ラダトーム王が勇者に王位を譲ろうとするが勇者が自分の国は自分で見つけたいとそれを断る、これがドラクエ1のエンディングだ。
そのまま勇者は旅立とうとするがラダトーム王の一人娘、ローラ姫が自分も連れて行ってほしいと追いかけてくる。
そしてそのまま勇者はローラ姫と共に新天地へと旅立つのだ。
非常に王道、ファンタジーRPGの王道中の王道。世界に平和を取り戻した勇者と、勇者に助けられた見目麗しい姫、この二人が自分たちの王国を築くために再び旅に出る。美しい。王道すぎて今となってはなかなかできないエンディング。王道すぎるエンドがいいんだよ!
という、ドラクエ1は物語としてひっじょ~~~~に完璧な終わりだと思うのだが、
ラダトームのお世継ぎ問題、大丈夫かな?
ローラ姫、ラダトーム王の一人娘なんすよ。で、王妃様、つまり王様の奥さんはもうすでに故人なんですよ。つまりもうローラ姫しかいないんですよ、王族の血を引く王位継承権を持っている人間。
そんな!たった一人の!王の!子ども!
ラダトーム王はもう戦場に出ることができないほどの老齢であるため、りゅうおう亡き今、ラダトームの新しい未来担う最重要人物、それがローラ姫なのだ!
な・の・に!
ローラ姫、勇者にくっついて出て行っちゃったよ~。
これ王様の思惑としてはこうだったと思うのね。
う~ん、なんとか平和も我が愛娘も戻ってきたし、これであとはこの国の行く末をなんとかすれば完璧だなぁ。
でもわしももう歳だし、そろそろ次の王様をなんとかしないとなぁ。隠居したいし。別に娘が女王として即位しても全然いいんだけど、なんかそういえば娘がこの勇者に惚れてるっぽい感じもあったし、ここは一つ、わしの王位をこの若者に譲渡するっていうのはどうだろう。世界を救った勇者なら民衆からの支持も簡単に得られるだろうし、そのままこの若人と娘が結婚すれば王族の血も残せるし、わーお、わしってば天才。
ということで王様がルンルン気分で王位を譲ろうとすると、勇者が
「いや、自分の国は自分で探したいんで」
って若者ムーブ丸出しの断り方をするんだよ。これには王も
「王位断るやつとかいるんだ……」
ってドン引きだったと思うんだけど、そこはまぁ仕方ない。
若者の旅路を気持ちよく送り出してやるのが王様の責務。ラダトームの今後についてはまた考えればいいであろう。子供を作る元気はないが、まだまだ死ぬつもりもないしのう!
それにローラ姫もいるので、勇者のことは諦めてもらってまた別の恋をするのもまたおかし。
この時点で王様にはまだ心の余裕があっただろう。
が、問題はこのあと!
ローラ姫が突如階段を駆け下りてきて
「私も行きたい!」
と!!
さぞかし勇者はびっくりしただろうが、王様の驚きはそれを上回っただろう。恐らくワンピースでルフィが全然雷が効かないと知った時のエネルと同じ顔をしていたと思う、人知れず。
しかし、ここはさすがに勇者も断るであろう。一国の姫を連れていくことのリスク及び、なんといっても姫の父親がすぐそこにいるのだから、
「ええ~、いや、そこはまずお父さんの許可を取った方が」
とこちらをチラ見するであろう。
そしてすかさず「こら、ローラ!彼を困らせるのではない!」と一喝すれば万事OK、わしってば天才。完璧。
と思ったのに、
ローラ姫は無限ループの使い手だったのだ。
勇者が「いやぁ……」と話を濁すと、ちょっと涙ぐんだ後にすぐまた同じ質問をし、決してあとには引かないという鋼の精神の持ち主だったのだ。
わし、口挟む余地なし?
これが王の心境である。
ラダトーム王にとってしてみれば、このままローラ姫が勇者についていってしまえばラダトームの今後に暗雲差し込める、そんな気持ちであっただろうが、相手が無限ループの使い手であるならば仕方ない。王にとっての最大の敵は、りゅうおうでもなく、王位を断る勇者でもなく、たった一人の愛娘ローラだったのだ。
かくして、ラルス16世は世継ぎを失い、これからラダトームをどうしていけばいいのだ……と内心泣きそうになりながら、彼らの新たな門出を祝ったのであった……。
いやでもこれほんとに、ラダトーム王家の血筋どうなったんだろう。ローレシアを建国した勇者&ローラが、子供をラダトームに送り込んで(?)事なきを得たりしたんだろうか。教えて有識者の人。
(文・やなぎアキ)
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