ロトシリーズ、その伝説は光の玉を携えた勇者が空より降り立ち、平和を取り戻したことから始まった。
そう、ドラクエ3である。
そしてあの伝説が再びよみがえろうとしているのだ。
ということで、ドラクエ35周年記念特番の際に発表されたドラクエ3 HD-2D。
発表があった際には皆が画面の前で沸き立った、あの伝説の作品のリメイクである。
ドラクエ3は既に何回かリメイク及び移植がされている。
めちゃくちゃ追加要素の出来が良かったスーファミ版。携帯ゲーム機で簡単に伝説を体験できたゲームボーイカラー版。25周年の際にはWiiで移植版が限定で発売された。スマホ版にてグラフィックが一新され、それを元に現在主要なハードでは大体ドラクエ3をプレイできる。
そう、やろうと思えば誰でもドラクエ3をプレイできる。
新たにゲーム機を買う必要はほとんどないだろう。
しかし、それでもリメイクされるのだ。ドラクエ3というゲームは。
ドラクエ3が発売されたのは1988年。現在2021年。この間にゲームの在り方というのは変わっていった。グラフィックの向上、ストーリーの複雑さ、常に新しいシステム、従来のゲームでは満足できなかったプレイヤーのために、ゲームは進化を重ねていった。
ゲーム機がどんどん高スペックになっていく中、3Dグラフィックであることはもちろんのこと、いかに映像が美麗であるかを求められる。フィールドはオープンワールドであることが常に求められる。どこまでもどこでも進むことができる、まさに世界を旅することが今や定石である。
だが、それでもドラクエ3は今、リメイクされる。
異常である。
私たちドラクエプレイヤーからしてみれば、ドラクエ3という作品は唯一無二であり、今また新たにリメイクされても嬉々として買うだろう。
待ってましたと言わんばかりに。
だが、よく考えてみれば、わざわざ今の時代に昔のゲームのリメイクをフルプライスで買うというのも不思議な話である。今まで一度もリメイクされていないならまだしも、まだまだ現役のPS4やSwitchでもプレイできるのだ。また、レトロゲーム好きとしてはファミコン版をそのまま出すというのであれば、それはそれで理解できる。Wiiに移植されているとはいえ、本数は限られており若干プレミア化している現状。ファミコンソフトを手に入れて、ファミコンないしは互換機なんかを使えばプレイできるが、そこまでやる人も限られているだろう。だから、それなら理解できる。
しかし、今度出るドラクエ3は完全リメイクである。
じゃあやはり今の時代に即した、3D美麗グラフィック、たとえばドラクエ11のようなリアルとドラクエ世界が絶妙に融合した世界を冒険するような作品になるのだろうか。キャラクターも8頭身で、馬に乗ったりなんかしながら、そんな作品になるのだろうか。
ならない。
なんせタイトルはドラクエ3 HD-2Dである。グラフィックはドット絵だ。ドットと3Dが融合したような、新しくも懐かしい手法である。
ドラクエ9などのような頭身を抑えたグラフィックというわけではない、いうなれば立体的なドット。それでも、プロモーションを見る限りはフィールドは非常に美しい。当然スーファミの頃とは比較にはならない。
だが、やはり今の時代それでいいのか?と疑問に思わざるを得ない。
しかし!
それがいいのだ。
古き良きを決して忘れないのがドラクエ3なのだ。
どんなに技術が上がってプレイヤーの求めるものが変わっていっても、ドラクエ3に関していえばこれでいいのだ。リアルすぎない世界だからこそのメリットもあるだろう。それが、ドラクエ3では非常に重要な意味を持つと思う。
ドラクエ3は勇者の物語である。そして勇者とは、あなた自身なのだ。ドラクエは一貫して主人公は自分自身ではあるが、ロトシリーズに関していえばそれは特に顕著だろう。昔のゲームだからこそ、ストーリー中のイベントが少なく、仲間との会話もほとんどない。結婚や別れなどの、目に見えるストーリーが少ないのだ。そのため、プレイヤーはそれぞれが物語に対して自分だけのディティールに凝ることができる。
そうして自分たちの物語を作るとき、昔懐かしいドットというのは都合がいい。表情が変わらない、動きが変わらない。だからこそ自分で脚色できる。
目の前で大切な人を失った時、大声をあげて泣くのか、涙を押し殺して前を向くのか、自由に想像することができる。これが、3Dグラフィックの最近のゲームのようになってしまうと、目の前にうつる勇者の印象だけが強まってしまう。
RPGの中には、主人公には主人公の人格がある作品もある。その場合は、たとえ昔のゲームであっても現代のようなグラフィックでリメイクするのもいいと思う。それはそれで熱い。
しかし、ドラクエ3はそうではない。ドットと3Dを融合するグラフィック、それこそが最適解なのだ。
今だからこそ、古き良き懐かしいドラクエ3をプレイしたい。
自分自身が勇者となり世界を救う旅をする、そのためには、リアル過ぎない世界が大事なのだ。
ぜひそれを、今の子供たちにも知ってほしいと思う。想像力を使って仲間と旅をするのは、いいぞ。
そして、これまでのロトシリーズにはなかった新たな驚きを期待したい。
令和のロトの伝説はドラクエ3から始まるのだ。
(文・やなぎアキ)
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