神秘的で謎めいているBGMって、どこかちょっと不気味さがありません?
謎な部分があるからこそ不気味なんだと思いますし、今でこそそういった音楽に魅力を感じたりもします。
しかし、それがとにかく恐ろしくて仕方がないと思っていた年ごろもありました。
ドラクエで神秘的で謎めいているBGMといえば、ドラクエ7の謎の神殿で流れる「時の眠る園」でしょう。
PS版のドラクエ7は、一番最初のスライムと戦うまで個人差はあれど1時間ほどかかります。たとえ二周目のプレイだとしても相当の時間がかかること請け合い。
それはなぜか?
そうですね、謎の神殿の謎解きが多いかつまぁまぁ難しいからです。
謎解きがなかなかできなければ、数時間はあの神殿に居続けることになります。そして当時の私はまさにそれでした。
あの頃は攻略本を持っておらず(そもそも1周目は攻略本見ない)、今のようにネットで簡単に攻略情報を調べるということもできませんでした(そもそも1周目は検索しない)。
なので、あの「時の眠る園」を延々と聞き続けていました。
あの曲は当時の私には恐ろしすぎました。静かに鳴るハープの音色を聞くと不安で不安でたまらなくなり、謎の神殿で迷い続ける私に否応なく孤独感を植え付けました。
キーファと共に来ているというのに、話しかけても「…。」ばかりで、それがまた怖かったです。なんで何もしゃべらないの!?!?!?!?と、恐らく私がゲームの中にいたらやつの両肩をつかんで、がっくんがっくんしていたでしょう。お前もちょっとは考えてくれよ!と詰め寄っていたでしょう。
あの曲が怖くて怖くてたまらないのに、早く抜け出したいという焦る気持ちが冷静さを失わせ、全然謎解きができず、さまよい続けるという悪循環。
しかも石板のある部屋までたどり着かないとセーブが一切できない仕様。いまでこそゲーム機をスリープ状態にしてしまえば数時間放置しても問題ないですが、プレイステーションにそんな機能はありません。ゲームをつけっぱなしで放置するだなんて恐ろしいこともできませんでした。神殿から出ようとしてもキーファが引き留めるんです。お前さっきまで押し黙っていたくせに、なんでここでしゃべるんだよ。
終わらせることができない恐怖。BGMがじわじわと私の精神をむしばんでいく。ドラクエをやりたいだけなのに、どうしてこんな仕打ちを受けなければいけないのか。もうフィッシュベルに帰ってぬくぬくと眠ってしまいたい……。ただただ神殿から抜け出したかったです。
結局その日はとっくに就寝時間を過ぎていたので、私は電源を落として眠ることにしました。しかし電源を切ってなお、あの曲が頭の中で鳴り続け、絶対悪い夢を見るに違いないとおびえながら眠りにつきました。
その後なんとか神殿の謎を解いて、石板が足りない!となり外に出ることができたときは、もうめちゃくちゃに嬉しかったです。石板が足りなくて良かった!これで家に帰れる!となりました。
が、その後石板を全てはめて行った先が、さらに暗くて不安でしかない世界だったとき、私は「ずっと暗いな!」と思いました……。
さらに、過去に戻るために毎回神殿に行かなくてはいけないのもまた憂鬱でした。それだけあの頃の私は、あのBGMが嫌いだったのです。
恐らく、私の恐怖値がもう少しあがっていたら、エスタード島から出ることができずに永遠に世界の本当の姿を取り戻すことはできなかったでしょう。
私にとって、ドラクエ7の序盤の鬼門は、謎解きそのものではなくBGMだったのかもしれません。
ちなみにこの記事は「時の眠る園」を聞きながら書きました。今はもう恐怖を感じることなく、いい曲だなぁと思って聞くことができます。しかし、それでもあの頃を思い出しては、怖かったんだよなぁとしみじみしてしまいます。
(文・やなぎアキ)
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