衝撃のラストから物議を醸した「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」。
劇場公開日に観に行った私だが、多くのドラクエファンと大差のない感想を抱いたのではないかと思っている。
少なくとも、映画館での二度目の鑑賞はなかった。
しかし、ようやく「映画ドラクエ」がDVD・ブルーレイ化されたというので、せっかくだから再視聴してみることにしてみたのだが……すると、映画館の大画面で観た時とは少し違う印象を受けたのでご紹介していこうと思う。
記事の性質上ネタバレは避けられないので、気になる方は視聴後に読んでいただけると嬉しい。
グラフィックがすごく良い!
機材が完璧に揃った映画館という場所ではなくて、いつも他の「ドラクエ」をひとりのプレイヤーとして楽しんでいる我が家のテレビで、改めてDVD・Blu-ray版ドラクエ映画を観てみると、グラフィックの良さに感動する。
もちろん映像美としては、映画館で観た時のもの上だ。
でも、この慣れ親しんだテレビに、あのクオリティのスライムやキラーパンサーが映し出されるというのは「新鮮」の一言。
正直なところ「あ、すごく頑張ってるじゃん!」と感じた。
のんびり集中しないで観るなら、むしろ高クオリティの豪華映画だとさえ思える。各キャラの表情が豊かなのも、とても良かった。アクションシーンよりも、冒険してたり会話してたりするシーンが特に見栄えが良く感じたのも、正直なところ。
内容はやっぱりダイジェスト
お酒を飲みながらダラダラ観ていたのだが、やはり内容については、ブツブツ切れたダイジェスト版ドラクエ5だなという思いが拭えない。むしろ映画館で観た時よりも何倍も強く感じた気がする。
多分、アルコールによってこちらの集中力・没入度合いも足りなかったのだろう。
だが、一方で「悪くないぞ、ダイジェスト版」とも思うのだ。それは私の家で映画を観るときのスタンスによるところが大きいのかもしれない。
楽しみ方によっては優良作品!
すでに内容を知っている作品を家で見る場合の楽しみ方は、もちろん人それぞれ。では私の場合はどうするかというと、「どうしても何度も何度も見入ってしまうほど大好き」パターンと「新しいストーリーを避けて、脳みそに負担をかけずに映像を楽しみたい」パターンがある。後者の場合、脳内補完がきけば十分なのだ。
幸い、ドラクエ5に関しては脳内補完するための材料が無数にある。ゲームを楽しんでいた時の記憶だ。
そのため、友達とLINEしたりおつまみを選んだりしつつの「ながら見」には、この映画は悪くないと思えた。
かなり酔っ払ってみても、終盤を除けば内容が追えなくなるような事はない。内容がシンプル(作中作が原作にそれなりに準拠している)なのが功を奏している。
ゲマの悪役っぷりやフローラ・ビアンカの可愛らしさなど、わかりやすい描写が多い作品と改めて感じさせられた。
ラストの抵抗感は拭えないものの……
やはりミルドラース登場後はちょっと抵抗感がある。一方で、それほど没入してなければ、かえって「傷つく」ほどの事でもない。そんなスタンスで観るのはこの映画への冒涜と言われればそれまでだが……それは売り言葉に買い言葉となってしまいそうなのでご容赦いただきたい。
ただ、内容を知っていた事もあって覚悟が出来ていた分もあり、ミルドラースの主張にも耳を傾けることはできた。
映画館で観たとき、ミルドラースが出てきて世界観が崩壊した事で、頭が真っ白になり、彼の主張に耳を傾ける事も出来なかった。
今回は知っていたからこそ、この映画が「ドラクエを使って」表現したかった事をしっかり見届ける事は出来たと思う。冷静に観るのは大切なことだ。
なるほどね、こういう事が言いたかったのね……と、ようやく聞き届けられて、ある意味スッキリした気もする。
意外と泣けたシーンもあった
これは少し意外だったのだが、飲みながら観ているとほろりとくるシーンもあった。「そもそものオチを知ってみていれば興醒めもいいとこだよ!」という人も多いかとは思うが、個人的には「やっぱり、ドラクエ5のストーリーはいいなぁ……」という思いが大きかったのだ。
これは大きいことだと思うし、個人的には有り難い。
何度も何度も同じゲームをやりこむ事は楽しいが、かといってゲームなのでそれなりに集中力や時間を要する。お酒を飲み、スマホをいじりながらストーリーを何度でも気軽になぞる事が出来るのは、かなり省エネで有り難いのだ。(人が一生懸命作ったものを、なんてひどい扱いをするんだ!と思う人もいるだろうが……)
同じ技術・クオリティで他のシリーズも作って欲しい
この映像のクオリティであれば、他の作品も観てみたいと素直に思えたのが収穫だった。
一番悲しいのは「やっぱりゲームは映像化出来ないのか……」や「やっぱりハリウッドには敵わないな……」と思う事。
脚本に難があるのを口惜しく思うほど、クオリティの高いCGアニメーションだった。
ぜひ、ドラクエ1のようなシンプルなストーリーの作品でもう一度チャレンジして欲しい。
ドラクエ7だとほとんどダイジェストになるんだろうな……とか、ドラクエ10で同じオチにしたら更にイラッとくるだろうな……とか、色々考えてみるだけでも楽しい。
そう考えると、力の及ばない駄作ではなく、意欲作だったなと、改めて思うのだ。
(文・OGTキシン)
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