようがありました。しかし彼は頭部と肩周り、腕の一部だけを残して全部鬼眼王に肉体を飲ませているので、日常生活を全てあのバカでかい腕で行うしかありません。設計ミスだろ。腕のほとんどの部分は露出しているのになんで手首の先は飲ませたんです?もうあとちょっとだけ残しておけばよかったのに。
さらに、本体は元のサイズのままなので、使うフォークとかはそのままのサイズでいいはずなのに、実際をそれを扱う腕がバカでかすぎるのでバカでかいフォークを使うことになるんですよ。あの体めちゃくちゃ燃費悪そうなのに、食物を摂取する口が小さいのかわいそすぎます。ファリンかよ。鬼眼王の部分にも口作っておけよ。やっぱり設計ミスだろ。
大体バカでかすぎて、話し相手もろくにできないと思うんですけど。ヴェルザーだってあそこまででかくはないでしょう。一緒におしゃべりをするには肩に乗ってもらうしかありません。小鳥を肩に乗せるかのように魔族の面々を肩に乗せるバーン様、シュールですね。威厳あるかそれ?
何回バカでかいっていうんだって感じですが、それくらいバカでかいのでそのバカでかさゆえの弊害がどんどん浮かんできます。バーン様のこと大好きなんですけど、さすがに鬼眼王の姿のまま勝利してもさぁと思わざるを得ないです。
が、その弊害を考慮に入れても、敗北よりは良い!敗北よりは…!!ということだったのでしょう。チェスが打てないとか、ワインが飲めないとか、小鳥を肩に乗せる優しい魔獣の構図になってしまうとか、そういうのは敗北することに比べたら些末なこと……!
それほどまでに勝ちに執着した結果が鬼眼王です。
ある種の生き汚さでもあります。そんな泥臭いバーン様も好きだ。そしてそこまでなりふり構わずやってきた大魔王に辛くも勝利するダイも好きだ。そういえばダイは竜魔人から仮に戻れなかったとしてもチェスもできるし食事も普通に取れるんだよなぁ……。もしバーン様が勝っていたら、余もああいう形態にしておけばよかったなとか思ったりして……。まぁ誇り高いバーン様ですから一片の悔いもないと信じたいですが。
もしあのままバーン様が勝っていたら、バーン様を称える歌姫になって、バカでかいって歌詞にめっちゃ入れたいです。バカでか大魔王バーン。
(文・やなぎアキ)
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