ドラクエ好きなら「ビアンカ派・フローラ派」論争は知るところだ。
私がドラクエ5をやったのはかなり後になってから──そう、リメイク版のドラクエ5が発売されて、しばらくたってからのことだった。
その時、私が「え!?」と叫んだ思い出を、ここで振り返りたいと思う。
「ビアンカだよ、絶対」
「フローラだろ!当たり前だよ」
こんな論争が、発売後何年にも渡って盛り上がりを見せる。究極の選択について語るという意味では、たけのこの里・きのこの山論争に近いものを感じるテーマだと思う。
もちろん私も未プレイ時からその論争を知っていたし、きっとどちらかを選ぶときに悩むんだろうなぁと思っていた。
むしろその「悩むこと」そのものが楽しみになっていたしても過言ではない。
ようやくドラクエ5をやろうという段階になった時も、結婚イベントがもっぱらの楽しみでスタートした。主人公が勇者じゃないとか、モンスターが仲間になるとか、そのほかの内容もうっすらと知っていたけど、それよりもまずは何より「結婚イベント」で、後のことは二の次かな……くらいに思っていた。デボラがルックス的には好きだが、当時プレイしたバージョンには彼女はいない。
そして、物語は始まり、順調に進んでいく。
幼少期にフローラと出会った時、ここから物語が始まるのかとワクワクした。
レヌール城をビアンカと探検した時、お姉さんっぽく振る舞う彼女にドキドキした。
そして時は経ち──ルドマンと再会して、いよいよ胸がときめいた(そろそろ結婚イベントが近いと思ったからであって、決して御仁にドキドキしたわけではござらぬ、誤解のなきよう……)
「水のリング」と「炎のリング」、どちらも頑張って手に入れた。まだその時、私はどちらと結婚するか決めていなかった。どちらと結婚するかも決めていないのに、どちらかを選べることは知っていた。ビアンカさん、協力するとか言っていてあとでちゃっかり花嫁候補になるんだなぁ、とニコニコしながらモンスターと戦っていた。フローラと結婚する準備を進めながら、フローラに求婚しながら、頭の中はビアンカ・フローラ論争でいっぱいだった。
お嬢様のフローラか?
子供の頃からの縁があるビアンカか?
おしとやかなフローラか?
活発なビアンカか?
優しそうなフローラか?
優しそうなフローラか?
──結果、私はルドマンに話しかけた。
「なんと この私が 好きと申すか!? そ それはいかん! もう1度 考えてみなさい」
真面目に受け取られた。お決まりの一幕だろう。
でもなぁ。
一旦、ビアンカでいいか。やっぱ普通に、子供の頃の思い出の量は段違いだし、こんな騒動に巻き込まれた上にやっぱり選ばれないとかあったら、それはそれであまりにも可哀想だし。フローラはアンディ他色々いるだろうしね……
じゃ、とりあえずビアンカさん!結婚しましょう!
そんな感じで、なんとなくで花嫁を決めた。本当になんとなくだった。オープニングからずっと楽しみにしてきたイベントだったのに、随分とあっさり終わった。あとはラスボス戦くらいだなぁなどと思っていた。まだブオーンと戦ってすらいないのに。もちろんブオーン初戦は全滅するのに。そんなこと、結婚式で祝われている私は知る由も無い。
そして翌日……
新たなる旅立ちの日だ。
いよいよ花嫁イベントを超えたあとの世界を考えなくてはいけない。花嫁イベントが過ぎ去ってしまったこの世界を救うことを。
さて、じゃあそろそろ行きますか。
え!?
まって!?
フローラついてこないの!?
そそそそそそれはしらない!
それ全然しらない展開だ!
えええ、じゃあもっと慎重に選んだよ!?
待って、だってフローラさん、魔法とか使えそうじゃない!頼りになりそうじゃない!スピンオフとかでも活躍してるじゃない!そ、そんな、パーティーメンバーが変わるほど大きなイベントだったの!?ちょちょちょ、それは予定外。予定外!!!
結婚しないと一緒に旅してくれないの!?
いやいや、当たり前か……よく考えたら当たり前か……
はっきり言って他人だもんな。
よく言っても元・婚約者。むしろ元・婚約者のほうが一緒に旅するワケないだろ感がすごいし……
え〜〜〜〜でも私、全然一緒に来てくれると思ってたよ!?
だって、世界を救う旅だよ!?
実力者なんだろうから、ぜひぜひついてきてよ……
こ、こんなにも物語の後半に影響するイベントだと思っていなかった……
ちょっとしたアクセントくらいにしか捉えていなかった……
むしろ、フラれたフローラさんがちょっとムスっとしながらもついてきてくれるラブコメ的展開を予想していた……
たまにヤキモチ妬いたりしながら、頬を膨らませながら、一緒に世界を救おうとしてくれるのだと思い込んでいた……
考えてみれば、実家に残るのは当たり前か……
花嫁イベント、奥が深い!
知っていたつもりなのに、ようやく気が付いた瞬間だった。
私がその日から、花嫁論争に積極的に加わっていくようになったのは、また別のお話。
(文・深々シン)
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