モンスターじいさんの檻の中にて……。
スラリン「プオーン、お前最近入ってきたばかりの新入りだろ。オレはこのモンスターの中では古株だからな。ほら、先輩に早く挨拶しろ」
プオーン、スラリンを一瞥して背を向ける。
スラリン「なんだお前、態度悪いやつだな。先輩を敬えないやつはここでは上手くやっていけないぞ」
プオーン、無視する。
スラリン「はん!お前どうせ、仲間になってすぐじいさん送りになったやつだろ。大した戦力にはならねぇだろって思われたんだろうなぁ!どうせレベル1のままなんだろ」
マーリン「スラリン、言いすぎです……」
スラリン「うるさい!お前は黙ってろ!お前もプオーンと同じで仲間になってすぐじいさん送りになった口だもんな。同情か」
マーリン涙目。プオーン、相変わらず背を向けたまま。
スラリン「その点オレは、レベル20まで旅をしたからな。その辺の中途半端なモンスターなんかよりもよっぽど経験を踏んだし、強いわけなんだよ。お情けで仲間に入れてもらったやつとはわけが違うんだよなぁ!」
マーリン、そそくさと立ち去る。
スラリン「まぁオレたちの中での一番の出世頭といえば、ピエールだけどな!仲間になった時期はオレの方が早いけど、ピエールはご主人の元で良く戦ったよな!まさかお役御免になってじいさん送りになるとは思わなかったけど。でもピエールはスライム族の誇りだよ」
ピエールが檻の隅で剣を磨いている。
スラリン「今日は随分と隅っこにいるんだな、ピエール。まぁいいや、ほらほらプオーン、いつまでそうやって先輩を無視している気だ?」
プオーン、無視しつづける。
スラリン「大体間抜け面だよなぁお前。ほんとにモンスターか?いっちょオレと戦ってみるか?」
スラリン、ぷるぷると体を震わせる。
オークス「なぁピエール、スラリンに教えてやらなくていいのか?見ていられないよ」
オークスがピエールに耳打ちする。
スラリン「なんだ、なんか言ったかオークス!お前はたしか魔界に行く前にリストラされた口だろ。ピエールにきやすく話しかけるんじゃないぞ」
ピエール「いいんだオークス。もう、あのときのことは思い出したくない」
ピエールが怯えている。
スラリン「なんだ、どうしたんだよピエール。ミルドラースを倒すまでパーティーメンバーだったお前らしくもない」
プオーンがとうとう口を開いた。
プオーン「無理もない。そこなスライムナイトはワシが怖いのだろう」
ピエールとオークスが目を伏せる。
スラリン「えっ」
プオーン「ワシがそこにいるスライムナイトもオークキングも、お前の言うご主人とやらもその息子も娘もぶち倒したんじゃよ」
スライム「えっ、えっ」
プオーン「今はかような姿じゃが、いつか元の姿に戻ったとき……覚えておれよ、スライム……」
スラリン「えっ、えっ、えっ」
スラリン「えーーん」
(文・やなぎアキ)
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