ドラクエ8に登場する謎の人物イシュマウリ。
アスカンタ近くの願いの丘に出現する不思議な窓を通ると出会える人物であり、不思議な力を持っている。
自前のハープを奏でることで人や物の過去の記憶を呼び覚ますことができ、その力で主人公たちの旅路を助けてくれた。
アスカンタでは最愛の王妃を失ってふさぎこみ続けるパヴァン王の目を覚まさせ、トロデーンでは古代の船をよみがえらせる手助けをしてくれた。
そんな不思議な彼の正体はいまいちよくわからない。
イシュマウリがいるのは明らかに異世界。月影の窓を介して行けるその世界は月をモチーフとしており、月そのものであるともとらえられる。イシュマウリも月の世界と言っている。
そしてイシュマウリ自身も見た目からしてただものではなく、エルフのような長い耳を持ち、はかなげな雰囲気をまとっている。そしてかなり高齢のようだ。古代の船が海原を旅していた時代のことも把握しているのだから。また本人の発言に「この船も月影のハープもそしてこの私も、みな旧き世界に属するもの」というものがある。主人公たちにとって想像もつかないほど遥か昔から生きるものなのだろう。「旧き世界」という言い方もなんだか意味深だ。
月の世界に生き、記憶を呼び覚ます不可思議なキャラクター。
めちゃくちゃキャラが濃い。
の割に、なんかいまいち出番が少ない。いや、二回も出てるのだから十分かもしれないが、深そうな設定の割に少ない。
アスカンタとトロデーン。その二つのイベントだけでまるっきり出番がなくなってしまうにはもったいないほど、深堀ができそうなキャラだ。
パヴァン王を励まし、船を復活させ、こうなってくると、もう一回くらいは主人公たちが行き詰った時に手助けしてくれるのではないかと期待してしまう。実際願いの丘ではなくても、トロデーン城にできた影から偶然にも月影の窓ができたように、どこかでまた窓が出現してもおかしくない。そして、ドルマゲス、ひいては暗黒神の足取りを追う主人公たちにとって、過去の記憶を見れる能力は活用法がいくらでもある。
が、船を手に入れた後はすっぱりと出番がなくなってしまう。月の世界は願いが叶うともう二度と行けなくなってしまうため、ちょっと戻って一回顔見てくるか～ということすらできない。完全に会う機会がなくなってしまうため、下手したらクリアするころには忘れているかもしれない。そしてエンディングのスタッフロール時の回想で「こんなやついたわ～！」となるのだ。
月影の窓が叶えられる願いというのは生涯で一度きりらしい。それを考えると二度も登場したのは破格なのかもしれないが。しかしこちらのパーティーは4人もいる、あと2回出てきてもよさそうだし、なんなら主人公は人の子ではない。いや、人の子でないからこそ二度にわたって現れてきたのかもしれないが……。
あれほど壮大に船を復活させて、それではい終わりなのだ、彼は。ポロンと最後にハープを一弾きして永遠の別れ。
そんな存在で終わらせてしまうにはもったいないほど深堀ができそうなのに！レティスや闇の世界という異世界がその後も出てくるのなら、月の世界が出てきてもいいのに！古くから生きているのなら、ラプソーンのことだって知っていそうだ。七賢者が現れるよりも昔の、ラプソーンと竜神族の戦いだってなんなら目にしているかもしれない。このラプソーン対竜神族の戦いについてしっかりと匂わせているほど細やかに伏線を置く本作であれば、月世界の住人を絡めることもできそうなのに！過去の記憶を呼び覚まし、主人公たちにかつての大戦を見せてくれてもいいのに！
地上の戦いには一切関与しない傍観者・月の世界、設定としてめちゃくちゃかっこいいのに！
たしかに月世界まで登場させると世界観がごちゃごちゃになりすぎてしまうかもしれないが、イシュマウリがもったいないと思ってしまう今日この頃である。
月の世界、すごく見た目も凝っていて好きなんだがイシュマウリの出番が少ないがゆえにあそこにも全然いけないのが本当にもったいない。
（文・やなぎアキ）
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