ハッスルじじいはハッスルしているからハッスルじじい。
しかし、ハッスルじじいだって、たまにはハッスルする気分じゃない日もある。
なんかだるいなと思う日にわざわざハッスルはしないし、体の節々が痛むなという日だってある。それでもハッスルしなければいけない晴れの日であれば、ハッスルするかもしれない。しかし、そうでない日ならハッスルはしない。
そういう、ハッスルしない日にハッスルじじいはどうなるのか。
ただのじじいになる。
ただの貝殻の帽子をかぶったじじいになる。
ハッスルじじいAが現われた!ハッスルじじいBが現われた!じじいAが現われた!
明らかに元気のないハッスルじじいが現われたら、それはハッスルしていないのでじじいである。
ではこの場合、遭遇したら倒すべきかどうなのか。勇者は判断に苦しんでしまう。
ハッスルじじいは魔物なので倒してもいい。しかしただのじじいと言われると、本当に倒してもいいのか?と一瞬戸惑ってしまう。明日になったら、元気になってハッスルじじいになっているかもしれない。だが今はただのじじい。一体どうすればいいのか。
じじいを倒してしまったことで、勇者の中に自責の念が生まれてしまう可能性がある。ことあるごとに、あのとき倒したじじいが脳裏によぎり、「自分は本当に勇者としての判断を下せているのか……」と思い悩む日々。勇者はまだ年若いため、繊細なのだ。
こういった葛藤を勇者に起こさないためにも、ハッスルできない日はじじいは家から出ないことが大事である。たとえ敵であっても、倒すか倒されるかの世界で「本当に倒すべきか?」という問いをさせるのは酷である。そういった重大な問いはもっと大事なシーンで行うべきであり、ハッスルじじいのためにその労力を割かせるのはよくない。ハッスルじじいは、ハッスルじじいとして生まれたからにはそのあたりについてちゃんと理解をしていなければいけない。
「ハッスルする元気がない日はじじいとなるため、勇者に遭遇することのないよう家にこもっていなければいけない」という誓約書に同意できなければ、ハッスルじじいにはなれないのだ。これが理解できないものは、ハッスルじじいになる資格がない。
このように、ハッスルできない日はハッスルじじいとしての役目を果たせないという問題がある。一日くらいであれば、たまの休養として仕方ない部分もあるが、これが何日も続くようだと問題だ。俗に4日以上ハッスルできない日が続いた場合は、問題視される。私生活や仕事上で何かストレスがあるのではないか、と上司からの面談が入り、場合によっては長期の休暇を余儀なくされる場合がある。その間は当然無給になるが、早くハッスルできるようになるために必要な休暇なので、ハッスルに異常があればすぐさま報告することが大事だ。
ハッスルできるかどうかが大事なモンスターのため、自身の体調には細心の注意を払わなければいけない。
気楽そうなモンスターだが、実はなかなか大変なのだ。
何だこの話。
(文・深々シン)
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