最初のスライムに出会うまでに1時間はかかると言われているドラクエ7。
最初の謎解きを皮切りに、ドラクエの中でもかなり長いストーリー。
先に進みたいのに見つからない石板。
これが、ドラクエ7の評価につながっている。
せめて最初の戦闘くらいさっさと入りたいものである。我々はワクワクする冒険をしたくてドラクエをプレイするのだから。
そして2013年、ドラクエ7は3DSにてリメイクされた。
またドラクエ7の世界を冒険することができる!と意気揚々と購入し、でも最初はなかなか旅に出られないんだよね~と思いながらゲームを起動する。
すると、すぐさま異変に気付く。
あれ?なんか、展開違くない?しんじゅ玉、どこ?
だが、多少の違いだろうと思いそのまま進める。
それでも、ある地点までくると決定的に違うことに気づく。
謎の神殿の謎解き、ごっそりなくなってない?
めちゃくちゃ簡単。ただただおつかいをこなすだけで、いとも簡単に石板の間にたどり着くことができる。
筒を覗いてモンスターの壁画を見たり、てんびんが下がってくる前に猛ダッシュして扉をくぐったり、無限ループを抜け出すために頭をひねったり、ライオンの口に手をつっこんでローマの休日ごっこをすることはない。
ただただおつかいをこなすだけである。
めちゃくちゃ簡単。
これにより、かなりのスピード感でスライムと出会うことができる。
PS版のとき、最初の戦闘に行くまでにあまりに時間がかかってさじを投げたプレイヤーもいたことだろう。そうでなくとも、周回プレイをする気が起きないプレイヤーもいたかもしれない。
そう考えると、これは良改変と言えるかもしれない。
スライムに会ってからがドラクエ7の本番であり、誰しもが謎の神殿で時間を使いすぎたいわけではない。
わーい、簡単になっていてよかったぁと思うわけだ。
しかし、同時に何か物足りなさを覚える。
ドラクエ7の思い出を語るとき、
まずスライムに会うまでに時間かかりすぎるよな!!ガハハハハ
と笑い声をあげ、それに共感していたあの頃を思い出し、ドラクエ7って異質だったわーと話しても、リメイク版では通用しないのである。あの思い出を、リメイク版では共有することができないのである。
謎の神殿を抜け出し、朝日を浴びたあの瞬間は、3DSでは体感することができない。
勝手である。
当時あれだけ苦しみ、いいから早く戦わせろよとわめいておきながら、いざその問題を解決してあげたらこのありさまである。
私たちは当時苦労したんだぞ!なのにこの楽さはなんだ!という厄介な老害ムーブメントをかましてしまう。厄介だ。厄介極まりない。
俺たちのころは色々と苦労したもんだ、それなのに最近のやつは……である。
ああそうだ、私は、あのやたらに長い謎解きに辟易としていながらも、あの苦痛ともいえる時間を、それでも愛していたのだ。
あの時間を愛することが、私のドラクエ7の思い出を、思い出として美しく保存していたのだ。
それがなくなって、悲しいのだ。
みたいに綺麗に言ってみたところで、老害ムーブメントであることには変わりない。
なのであの簡略化された神殿のことは、良改変であると言っていきたいと思う。
でも石板の間にいるあの妖精みたいなやつは本当に意味が分からないし、自分でこの台座かなあの台座かなって探せなくなったのは本当に悲しいと思う。
ああでもこれも結局老害ムーブメントだ!PS版ドラクエ7をプレイした以上逃れられないカルマなんだ、これは!
(文・やなぎアキ)
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