ドラクエ11Sには、オリジナル版にはないエピソードが盛りだくさん。散り散りになった仲間たちが、それぞれ何を見て何を思ったのかが丁寧に描かれています。
今回はみんな大好きシルビアねえさんの追加エピソードを見てみましょう。
オーブを集めて命の大樹に到達した勇者たちが、ウルノーガの策略にはまり散り散りになりさらには世界が崩壊したところから物語は始まります。
たった一人海辺に流れ着いたシルビア……。
この画がもうかなりショッキングです。信頼してた仲間と離れ離れ、つらい。
意識がまだ朦朧とし、大樹で何があったのか、わかろうとしてもわかりたくないような、そんな心情がうかがえます。
まつげ、美しい。
ここの、この「なぜ……?」が響きます。
「あんなことが起きたのに、よく死ななかったな」という意味でしょうか、それとも「私だけ生きてるの?なぜ私だけ……」という意味でしょうか。ちょっとここで色々考えすぎてすでに泣きそうです。
そして遠くから駆け寄ってくるシルビア号の頼もしき船員アリスちゃん。シルビアが一体どれだけの時間あそこで気を失っていたかはわかりませんが、世界に異変が起きてからアリスちゃんは必死にシルビアのことを探し回っていたのでしょう。泣ける。泣いた。
そしてここで再び気を失うシルビア。次のシーンではシルビア号に乗りながら思いつめるシルビアの姿が。
シルビアのこんな悲しそうな姿、見たことない。ちょっとこの画像だけで、すごくつらくなります。
人々から笑顔を奪う元凶を倒すために旅についてきたシルビアでした。彼女は自分たちならウルノーガを倒せると信じていつも笑顔で旅をしてきたのに、そんな彼女に「アタシはもう死んだと思ったわ……」と言わせるほどウルノーガの力は絶大で、そして彼女たちは無力だったのです。
死んだと思ったのに、生きていた。そして、笑顔であふれさせるはずの世界は、闇に落ちていた。こんな絶望はあるでしょうか。なぜ生きているのか、確かに問いたくもなります。
いつも前を、上を向いていた彼女の視線は、下に落ちたままです。
不安を、シルビアは口にします。ドラクエ11の世界しか知らなかったことには、決して想像もできませんでした。彼女が不安を、こんな悲痛な面持ちで口にすることがあるだなんて。
世界が闇に覆われ、苦楽を共にした仲間の行方は知れない。もしや、自分以外の仲間は、もうすでに……。最悪の結末を想像するなんて、あまりにもシルビアらしくありません。
シルビアはいつだって明るくて前向きで、私たちを照らしてくれる太陽のように暖かい人だと思っていました。
でも彼女だって、どうしようもなく不安にかられることがあるのです。いつも彼女に明るさを期待していた自分をここで恥じました……。
あのシルビアをここまでにしてしまうほど、ウルノーガの力は絶望的なまでに圧倒的だったのです。
そんな弱気になっているシルビアを見て、アリスちゃんは行動します。
思い切り、シルビアが思わず手をついてしまうほどに思い切り平手打ちをします。
それは、アリスちゃんがシルビアの力を、気持ちを誰よりも信じているからです。
自分が誰よりも尊敬するシルビアの、その仲間が、どうしてやられてしまうことがあろうかと。
シルビアが仲間のことを諦めても、アリスちゃんはシルビアのことを決して諦めません。
仲間の誰よりも長く、シルビアのことを見てきたのですから。
シルビアのことを信じられるアリスちゃんは、だからこそシルビアも仲間のことを信じてあげられるはずだと、力いっぱいに説得します。
ドラクエ11では船の昇降口にいるだけだったアリスちゃんでしたが、本当は誰よりも近くでシルビアと、その仲間の絆を見てきたはずなのです。
だからこそ、誰よりもシルビアに刺さる言葉が言える。
アリスちゃんからの愛のムチをもらい、まさしく目が覚めるシルビア。
ここの「ありがとう」が、あまりにも深い……。
アリスちゃんしか、この役目はできなかったんだろうなと思います。
そしてスッと立ち上がり、自分が生きているのだから仲間も生きている、と心を固くするシルビア。先ほどまでとは違い、しっかりと前を見据えています。
「あの子たちに会った時はずかしくないように」、この決意があったからこそ、ドラクエ11で再会したときに「やっぱりシルビアはこんな世界になってもシルビアなんだ!」と私たちに思わせてくれました。
でも本当は、裏でこんな物語があったんですね。
アリスちゃんのような名わき役がいるからこそ、ストーリーは深みをますのです……。
さすがシルビア、立ち直ってからは行動が早いです。さきほどまでの闇にとらわれた姿からは想像ができないほど活力に満ち溢れています。
そして、暗い世界だからこそ自分にしかできないことがあるはずと信じ、自分にできることは何かを探そうとします。
仲間を探すのはもちろんのこと、さらに何かできることはないかと。これが私たちのシルビアねえさんなのです。
近くにはダーハルーネがあるということで、とりあえずそこに向かうことになります。
冒頭のシルビアと比べると、なんて安心感があるんでしょうか。
ちなみに私はここでめちゃくちゃ号泣して、むしろここで追加エピソードが終わってもいいくらいには満足していました。
さて、ダーハルーネにもやはりウルノーガの影響がありました。町は荒み、人々は落ち込み、暗い影が立ち込めます。
そんな中、シルビアとアリスちゃんはちょっとした人助けをします。
困っていた人を助け、感謝され笑顔を向けられたとき、シルビアは考え付きます。
誰もが苦しみ、誰もが困り果てているこの世界で、いったい自分には何ができるのか。その答えが出たようです。
それは、人助けの旅です。
ひとりで世界を救うことはできなくても、小さな人助けが集まればいつの日か、世界を救うことができるかもしれない。
そのために旅をしながら行く先々で苦しんでいる人、困っている人を助けて、少しずつ世界に光を取り戻そうと、そう彼女は思い至ったのです。
大きな光じゃなくていい、目の前の小さな光を一つずつすくってあげることこそが、今の自分にできることだと。
さすがはシルビアねえさんです。
闇の中、決して光を絶やさない。まるで灯台のような人です。そんな光を見守ってくれるように、いつでもそばにいてくれるアリスちゃんはさながら灯台守です。
そんな光に導かれ、一人また一人とシルビアのもとに人々が集まってきます。
こうしていつしか世助けパレードが発足されるわけですが、本記事で紹介するのはここまでです。
シルビアの世界に笑顔を取り戻す旅が、勇者の仲間探しの旅と交わるのは、そう遠い未来ではありません。
それまでの間に、一つ一つは小さいとしても、とてもたくさんの笑顔をシルビアが闇から取り戻していたのは想像には難くありません。
では最後に、追加エピソードで撮れたシルビアねえさんの最高の笑顔をどうぞ。
(文・やなぎアキ)
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