ドラクエ11Sで新たに加わった縛りプレイのなかに「町の人にウソをつかれる」というものがある。
なかなか厄介そうな縛りだ。
町の人につかれる嘘とはどういうものか……。冒険に必要な情報に虚を混ぜ込むのか?それは困る。次に行く町はあっちだよなんて言って、それが嘘だったら非常に冒険の邪魔だ。
よし、せっかくだからこの縛りプレイを自分に科してみよう。
さぁ冒険の始まりだ。
け、結婚だなんてそんな!ボクもエマもまだそこまでは考えていないですよぉ。へへへ。
あ!でも待てよ、今自分は「町の人にウソをつかれる」縛りをしているんだった……!
これはもしや、嘘では……?本当は16歳では結婚できないのでは?
あ、エマのこの反応から見て、おばさんが嘘をついているということはなさそうだ。危ない危ない。しょっぱなから疑ってかかってしまった。
あはは、さすがにいきなり嘘をつかれるなんてことはないか。
ふぅ。
母さん!そんな、自慢の息子だなんて……。
ハッ!もしやこれが嘘……?母さんは、ボクのことを自慢の息子だなんて実は思っていないんじゃないか……?
いや、落ち着こう、嘘を言っているようには見えない。大丈夫大丈夫。少し神経質になりすぎているようだ。
さぁ神の岩に登るぞ!
へぇ、洞窟を抜けないとだめなのか。
でも待てよ、こういう重要そうな情報に嘘が紛れている可能性もあるぞ?ということは、この外壁を登っていくのが正解なんじゃないか?ロッククライミングするしかないんじゃないか?
でもそんな技術は持っていないので、大人しく洞窟を抜けることにしよう。
──
無事神の岩を登り切った。エマは嘘をついていなかったようだ。道中はモンスターだらけで町の人はいなかったため(マノロ?はて?)心おきなく先に進めたぞ。モンスターは嘘をつかないから気が楽だ。
さぁて、村に戻ろう。お、神父さんだ。やっほー神父さん、いつも冒険の書に記録してくれてありがとう!
ボエーーーーーーーーーー!!??!?
オワッタ……2020年にもなって、こんなことが起きるとは……。
え?
な、なんだ、何が起こったんだ!
嘘?今のは嘘なのか?頭がついていかないぞ。
気をとりなして、村の人に話を聞こう。大事な話が聞けるかもしれないぞ。
え!妖精なのか!たしかに妖精がいてもおかしくないくらい自然豊かな村だもんなぁ。もう16歳になるけど、まだ妖精が見えるとは嬉しいものだ。
え?嘘なの?え?なにそれ?
え!ここはイシの村じゃないのか!違う村に帰ってきてしまったのか?それとも、イシの村だと思い込んでいただけで、元々別の村だった……?ナニソレ怖い。
は?なんだこのじいさん。
あー、はいはいはい、それも嘘なんでしょ。どうせそんなこといって、この村には観光客がいっぱい来たりするんでしょ。一回騙されたからって、二回も騙されるほど嘘に鈍感じゃないぞ、こっちは。
……あれぇ?こうして話をつづけるってことはやっぱりこれは嘘じゃないのかな?でもさっき嘘をつかれたから、なんだか信じられないんだよなぁ。
他の人にも話を聞いていこう。
え!?デート!?ボク、君とデートしたっけ?エマのいる前でそういうこと言わないでくれます?あとそのデート内容なに!?ドラゴンの群れを見るデートってなに!?
全然記憶にない!記憶になくてごめんなさい!
え?何エマに誤解されるような嘘ついちゃってるのこいつ?
ぼ、ボクっ子のばあさん……。しかも死んでいるだって!ボクは妖精だけじゃなくて死んだ人物も見えるのか!……待てよ、妖精は嘘だったんだっけ?あれ?
いやお前も嘘かい。
だ、ダメだ。話を聞く人聞く人みんな嘘をついてくる。もう何も信じられない……。
家に帰ろう……。こんな嘘だらけの世界、もう耐えられないよ……。
エマが何か言っているなぁ。でもボクはもう何も聞きたくないんだ。どうせ嘘に決まっているからね。
そうか、エマはあのとき余裕しゃくしゃくだったんだな。そうだよな、片手で自重を支えてたもんな、あんな岩肌につかまって。
ははぁ、たまに本当のことを混ぜることで嘘を真実っぽく見せてるんだなぁ。
母さんがこの話を信じたのかどうかすらも、ボクにはもう判別がつかないよ……。
あ……このもったいつけた感じ。絶対これから嘘を言うじゃん。この村の人たち嘘が大好きだから、絶対言うじゃん。
この間のあけ方。絶対そうだーーー。もうだまされませーん。あらかじめ嘘って思っておけばもうびっくりしませーん。
ほら!ほらもう嘘確定!そんなはずないからね!
大きめの嘘じゃーん!知ってんだ、それが嘘だってこと!へへーんだ!
しかし嘘と見抜いたにもかかわらず何故か冒険に出ることになってしまった……。嘘つきたちに囲まれてでもいいから、この村で生きていきたいのに……。
勇者ってことにしてまで追い出したかったのかい、母さん……。
ほらもう!この服はおじいちゃんのものでもないし、ボクはおじいちゃんに似てもいないんだ!!
えーん!もう誰も信じられないよー!
(文・やなぎアキ)
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