ドラクエ6は、夢の世界を舞台にしているということもあり、他の作品にくらべてファンタジックな展開が多い。
それは乗り物にも表れており、個性的な乗り物が多く登場する。
ひょうたんの形をした島、空駆けるペガサス、あわあわ船(これは現実世界の乗り物だが)。
中でもファンタジックな乗り物は、
そらとぶベッドだ。
クリアベールにいた病気の少年・ジョンが、持っていたベッド。生前は外に出ることもままならずずっとベッドの上で過ごすくらいの大病を患っていた少年が、夢の中ではそのベッドで自由に空を飛んでいたのだ。
彼が亡くなってしまったことでベッドが空を飛ぶことはなくなってしまったが、死ぬ前に残された約束を果たすことで想いが浄化し、約束に協力してくれた主人公一行にそらとぶベッドを譲る、というのがこのイベントの顛末。
残された両親の悲しみと希望に生きた少年が印象的な、切ないイベントだ。
その結果手に入るそらをとぶベッド。もちろんこんな非現実的なものは夢の世界でしか使えない。
性能はまほうのじゅうたんと同じで、川や海、浅瀬の上なども自由に飛べるが、森や山などは通り抜けることができない。これで行動範囲がぐっと広がることになる。
船と同様ルーラをすれば近くにベッドが置かれている。このベッドの見た目が、羊っぽいなぁと子どもの頃は思っていた(SFC版の場合)。今も思っている。
そして私は子どもの頃、このベッドを手に入れたとき歓喜した。
空を飛べるというのもそうだが、大きな期待を寄せたのだ。
フィ、フィールドで寝れる!!!!
と。
つまり
フィールドで回復できる!!!!
と。
ベッドならば寝ることが出来る!ドラクエでは寝れば回復できる!戦闘中に寝ても回復できないが、ベッドという完全な寝具の上でなら回復するであろう!
このそらとぶベッドがあれば、移動もできるし回復もできる、最強だぁ!
と。
無論そんなことはできない。
そらとぶベッドはベッドの形状はしているが、寝ることはできない。ただただ乗り物である。
これを知った時の私の落胆ぶり。
なぜ?なぜなのか?
ベッドなのに寝れないとは一体どうしたことか。
たしかにこのベッドは空を飛ぶかもしれない。だがそもそもはベッド、寝具ぞ?なぜ寝具としての本来の使い方ができないのか。謎すぎる。
私はひょうたん島を手に入れたときに、乗り物に宿屋がついているなんて、すごく豪華仕様だ!嬉しい!と無邪気にはしゃいだ。実際はひょうたん島の宿屋を使う機会など皆無に等しかったが、嬉しかったのだ。付加価値、付加価値だよこれが!
そして次に手に入れたのがそらとぶベッド。
ひょうたん島の流れから行ったら、このベッドにも付加価値があると思ってもおかしくないだろうが!そしてベッドなのだから、付加価値は寝ることだろうが!回復だろうが!
が、寝ることはできない。
あまりにもショックすぎて、なんのためにベッドなの?とクリアベールのストーリーをガン無視した怒りがこみあげてきたものだ。
子どもの頃の私はそれはもう大変なショックを受けたのだ。それはもう筆舌に尽くしがたい。ほぼ裏切りであった。
いやだって遊び人の特技にも「ねる」ってあるし……。そこにきてこのベッドの存在。寝れない方がおかしい。夢の世界の話なのに、寝ることが出来ないなんておかしい。
しかしたしかに考えてみると、フィールドのど真ん中でベッドの上で無防備に寝ている絵面はあまりにも危機感がなさすぎる。周りにモンスターもいるというのに、テントならまだしもベッドオンリーでは寝られないだろう。ベッドに馬車ごと乗っかっている事実は置いておいて。
そうか、そらとぶテントだったら、いけたかもしれない……。
ジョンくん、テントで寝てくれないか。
(文・リモート侍)
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