ドラクエ7は石板集めの旅。
この石板集めに翻弄されたプレイヤーは数知れず。
中には次の石板が見つからずクリアまで至れなかったプレイヤーもいたことだろう。
そんなわけで、3DSでリメイクされる際には大幅なテコ入れが入った。
石板がある場所に来ると知らせてくれる石板レーダー、宝箱に入っていた石板は裸で直置き、石板をはめた台座も自分で暗記する必要はなくリスト化された。
そして石板案内人だ。
なぞの神殿の奥で眠っていたという彼は、主人公たちの旅を手助けしてくれる。
PS版では見つけていない石板のヒントをくれていた占いババがいたが、その役割を担ってくれる。そして彼に話しかけることで、石板から過去の世界に飛ぶことができる。
この石板案内人……
一体なんなの？？
彼が何をしてくれるかは先述した通り。石板レーダーと共に、ドラクエ7の旅を快適にするために追加された要素だ。それはまぁいい。
問題なのは、こいつのキャラクターが全く見えてこないことである。
謎の遺跡の封印を解いた主人公たちを選ばれしものと呼び、自らを復活の間の管理人と呼ぶ。そしてそれは神様に命じられてそうなったというのだ。見つけていない石板についても、神様の声を聞いて教えてくれているようで、神様と深い関わりがあるような匂わせをしてくる。
ドラクエ7において神様という存在は非常に重要なもので、物語中盤から終盤にかけては神様をめぐって話が進行する。それゆえに、神様と密接な関係がありそうなこの石板案内人も何か重要なキャラクターのように思える。
オリジナルにいないキャラクターとはいえ、追加要素、追加ストーリーとして何か関わってくるかもしれない、と思わせた。
が、
ま～～～～じでなんにもない。
こいつま～～～～～じでなんにもない。
ずっと石板の間にいるだけ。ずっと石板の間でふよふよ浮いているだけ。ストーリーの関わりは全くと言っていいほどない。
（ニセの）神様が復活しようが、オルゴ・デミーラが正体を表そうが、裏ダンジョンを攻略して神様を移民の町に呼ぼうが、な～にも関係ない。いっそ清々しいほど関係がない。
物語も後半になれば、神殿の石板から過去に戻るということがほぼほぼなくなるため、ストーリーをクリアするころには下手したらこいつの存在を忘れているまである。
なんのために生まれたのか、こいつは。旅を快適にするための要素だとわかっていても、あまりにもキャラクターが見えてこないためにそう思わざるを得ない。肉体を与え人格を与えたにも関わらず、この仕打ちである。
最初に許されるとかどうとか言っていたので、何か大罪を犯して封印されていたのかもしれない。という匂わせがあるにもかかわらず、一切何も明かされない。なんなんだ君は。
もういっそ、こいつ必要だった？とまで思う。石板レーダーはそれっぽいところにおいておけばいいし、石板のヒントは元々は占いババがいたんだから彼女にまたやってもらえばいいし、石板世界を選ぶのだって別にこいつがいなくても指定の場所に行ったらそのウインドウが出ればそれでいいではないか。
あとキャラデザもなかなか謎。ドラゴンボールの魔人ブウ(善)を痩せさせて、羽を生やしたみたいなデザインなのだが、これがなぞの遺跡を始めて訪れた際の何とも言えない不気味さとミスマッチなのだ。不気味で少し怖い、でもワクワクもする、という少年たちの未知への冒険心にはミスマッチなのだ。なぞの遺跡の謎解きについてもリメイク版は大幅にテコ入れが入っているため、彼を登場させて謎解きの誘導させる必要があったのだろうとは思うが、せめて神殿の最深部に着くまでは身を隠しておいてほしかった。謎の声とかで頑張ってほしかった。
キャラクター単体で見れば、ドラクエ作品に登場するちょっと不思議で且つ絶妙に可愛くない案内人としてなかなか良いデザインだと思うのだが、ドラクエ7のなぞの神殿の雰囲気に合っていない。もっと別の場所で輝いてくれ。あともっと別の便利な役割をあてがわれてくれ。
もしストーリー中で少しでも、生まれた経緯とか、神様とのかかわりなどが話されていれば（たとえキャラデザがいまいちでも）、もっと彼の存在を受け入れられたと思う。
それこそ、なぜあのような神殿が、石板があるのか、というドラクエ7の謎にも一石を投じられたかもしれない。いやむしろ、投じられてしまうからこそ彼については何も語らない、いや語れないのかもしれない。
ひょっとすると、彼には我々の知り得ないもっと奥深いキャラ設定があるのではなかろうか。
しかしそれすらも結局はな～～～んにもわからないのである。
今日もあの案内人は、誰もこない神殿でずっとふよふよしているのだ。
なんだかかわいそうになってきた。もっと見せ場を与えてくれ。
（文・やなぎアキ）
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