ドラクエ5の主人公は、6歳から16歳になるまでの間、およそ10年間奴隷生活を強いられる。
10年!なんという長さ!自己を大きく形成する6歳から16歳という大事な時期に、奴隷生活!
常人であれば到底普通の生活には戻れない!
しかし主人公は強い子だから、ちゃんとこちら側に戻ってくる。10年で済んでよかったとむしろ思ったかもしれない。
しかし!もし10年どころの話ではなかったら!もう5年、10年、いや20年長かったら!果たしてどうなっていただろう!
映画『ショーシャンクの空に』のモーガン・フリーマンが数十年ぶりにシャバに出てきて世の中の変化に驚きまくってどうしようもなくなってしまったあれみたいな感じになってしまうんじゃないか!
いやこちらはもっと深刻だ!何しろ奴隷なのだから!
もしも奴隷時代が長すぎたら彼はどうなってしまうのか!いってみよう!!
願いまーす
トイレに行くときには許可を得ないといけない。物を拾うのも許可を得ないといけない。
「願いまーす、願いまーす!」と大声で言い、監視員から許可を得ないといけない。
10数年、あるいは数十年そうしていた彼の習慣は、奴隷を脱したからといって抜けるものではない。
今日も彼の「願いまーす」は虚空を駆け抜ける。つら。
作戦名「命令してください」
ドラクエの作戦で、プレイヤーがコマンド選択をするといえば「命令させろ」。
しかし奴隷根性が染みついた彼が命令をできるわけがなく……。むしろ「命令してください」となる。
「ガンガンいこうぜ」や「命だいじに」なんかも、彼自身が言えるわけもないので、みんなそれぞれで判断して動いてくださぁい。
馬車の荷台だけ買う
ドラクエ5はモンスターを仲間にするのが目玉システム。モンスターを仲間にするには馬車を手に入れなければいけない。
馬車を買えば、その荷台を引く立派な白馬もついてくるのだが……根っからの奴隷になってしまった彼には馬車を引く馬なんて必要ない。
「自分が馬車を引きますからぁ!!」
さすが、毎日重い岩をムチ男のムチを全身に受けながら運んでいただけはある。
町に入らない
ドラクエ5は町に入るときには、モンスターではなく人間のパーティーメンバーが優先される。フィールドでメンバーを全員モンスターにしていても、町に入ると主人公が先頭になる。
が!人様の前を歩くどころか、そんな町に入るなんて恐れ多い!と思ってしまう奴隷な彼は、そもそも町には入らない。
なんとか人型っぽいモンスターに頑張ってもらう。スライムナイトの上とか、まほうじじいとか。
まほうじじいなんて頭の貝殻ぼうし外せばただのおじいさんだから余裕。
デボラと結婚する
長年の奴隷生活によりすっかり主体性が失われた主人公にとって、地獄な結婚イベント。誰と結婚するのか選ぶその瞬間は脂汗がたらーりたらり。
命令してくれればその人と結婚するのに、ビアンカもフローラも「私じゃなくてあの人と結婚した方がいいんじゃない?」みたいなスタンスを貫いてくる。いやお互いがそれを言うともう主人公的にはどうしたらいいか……。
とそこに救世主デボラ!「さっさと私を選びなさいよ!」スタイルのデボラ!心おきなく命令に従える!
デボラと結婚するという選択肢は決して間違いではないのでこれに関しては奴隷根性ナイスかもしれない。
サンチョ宅に住むグランバニア王
解放されてずいぶん経つというのに過ぎ去った年月があまりにも長すぎて奴隷癖が抜けない主人公。そんな彼がまさかのグランバニアの王様!?
頑強な城壁に、丸っと城の中に入った街並み、ふかふかベッド……。
か、彼がそんな環境に耐えられるわけがない!!
国民の安全を考えて町全てが城の中に入っている中、なぜかぽつんと城外に押しやられたサンチョの家が彼にとっての一番の安らぎである。ここを王の部屋とします。
いやこれじゃまるでサンチョが奴隷みたいじゃないか。
(文・やなぎアキ)
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