ゲームの攻略本は、それ自体が一つの読みものになるほど読んでいるとワクワクする。
とくに昔の攻略本はプレイヤーとの距離感がやたら近いことが多い。
ドラクエの攻略本と言えば、正確には公式ガイドブック。昔は世界編と知識編の二冊に分かれていることが多かったが、最近は分厚い一冊でまとめられていることが多い。
この公式ガイドブック、昔は書いてあることがやたらと親しみやすい文章になっている。「君が世界を救う勇者だ!」とか、「困ったら○○するのがいいだろう!」みたいな勢いづいていたりする。
特に呪文の効果を説明する文章が顕著だ。
最近の公式ガイドブックでは効果を淡々と説明しているが、昔の公式ガイドブックは脚色がやたら多い。
せっかくなので、FC版ドラクエ3の公式ガイドブックの呪文効果説明文をいくつか紹介しよう。
ちなみに初版は1988年。30年以上前だぁ。
ベギラゴン
気合一閃、灼熱の白い炎を敵に向かって叩きつけ、モンスターどもを巻き込んで骨の髄まで焼き尽くす。(以下略)
『ドラゴンクエスト3公式ガイドブック』より
語気が強い。「モンスターども」から感じるモンスターへの並々ならぬ憎しみ。そのモンスターを「骨の髄まで焼き尽くす」となるとそれはもうとんでもない呪文なのだろう。
そこまで書く必要ある?というのが、昔の攻略本の醍醐味だが、感情があまりにも入りすぎている。
イオナズン
この呪文は、火の精霊の力を借りて、空中すべての元素を一点に集め、敵の中心で大爆発させる大技である。与えるダメージ、約140ポイントは、鬼神をも肉片と化すという。
『ドラゴンクエスト3公式ガイドブック』より
またしても語気が強い。火の精霊の力を借りているという、ドラクエ7だったらものすごい伏線になりそうなことが書いてある。ドラクエ3だと精霊がもっと身近なんだと思われる。
一番気になるのは「鬼神をも肉片と化す」という部分。まじ?ほんとに?140ダメージでそれは言いすぎじゃない?脚色しすぎよ、でもそんなところが好き。
ヒャダイン
(前略)
敵は寒さと苦痛の中で全身を切り裂かれ、のたうち回るだろう。
『ドラゴンクエスト3公式ガイドブック』より
めちゃくちゃ怖い。「のたうち回る」て。子供が読んだら泣くぞ。こちらの公式ガイドブックはフリガナはふられていないので、子供は読まないのか、それならいいのか。
どちらにしても怖い。モンスターたちが何をしたというのか。いやモンスターだからいいのか。
基本的に強い魔法のときは説明文も大仰で物騒になりがち。
ギガデイン
正義を思う勇者の叫びが、天空に響鳴し、巨大な雷光となって、敵を撃つ呪文。(以下略)
『ドラゴンクエスト3公式ガイドブック』より
かっこいい……。「正義を思う勇者の叫び」、かっこいい。完全に必殺技。こういう脚色は大歓迎だ。まさに勇者だけが使える最強の呪文という感じがしてよい。
が、「響鳴」という言葉が変換で出てこず、検索してもイマイチヒットしなかった。意味はわかるが、あまり使われない言葉なのだろうか。
マヌーサ
(前略)
知性の低いモンスターたちは、その霧にうつった幻に向かって攻撃するため、ミスを連発するようになるだろう。
『ドラゴンクエスト3公式ガイドブック』より
「知性の低い」とか言う必要ある?
かわいそうだよ?
かなりモンスターにマヌーサが効いた場合、「こいつこんなだけど知性は低いんだ……」と思ってよろしいということか?思い切りのよすぎる説明文だな?
ザメハ
(前略)
一度に、全員を起こすことができるので便利だが、さすがに僧侶自身が眠らされているときは、使えない。
『ドラゴンクエスト3公式ガイドブック』より
親切!!!僧侶自身が眠っているときにも使えるのかな?などと考えたことは一度もないが、そこまで書いてくれているのは非常に親切だ!
試しにドラクエ11の公式ガイドブックを確認してみたところ、ザメハの説明文は
味方全員の眠りを解く
だけだった!これじゃ術者が眠っていても使えるかもって勘違いしちゃうよね~。しちゃうのかぁ?
ラナルータ
この呪文を昼間に唱えると、たちまち空を暗闇が染め、星のまたたく夜となる。また、夜に唱えれば、地平線の彼方より輝く太陽が呼び戻され、昼になるという。さながら、時の支配者になれる魔法だ。
『ドラゴンクエスト3公式ガイドブック』より
すっごい大それた古代呪文かのような説明文。
ゲーム中ではただ昼と夜を逆転させられるちょっと便利な呪文というイメージだが、こう書かれると本当に大魔法のように感じられる。やたら詩的だし。
「この呪文を使うと昼と夜が逆転する」くらいの説明で済むところを、こんな素敵な文章で表すのだ。これだから攻略本を読むというのはやめられない。
ゲーム攻略に必要な情報を収集する、それだけであればネットで攻略サイトを調べて探せばいいだろう。
しかし、攻略本には、こういった味のある文章を楽しめるという利点もある。
ドラクエに限らず、久しぶりに攻略本を読んでみると新たな発見があるかもしれない。
(文・やなぎアキ)
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