
ドラクエには心に残るテキストメッセージがたくさんあります。
短い一文だけでもドラクエらしさを感じ、その世界観に一歩また一歩とのめりこんでいきます。
それはくすっと笑える一文だったり、時にはムっとするような一文だったり。
ドラクエ9のベクセリアという町は、病魔に侵された町でした。
これをなんとかすべく、主人公は考古学者のルーフィンと協力することになります。しかしルーフィンは自身の研究以外には何の興味も持たない偏屈な人物。
唯一の理解者は彼の妻であるエリザだけです。ルーフィンとは不釣り合いなほど天真爛漫な彼女のサポートもあり、病の元凶パンデルムを倒すことに成功した主人公たち。
これで町は病から救われたはずだ、と嬉々としてエリザに報告しに行きます。
そして、ベッドに横たわる彼女に話しかけると
返事がない。
エリザは息をしていないようだ。

一瞬時が止まったような、大きな衝撃を受けました。
ここに至るまで、エリザは咳をしていたりと明らかに具合が悪そうにしているのはプレイヤー全員がわかることでしょう。恐らくエリザも病に侵されているのだ。だが、夫であるルーフィンに余計な心配はかけまいと、必死に明るくふるまっているのだと。
初対面では、なんだかちょっとふざけた子だなぁと思ってしまいますが、そんな健気さを目の当たりにして、早く病魔を倒してエリザを治してやろうと誰だって意気込むはずです。
しかしその思いもむなしく、エリザは息を引き取ってしまいます。
あのテキストを見たときの、ひゅっと息をのんで、ゆっくりと事態を理解していく感覚。「しかばねのようだ」と言われるのではなく「息をしてないようだ」と言われることで、その場にいた主人公も目の前の彼女が死んでしまったことを、すぐには理解できなかったことがわかります。
何かイベントが入るわけでもなく、話しかけてすぐに、静かに、これまでのドラクエでは見たことがないメッセージが現れ、ただただ「間に合わなかったんだ」と思わされました。
ドラクエをプレイしていて人の生き死にを目の当たりにするのはこれが初めてではありません。それは大事な両親だったり、大切な幼馴染だったり、もちろん旅の途中で出会った行きずりの人だったこともありました。
しかしエリザの死はそのどれとも違いました。精一杯明るく振舞っていた思い出だけを残して、あの一文で彼女の人生は終わってしまったのです。
最期の言葉を聞くこともかなわず、あの一文で終わらせられてしまったのです。
その後の展開の都合を考えれば、主人公たちが町に帰ってきた時点で息を引き取っていた、いなければいけなかったのはわかります。
言葉を交わせずに終わったからこそ、ルーフィンはベクセリアという町を愛せたんだと思いますし、エリザの願いもかなったのだと思います。
死者が見えるという天使の力を持つからこそのエピソードでしょう。
それでもあの一文には呆然とさせられます。
まさかドラクエでというのもありますし、エリザのキャラクターからしても意外すぎて、この子も病気なんだなとわかっていても、まさかそんなと。たとえ察しがついていたとしても、あの冷静で淡々とした一文には言葉も出ないでしょう。
ドラクエシリーズでも屈指の悲劇です。それはやっぱりあの一文が衝撃的すぎたからだと思います。
無理だとわかっていも、あのテキストを見なくて済む方法はないものかと考えてしまいますね。
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