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【ダイの大冒険】武人クロコダインの功績

ダイ大の魅力はいくつもあるが、そのうちの一つが大人たちの大人ゆえの渋さにあるだろう。

ダイたちのようなフレッシュな若者の華々しい活躍と同じくらい、大人たちの重みのある活躍も目立つ。

今回は、クロコダインに焦点を当ててみる。調べてみたところ、クロコダインは人間換算で30歳くらいだそうだ。

 

ロモスでの潔い撤退

バーン率いる魔王軍の中の百獣魔団を率い、獣王と呼ばれるクロコダイン。

中間管理職魔軍司令ハドラーの命によりロモス攻略を任されたクロコダインはそこでダイたち一行と拳を交える。まだデルムリン島を出たばかりのひよっこダイにとって彼はあまりにも強大な敵であった。マァムが現れなければ、クロコダインはダイのことをそのまま倒していたかもしれない。

その後ロモス城でのダイたちとの再戦で、クロコダインは己の信念を曲げてザボエラの策略に乗ってしまう。しかし、弱い人間と侮っていたポップの勇気の攻防により、自身の過ちを恥じることとなった。人間の強さを目の当たりにしたのだ。

武人としての誇りを自らが傷つけてしまったクロコダインは、潔く負けを認め城から飛び降りる。敵ながらあっぱれな生きざまだったと、誰しもが思うことだろう。

 

ヒュンケルの道しるべ

死んだと思われたクロコダインはザボエラの手により事なきを得ていた。しかし、やはり先の戦いで人間への考えを改めたのか、魔王軍から脱走するクロコダイン。

パプニカにて不死騎団団長のヒュンケルと剣を交えるダイたちの助太刀に入る。この際にヒュンケルのブラッディースクライドからダイをかばっている。この時から彼は体を張って仲間を守っていたのだ。

そして、人間への憎悪をたぎらせるヒュンケルに、人間の強さ、優しさを説く。人間であるヒュンケルにそれがわからぬはずがないと。しかしヒュンケルにその言葉は届かなかったのか、そのまま倒れてしまう。次に生まれる時には、人間になれることを願って。ダイたちの優しさゆえの強さに救われたキャラクターは作中にたくさんいるが、その第一号はクロコダインだった。作中幾度となく語られる人間の強さを、最初にはっきりと言葉にしたのはクロコダインだった。

結局クロコダインは生きており、その後ヒュンケルの命で治療されることとなる。

そして、溶岩の中で死にゆくヒュンケルを救ったのもクロコダインだった。

死ぬことで罪を償おうとするヒュンケルにクロコダインは作中屈指の名言を言う。

 

オレは男の価値というのは、どれだけ過去へのこだわりを捨てられるかで決まると思っている。
たとえ生き恥をさらし万人にさげすまれようとも、己の信ずる道を歩めるならそれでいいじゃないか

 

これは恐らくクロコダインがロモス戦後に自身に対して思ったことではなかろうか。汚い手でダイたちを倒そうとした彼は、ヒュンケルと同様命を捨てたかったはず。それでも魔王軍を裏切りダイたちと共に行こうと決めたのは、己の信じる道を行くため。これがヒュンケルとクロコダインの人生の経験値の差だ。

 

ギガブレイクでこい

その後はすっかりダイたちとの仲間としてバルジの島で共に戦ったり、バダックさんと友達になったりと、人間とは違う異形のものでありながら着実に絆を育んでいった。

そしてバランとの戦い。

記憶を失ったダイを守るためとはいえ、クロコダインと竜の騎士バランとの力量の差は歴然だった。クロコダインの攻撃はバランに効かぬ。しかし退くわけにはいかぬ。

たった一人竜騎衆と戦いに行ったポップの意を汲み、自身もまた命をかけてダイを守る。なぜ死ぬと分かっているのにそれでも戦うのかと問うバランに、ダイは太陽だからだと答えるクロコダイン。生きとし生けるものには太陽が必要である、だからそれを奪おうとするものとは戦わなければならないのだ。

バランにとってソアラが太陽であったように、バーンが太陽を欲していたように、なくてはならない存在。

クロコダインは皆の気持ちを代弁するのがうまい。

ギガブレイクを真っ向から受け止めるその漢気。魔王軍から寝返った後も、バランやハドラーが一目置くのは至極当然である。

 

一歩引いて見つめる

クロコダインはアバンの使徒ではないため、ダイたち若い世代からは一歩引いた立場でものを見ているように思う。それがまた大人の余裕を見せてくれる。

チウにモンスターを仲間にするための獣王の笛を気前よく与え、彼の成長を優しく見守ったりもした。彼が勝手に獣王を名乗っても、それに対して異を唱えるわけでもなく豪快に受け入れいてる。

ダイたちの意を汲んだ上で自ら適切に判断し戦う姿を見ても、獣王として一個師団を率いていたとは思えないほどの謙虚さがある。その謙虚さ、そして武人としての誇りの高さゆえに、バランやハドラーからも一目置かれていたのだろう。

猛々しい見た目、その体躯、荒々しい戦い方、それでいて時には冷静に戦局を判断し時には撤退をする。見た目の通りだけではない奥深いキャラクター性が彼にはある。

 

 

獣王クロコダイン

その後はダイたちの活躍にかすんでしまい目立った出番は少なくなるが、敵の強力な攻撃を受け止めダイたちを守るなど、まさにパラディンとして頼もしい活躍を見せてくれた。不死身と言えばヒュンケルだが、クロコダインもたいがい不死身である。

ダイたちの中でも圧倒的に年長者ではあるが、常にダイたちの意思を尊重し、時には自ら判断し戦って来た。その絆は確かなものであり、ヒュンケルと共に魔王軍に捕まり、ヒュンケルが闇の力に取り込まれそうになったときも友の言葉を信じ続けた。

ヒュンケルが見事闇の力に打ち勝ち、ダイたちと合流したあとはモンスターの大群をその怪力で蹴散らして見せた。その後、ザボエラをその手で葬り去り、かつての自身の過ちにようやく決着をつけたように思う。己の信ずる道を歩んだ結果である。

バーンパレス突入後はいよいよ戦力外になっていたが、最後まで戦いを見届けたいという彼の気持ちを止められるものはいないだろう。彼を救った太陽の最後の戦いを見届ける。これもまた彼の信ずる道なのだ。

 

 

終盤になると彼の活躍は少なくなるが、特に序盤は彼の成した功績というのは非常に大きい。敵とはいえポップの大きな成長の糧となり、ヒュンケルが生きる道を示し、バランとの戦いではもし彼がいなければ間違いなくダイは敵の手に落ちていただろう。

間違いなくダイたちにとって、精神的にも肉体的にも支えになっていたクロコダイン。

大きな体で優しくダイたちを支えた武人は、きっとデルムリン島でも多くの魔物たちに慕われることだろう。

 

最後に、今回は触れなかったが、現在連載中の『勇者アバンと獄炎の魔王』にもクロコダインは出てくる。

作中で彼がどんな活躍をするのか。クロコダインファンの方でまだ読んでいない方はぜひ読んでみてほしい。ガンガディアってキャラがすごくいい味を出しているので。

 

(文・やなぎアキ)

 

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