「うごくせきぞう」というモンスターがいる。
どういうモンスターなのか端的に説明すると、動く石像である。終わり。
暇で暇でしょうがないので、このうごくせきぞうについて色々考えてみた。
うごくせきぞうの動き
うごくせきぞうの動きは、はっきり言ってとろい。ずし~んずし~んと動く。腕をふって足を交互に出して、1,2 1,2とは歩かない。
だが、別に普通に歩かれても困る。うごくせきぞうが普通に歩いていたら恐らく、
「うごくせきぞうって、動く石像っていうよりは、ただのでかい灰色のおっさんじゃね?」
「わかる~、てかタピオカ飲みにいこうよ」
とか言われてしまうのだ。
うごくせきぞう < タピオカである。タピオカ、もうそんなに流行っていない節があるが、それでもタピオカの方が優勢なのである。
うごくせきぞうは、こう言われてしまわないように、精一杯石像っぽさを保ったうえで動いている。
「うごくせきぞうって、まじ動く石像」
そう言われるために、うごくせきぞうは日夜努力を惜しまず、動く石像っぷりを研究している。涙ぐましいぜうごくせきぞう。
俊敏に動くうごくせきぞう
せっかくなのでうごくせきぞうに俊敏に動いてもらう。とは言っても私の脳内での話だが。読んでいる君もしっかり想像力を働かせて。お願いしますよ、うごくせきぞうさん。
うごくせきぞうさんって、動く席と象さんみたいだ。学校の七不思議と動物園の人気者の夢のコラボレーションだ。
反復横跳び
これは俊敏に動いているなぁ!という代名詞である反復横跳びをうごくせきぞうにやらせよう。さぁ!やれ!やるんだ!
(うごくせきぞうの反復横跳びを脳内実施中)
おおお……。
速い!速いぞ!うごくせきぞう!
なんて俊敏さだ!力強い反復横跳びだ!外側に行くたびに、逆方向に行こうとするパワーが膝にためられている!そんなため方をしたら、膝の皿ならぬ膝の石が割れちゃうよ~。
うごくせきぞうが反復横跳びの記録を伸ばしている間、ずっと地面が揺れている!
ずし~ん、ずし~ん。
ああっ!思った通り膝の石が割れて、倒れこんでしまった!大丈夫かうごくせきぞう~~。
ダブルダッチ
次は二本の縄を使って行う、ダブルダッチに挑戦してもらう。あの、縄の間でいい感じの技を決めるやつだ。
(うごくせきぞうのダブルダッチを脳内実施中)
うおおおお!
華麗だ!華麗なジャンプさばきだ!
もうすっごい技決める。すっごい技をすっごい決める。地面に手をついて跳んだりとかしちゃう。そんなことやったら肘からバッキリ割れちゃうよ~。
しかも縄を回しているうごくせきぞうもすごい!もうブンブン回している、腕を。肩から割れて、腕がこっちに飛んできそうなくらい回している。
わぁ~~~~、なんだあの技は~~~~。うごくせきぞうすごいぞ~~~。
ああっ!思った通り肘からバッキリ割れて、倒れこんでしまった!大丈夫かうごくせきぞう~~。
ああっ!ついでに思った通り肩から割れて、腕がこっちに飛んできてしまった!大丈夫か自分~~。
全然動かないうごくせきぞう
どうせなら、うごくせきぞうなのに、動かない石像というのもやってみる。暇だし。
鬼ごっこ
鬼はうごくせきぞうA、逃げるのはうごくせきぞうB。
(うごくせきぞうたちの鬼ごっこを脳内実施中)
…………。
いや、
動けよ!!
ずっとスタート位置。全然動かない。鬼であるAは、目の前にBがいるから捕まえたい気持ちがすごい。動かないけど。
子であるBは、すぐそこに鬼がいるから逃げなきゃっていう気持ちがすっごい、焦っている。動かないけど。
なにこれ、なにこの状況。
だるまさんがころんだ
だるまさんがころんだもやってみる。
動かないやつが勝つ、みたいなところがあるから、うごくせきぞうは激つよだ。やったぜ。
鬼はうごくせきぞうA、鬼にタッチするのはうごくせきぞうB。
(うごくせきぞうたちのだるまさんがころんだを脳内実施中)
…………。
始まらない。
AがBの方向いたままずっと動かないから、そもそも始まらなかった。
だ~る~ま~とか言っている間も、Bが全然動かないから終わらない、かと思ったら、そもそも始まりすらもしなかった。
ずっとAとBが見つめあっている。
これが恋の予感。うごくせきぞうAとうごくせきぞうBの恋が始まる。でもこいつら、動かないから何も発展しない。
というか動かないうごくせきぞうって、それただの石像だ。
うごくせきぞうの動き具合は、やっぱりほどほどが一番だね。
(文・やなぎアキ)
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