ドラクエにはシンプルな名前を冠するモンスターが多い。
大きいみみずの「おおみみず」。幽霊の「ゆうれい」。魔法を使う「まじょ」。
そんなシンプルネームモンスターの中でも異色の存在がいる。
さつじんきだ。
あまりにもドストレート。
さつじんきて。
キラーとかじゃなくてさつじんきて。
魔物というのは確かにこちらに対して殺意を持って戦いを挑んでいるのだろう。だからおかしい話でもないのだが、だからってさつじんきて。
あまりにもストレートすぎる。出てきた瞬間、「え?さつじんきなんですか?」と動揺を隠しきれない。「私今、さつじんきと遭遇しちゃったんですか?」と。
しかもこいつの場合見た目が本当によくない。
いわゆるカンダタ系の見た目で、数多居るモンスターの中でも比較的人間寄りなのだ。現に人間であるオルテガもこの姿だ(カンダタも多分人間だけど)。
さつじんきという名前で人型。それだけでも怖いのに、肌の色がデスストーカーなどのように青いわけでもなく、わりと人肌っぽいのが問題だ。黄土色ではあるが、ゲーム画面で見ると思ったよりも人間に近い。カンダタやオルテガ同様、人間ではないかと思える。
これだとマジモンのさつじんきにしか見えない。モンスターじゃなくて人間のさつじんきだ。
そうなってくると、あの服装もまた恐怖。
覆面をかぶって上裸で下もパンツで斧を持った怪人。それだけだとなんなら笑えるデザインだが、そいつの名前が「さつじんき」だと話が違ってくる。
変質者だーわーいなどと言っている場合ではない(斧持っている時点でわーいなんて言っている場合じゃない)。
絶対に話が通じない。夜道で出会ったが最後、絶対に襲われる。だって相手は「さつじんき」なんだもの。
あの真ん丸のおめめも、可愛いような気がしていたが「さつじんき」なのであれば別だ。そこに人の心なんて宿っちゃいない(まぁモンスターだから当然なんだけど)。こちらの言うことなんて耳には入らず、ただただ獲物としてしか見ていないその目は恐怖の対象である。
考えれば考えるほど怖くなってきた。
もういやだ、さつじんきに会いたくない。怖い。冒険やめる。
ちなみに、この名前が問題になったのか、以降「さつじんき」というモンスターは姿を消した(一応トルネコの不思議なダンジョンには出てくる)。当たり前だ。ひらがなで書いてあるから表現的にセーフだろうなんてことはない、さつじんきだもの。名前も問題だし、一歩間違えると人間に見えるデザインであることも大いに問題。
そして彼らは「ごろつき」と名前を変え、ドラクエ8に登場した。これなら安心。「なーんだごろつきか、そんなやつとっちめてやるぞ!」という気持ちになる。
しかし、もしごろつきがその皮を破いて中からかつてのさつじんきが姿を現したとき、背を見せて逃げる方がいいだろう。
それくらいに「さつじんき」という存在は恐ろしい。
戦うと全然弱いけど。
(文・やなぎアキ)
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