ドラクエ5の中で、いえ、ドラクエの中で最も憎い敵といえばゲマを上げる人は多いのではないでしょうか。
父親を目の前で殺され、自身を奴隷に貶めた張本人。
それだけでも十分憎しみに値しますが、これがリメイク版になるとすごかった!!
皆さんご存知だとは思いますが、ゲマの悪行をオリジナルとリメイクで見比べてみたいと思います。
SFC版ゲマ(オリジナルのゲマ)
・主人公の目の前でパパスを焼き尽くす
・ゴールドオーブを壊す
・主人公とヘンリーを大神殿に連れて行き奴隷落ちさせる
・竜の右目を盗む
最大の悪行はやはりパパスを殺したことです。
しかしその後主人公を大神殿に連れて行ったあとは、意外と活躍はしていません。ボブるの塔での再会は比較的あっさりしており、そのまま彼は主人公一行に倒されてしまいます。その後は光の教団の教祖であるイブール、そして諸悪の根源ミルドラースを相手していくことになります。
リメイク版のゲマ
・主人公の目の前でパパスを焼き尽くす
・ゴールドオーブを壊す
・主人公とヘンリーを大神殿に連れて行き奴隷落ちさせる
・主人公夫婦を石化させる(new!)
・竜の右目を盗む
・イブールを葬り去る(new!)
・マーサに致命傷を負わせる(new!)
オリジナルではほとんど最初の方しか出番はありませんでしたが、リメイクでは大幅に出番が増え、なんと終盤まで大活躍。こうして悪行を重ねていくことになります。
特筆すべきは主人公夫婦の石化と、主人公の母マーサを殺したことでしょう。もちろんイブールを最終的に死なせたのがゲマに変更になった点も大きいです。
主人公夫婦の石化について
主人公夫婦は子供が生まれたすぐ後に、デモンズタワーにて石化してしまいます。オリジナルではこの石化はジャミが死に際の悪あがきとして行います。ジャミにそのような力があることに驚きです。
が、リメイク版ではこの役割はジャミではなくゲマになりました。死に際にジャミがゲマを呼び、呼び出されたゲマが主人公たちを石化させるのです。
この変更は非常に効果的だったと思います。
ゲマはオリジナルでは幼年期での登場を最後にボブルの塔まで一切登場しませんが、このデモンズタワーという物語の中間地点で登場することで因縁の相手感が増しました。無力で手出しができなかった幼少期から成長し、立派に戦えるようになったにも関わらず、またしても手も足も出ず敗北してしまう主人公。結婚し子供も生まれ、それでもなお幼少の頃と同じ結果に終わってしまい、父と自分だけではなく愛する妻さえも手にかけるゲマにこれまで以上に深い怒りを覚えるでしょう。
8年、10年解けない石化という強力な呪文を、ジャミではなくゲマが使うのも説得力があります。彼の陰湿で卑劣な性格ならば、このような強力な呪いを会得していても不思議ではありません。あとオリジナルではジャミはこんな呪いを使えるのに、ゴンズは脳筋だったので、その格差もリメイク版は多少薄れているのもいいです。
また、ジャミが死に際にゲマを呼ぶことで、彼らの中の主従関係が未だ変わっていないことがよくわかります。デモンズタワーを任されるほどまでに出世したジャミであっても、昔と変わらずゲマには叶わないのです。ゲマがより強大な敵であることをまざまざと見せつけられる良改変でした。
マーサへの攻撃について
オリジナルではゲマはボブルの塔で最期を迎えます。一応戦う前にそれっぽい会話、というかセリフを言われますが、父を殺した因縁の相手の最期にしてはちょっと物足りない気もします。
が、リメイク版ではボブルの塔でゲマを倒しても彼は余裕綽々で逃げていきます。その場では倒すことが出来ず、やはりここでも格の違い、そして実力の違いを見せつけられます。そう簡単には倒させてくれず、決戦の場は魔界までもつれ込みます。
主人公たちがエビルマウンテンを進んでいくと、とうとう母と再会することになります。ミルドラースを止めるため祈りをささげるマーサを殺したのは、オリジナルではミルドラースでした。
しかしリメイクではゲマが、恐らくはパパスを殺したときと同じメラゾーマをマーサに放ちます。
父だけではなく母も、それも生涯をかけて探してきてやっと見つけた母を、またしてもゲマに奪われてしまう。これは主人公にとって、そしてプレイヤーにとって筆舌に尽くしがたいほど耐えがたいものでしょう。
ゲマは、いつまでも主人公に付きまとう死神のようなものです。幼少から青年まで、ずっとつかず離れず居続ける死神です。そしてその死神はいつも、彼自身ではなく彼の大事なものを奪っていきます。
ゲマにこれ以上奪われないよう、ここでようやく主人公はゲマとの因縁に決着をつけます。
オリジナルでは満足げに死んでいったゲマでしたが、リメイクでは光に照らされ焼かれて、苦しみながら絶命していきます。かつて灰も残らぬほどの業火でパパスを焼き尽くしたゲマへの、まさに天罰でしょう。
リメイクにて、その存在感を増したゲマは絶命時もより衝撃的なものになりました。
その後マーサはオリジナル同様ミルドラースの攻撃を受け死んでしまいます。
ゲマの攻撃を受けてもかろうじて生きていたマーサ、ようやく何物にも邪魔されず母との再会を喜べると思った矢先の出来事です。
ゲマを倒しても、より強大な敵がまだ控えている、とオリジナルのときよりも恐怖を覚えます。
……実際はゲマの印象が強すぎて、ミルドラースって誰?急にしゃしゃってきたな?と思いましたが。このシーンは、オリジナルをやっているかやっていないかで印象が変わりそうです。
イブールの最期について
ついでなんで光の教団の教祖イブールについても。
彼は主人公たちに倒されると魔界の扉を開けようとしますが、なぜか開くことが出来ずそのまま死にます。パッとしない最期です。
リメイクではというと、やはり魔界の扉を開けようとしますがそこにゲマが登場。イブールは形だけの教祖でありただの駒であったことをバラし、メラゾーマのようなものでとどめを刺します。パッとする最期になってよかったと思います。
これによりプレイヤーには、教祖であるイブールよりもゲマは格上なのか!そしてこいつは身内のことですら何とも思っていない本当に残忍なやつなんだ!という印象を与えます。こいつ本当にむかつくことしかしねぇな!と。
イブールは元々影の薄いボスですが、ゲマへの怒りを増幅させるための踏み台になってしまいました。しかしそのおかげで、多少影は濃くなった気もします。
ゲマの出番が増えたことによりラスボスであるミルドラースはますます影が薄くなったわけなので、イブールはまだラッキーだったのかもしれませんね。
でもここ、ゲマじゃなくてミルドラースが手を下すでも良かったと思います。その方がこれから行く魔界に対して気合も入るというもの。そんな見せ場をゲマに取られてしまうあたり、やっぱりミルドラースって微妙なんだよな~と思います。
リメイク版のゲマについて語ってみました。
最近はすっかりリメイク版の印象が自分の中では強いですが、たまにオリジナルに立ち返ると、ゲマって最初以外そんなに活躍していないんだなぁと驚きます。さきほどもゲマの最期はオリジナルだとちょっと物足りない、と書きました。
しかしそれは恐らくリメイクのゲマの活躍っぷりがすごすぎて薄れているからなんでしょう。元々はあれでも十分「倒してやったぜ」感はあったと思います。
だけどやっぱり、リメイク版のゲマは最高に憎たらしいです。
さすがドラクエ界の中でも屈指の悪役ですね。
(文・やなぎアキ)
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