兄弟がいる人は、一緒にゲームをした思い出がある方もいると思う。
対戦系であれば、仲良く一緒にゲームができるだろう。
しかし通常のRPGだと一緒にゲームをするというのはできない。片方がプレイし、それを眺める形になる。
そういったとき、黙って見てくれる、いや、後ろでやいやい言う程度だったらまだいい。
そう、経験のある方もいるだろう。
兄弟というのは……
大体コントローラーを奪ってくる。
こちらが試行錯誤をしつつ一生懸命にプレイしているところに、
ええい!見てられん!貸せェ!
といった様相でコントローラーを奪ってくる。
コントローラーを奪うという暴挙に出るということは、要は上の兄弟ということだ。つまりこちらに選択肢はない。いやだと言えるほど力関係が曖昧ではないのだ。
形勢逆転、黙って見ている側になってしまう。
しかしまぁ、こういうときは大抵その経験からゲームを持ち直してくれる。だからこそこちらは何も言えないのだが。
しかし、忘れもしないコントローラ奪取事件が私にはある。
あれはドラクエ8をプレイしていたときだ。
ラプソーンを倒してエンディングも見た、そして明かされる主人公の出生。
そして怒涛の竜の試練。
圧倒的竜神王の強さ。特に黒鉄の巨竜がやばい。3回攻撃とかいうもはや卑怯な領域、そして地獄のような攻撃力の高さ。どれだけ身をかわせるか、それが一番大事。
なかなか勝てなかった。多分この黒鉄の巨竜が一番苦戦した。
攻撃をなんとかしかけつつも、どんどん死んでいく仲間をせっせと生き返らせ続けるククールとゼシカ。
ジリ貧。ジリ貧である。
当時の私はまだプレイングスキルが拙かったかもしれない。
そこに、見るに見かねた兄が言う。
「貸して」
で、出た~~~~~~~~!!
拒否権はない!こちらに拒否権はない!黙ってコントローラーを渡すしかない!
ちなみに戦況はというと、なんとゼシカしか生き残っていない!しかしゼシカはザオリクが使える。なんとか立て直すことはできるだろう。
さぁ一体どんな手腕を披露してくれるのか!
ゼシカの呪文欄を開き、唱えるべくはザオリク!!
さぁ!ザオリクにカーソルを合わせるのだ!!
ピオリム←
…………え?
ゼシカはピオリムをとなえた!
ゼシカの素早さが上がった!
黒鉄の巨竜の攻撃!
ゼシカは死んでしまった!
○○たちは全滅した……。
…………え?
こいつ、素早さを上げて死んだ?
素早さを上げて高速で死んだ?
ゼシカが両手をいっぱいに広げて、ピオリムを唱えてから死んだ?
PS版だからちょっと胸揺れてるしね!?
どうして?
いやまぁ、操作ミスなのだが、よりによってコントローラーをわざわざ奪ってからの操作ミスはいかがなものか。
こちとら全幅の信頼を置いてのコントローラー授与だったというのに。
精いっぱいあがいての全滅だったらまだわかる。仕方ない、あの戦況から盛り返すのは無理だよね、と。
しかし、たった一人残ったゼシカにピオリムを使わせての全滅はあんまりだろう。
ゼシカもどういう心境でピオリムを唱えたのか。
「ピオリム!」と唱え、次の瞬間には巨大な竜の噛みつき攻撃に倒れる。一体なぜ素早さを上げたのだろうと思いながら死んでいったことだろう。
あそこからは何をやっても全滅してたよ、と言い訳をしてくる兄をとりあえず笑っといた。
それからはコントローラーを奪われることは激減した。
ピオリムミスのようなことがあったのだから当然だ。
ただ、テトリスは相変わらずコントローラーを奪われ続けたが。
(文・やなぎアキ)
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