待望のサービス開始をした『ドラゴンクエストけしケシ』。
ドラクエのパズルゲームとあって、多くのドラクエファンがダウンロードしたことだろう。
このゲームの案内役は、ステイシーさん。
優しく、この異質な世界観を導いてくれる。
イロモノが多い案内役たちのなかで、すごく常識的な語り口のステイシーさんが、逆に新鮮だった。
いきなりタメ口の案内役って多いし、なんかこう、距離の縮め方が強引というか……馴れ馴れしいというか……。
まぁ、そんな愚痴は置いておいて、プレイを進めていく。距離感が適切なステイシーさん、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします。
ただ、実際にけしケシ(=パズル)が始まると、モンスター消しゴムが活躍するわけであって、ステイシーさんの出番はなくなる運命なのだろう……。
少し寂しさを感じつつパズルをしていると、連鎖の時にステイシーさんがいきなり飛び出してきた。
「いいわね!」
「もういっちょ!」
「このちょうし!」
「すご〜い!」
あまり脈絡がない再登場に少しびっくりしたが、ストーリーがやや希薄な分、案内役がこうやって本編に食い込んできてくれるのは大歓迎だ。
ややテンションが高いのは気になったが、イラッとするほどのことではない。眼鏡をかけたり外したりしていて忙しそうだな、と思った程度だ。
連鎖が決まる爽快感を後押ししてくれる演出なのだろう。パズルをひたすらやるよりも、応援してくれるキャラクターがいる方がモチベーションもあがるというもの。ステイシーさんが捨て石扱いされなくてよかった。
……ところがだ。
連鎖を続けた先に、違和感のある演出があった──。
……すき?
すきって、好きってこと?
な、なぜ。
こっちは消しゴムでパズルしていただけなのに。どこに惚れる要素があったというのだろう?
女心がわからない。
というか、距離感の詰め方が極端過ぎる。
冒頭の「距離感が適切」という褒め言葉を返して欲しい。
もしかして「すご〜い!」とか「このちょうし!」の延長線上に「すき」があるということだろうか。
それとも、この「すき」は、あくまで友達としてというか、褒め言葉としての「すき」なのだろうか。チョベリグ(死語)みたいに、世代が違うからこそわからない表現なのだろうか。
たしかに、ちょっと前に流行った「〜しか勝たん」って言い回しは、内心「勝つってなんやねんな」って思っていた。今回のこれもそんな感じか。そうか、ジェネレーションギャップか……。
きっと、いまの若者は「好き」を簡単に使い、仲良くなるのだろう。そこに特別な感情はないはずだ。あくまで冷静な「好き」だ。
いや、めちゃくちゃ顔赤らめてるじゃねぇか。
仲良くなるってレベルじゃねぇ!!!
ステイシーさんはパズルを連鎖させると惚れちゃう癖(へき)をお持ちのキャラクターということ……?
そ、そんなことある?
でも頬を染めて、顔を手で覆いながら言う「すき」が、特別な恋愛感情がこもっていないものだとしたら、それはもう……。
フリーダムな社会が、知らないうちに到来していたことになる。
おそらくそこまでは時代も変化していないはず。
ということは、これはおそらく……恋愛感情?
そ、そんなことある?
……ハッ!!!
ついつい早口オタクの早口考察をしてしまったが、これはあまりにも考えすぎだろう。ステイシーさんを誤解してしまっている気がする。
あの時の表情には、そんな特別な感情がこもっていたわけでは……
絶対惚れてるよね!?
眉毛の角度!
眉毛の角度が!
なんというかこう……ステイシーさん自身も己から湧き出る感情の大きさに困ってるような雰囲気がある。
好きすぎて困っちゃう〜〜〜のレベルじゃん。
ううーーー、こちらの理性を保つのも大変だ。
消しゴムを、連鎖、していくのって、そんな、カッコいいカナ!?🤣 ステイシーちゃん、守って、あげなきゃネ🤣 悪いやつは、みんな、倒してあげるから😡
……ヤバい! 一瞬、持っていかれそうになった!
深呼吸して、もう一度冷静に考えてみよう。
さっきは砂漠だったから……
暑さにやられて顔が赤くなっていただけかも……
雪国でも真っ赤ァ!!!
……いや。
背景によってわざわざ画像の差し替えなんてするわけないのだから、これは当然のこと。いちいち動揺しているこちらがおかしいというもの。
もっと純粋な気持ちで見てあげよう。
こちらが冷静であれば良いだけだ。
おう、わかったわかった。
そうだね、すきだね。
うん、そうだな。わかるわかる。
でもこっちは冷静だから。ごめんね。
……。
…………。
………………。
ぐはあああ……!
身体が 熱い……。
わたしは 敗れたのか……。
わたしの理性が くずれてゆく……。
うぐおぉぉぉっ……!
……ぐふっ!
気がつけば、こんな恐ろしいフォルダが出来あがっていた。
そして最終的に、こんなさりげないシーンですら「お? ドラクエ5のオマージュか?」と思うようになってしまったのであった。
ステイシーさん、恐ろしい子……!
(文・深々シン)
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