…………。
やだな。
やっぱりいやだ、しびれだんびらなんて。
一回脳内でしびれだんびらに転生してみたけど、ろくなことない。
「死んだと思ったらしびれだんびらになっていたようです。」
こんなノベル、読みたい?
そういえば、 異世界転生ものっていうのは無双したりモテたりするものだった。じゃあもう少しタイトルを変えて、キャッチ―にしよう。
「死んだと思ったらレベル99のしびれだんびらになっていたけど、エルフに異常にモテるようになった。」
読みたい?
あれ、ちょっと読みたい気がしてきた。
でもやっぱり人間に生まれたい。
それでもどうしてもしびれだんびらとして生きなければいけないとなったら、諦めるしかない。火の鳥の茜丸だってミジンコになるのだ。受け入れるしかない。
どうせしびれだんびらになるなら、楽しく生きたい。その方法を模索しよう。
まず、楽しく生きるにはどしたらいいか。
そうだ、友達を作ろう。友達は楽しく生きるためには欠かせない。まずは友達だ。
しかし私はしびれだんびら。今までのように人間の友達を作るのは難しいだろう。犬や猫も友達になってはくれないだろう。しびれだんびらの友達作りは厳しい。
しびれだんびらになってしまった私の友達になってくれるのは……
ダンビラムーチョだ。
だんびら仲間として、友好な関係を築けるはずだ。バイキルトをかけてくれるし。一緒にサイクリングに行きたい。
しかし私はしびれだんびらだから、自転車には乗れない。ダンビラムーチョが乗る自転車のかごに入れてもらうことにしよう。長い長い下り坂を、私を自転車のかごに乗っけて、猛スピードで下ってくれ。
同じ系統のモンスターとも仲良くなっておきたいな。ひとくいサーベルとか。
……人を食うモンスターはいやだ。自分も食われるかもしれないという恐怖がある。しびれだんびらとはいえ、心は人間だ。
友達もできたことだし、次はなんだろう。
やはり人生を豊かにするには趣味があった方がいい。
キャンプ。キャンプがしたい。
たくさんの友人(ダンビラムーチョ)と一緒にキャンプをしたい。
私はしびれだんびら。刃物だ。きっとアウトドアで存分に力を発揮するはずだ。
ロープを切ったり、薪を割ったり、食材を切ったり。
大活躍だ。
私はしびれだんびらなので、刀身に麻痺する毒が塗り込まれている。私が切った食材をみんなが食べたらしびれてしまうかもしれないが、アウトドアでのちょっとしたハプニングというのはいい思い出になるはずだ。ダンビラムーチョたちも笑って許してくれるはず。
キャンプファイヤーをダンビラムーチョたちと囲んでぐるぐる回りたい。
趣味も充実してきた。次はなんだろう?
そうか。
家族。
Familyだ。
家庭を持つことで人生はより充実していくに違いない。しびれだんびらの家族を持とう。
しびれだんびらの群れの中から素敵な異性を見つけ出して、プロポーズをしよう。
給料三ヵ月分の砥石を渡して、「毎日私の為に体に油を塗ってほしい」と言おう。
次の年にはちっちゃくてかわいいミニしびれだんびらがたくさん生まれているはず。
……しびれだんびらは卵生なのか胎生なのか気になる。
お隣さんのダンビラムーチョジュニアと同じ学校に通わせるんだ。
学校ではクラスメイトを麻痺させちゃだめだよって教えてあげなきゃな。
もし娘が年頃になって、家にひとくいサーベルの彼氏をつれてきたら反対しちゃうんだろうな。せめてブラッドソードにしなさいって、言っちゃうんだろうな。
なによりも大事な家族と、いつも一緒にバカやってくれる友達(ダンビラムーチョ)と、心を豊かにしてくれる趣味。
これらがあれば人生は楽しいはず。
あれぇ?しびれだんびらになってもいいような気がしてきたぞぉ???
(文・リモート侍)
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