ドラクエにはダメ王子が何人か存在する。
ダメさ加減はそれぞれ。ぶっちぎりでダメなのはもちろんドラクエ8のチャゴス王子。
最新のダメ王子はドラクエ11のファーリス王子だろう。
両親や国民からの過度な期待に応えるため、嘘を塗り固めてなんとかやりすごしているファーリス王子。16歳の誕生日の記念に行われるファーリス杯では、馬に乗れないからと言う理由で勇者を強引に影武者に仕立ててしまう。
その後もデスコピオン討伐の手柄を自分のものにしたりと、う~んな態度が続く。
が、シルビアに騎士としての振る舞いを諭され、その後はヘタレで嘘つきだった自分とは決別し、真の騎士になるため日々訓練に励んでいる。
と、ダメ王子の中ではかなり改心した方と言えるだろう。まだまだ直した方がいいところもあるが、今後に期待である。
問題は、彼の親である。特に父親、サマディー王だ。
そもそもファーリスがここまでになってしまったのは、王と王妃によるとてつもない親バカっぷりによるものである。ひたすらに甘やかし、その割にはやたらと期待をし、それゆえにファーリスはプレッシャーを感じて本当のことを言えずにごまかすようになってしまったのだ。親なのだから、息子の様子がおかしいなとか一回でも思わなかったのだろうか。
デスコピオン討伐を息子に命じたときには「もしかして実は全てわかっていて、息子を改心させるために無茶ぶりをしたのでは?」とちょこっとだけ思わなくもない、ほんのちょこっとだけ。だが、その後王都で目を覚ましたデスコピオンに怖気づくファーリスを見て「ほあ?」みたいな間抜け面をしているので、まじで息子の嘘を信じ切っていた模様。親ばかにもほどがある。それで一国の王が務まるのか。
彼の愚かっぷりはそれだけではなく、ファーリス杯を豪華にするためになんと国宝の七色の枝をどこぞの商人に売るというとんでもないことをしている。しかも察するに誰にも知らせずだ。そのことをファーリスに問いただされた際には逆ギレする始末。いや、誰もファーリス杯を豪華にしてほしいなんて頼んでいない。ただこいつが親ばかなだけである。国として財政難なのであればまだしも、お祭りを派手にしたいからというどうしようもない理由で国宝を売る……国民に不信感を募らせるアホ行為である。
その後もさらに王家に伝わるガイアのハンマーを売ろうとしていたのだから、絶対反省していない。この時の理由は来年のファーリス杯のためらしく、もうファーリス杯をやめろと言いたくなる。というか国宝を売るとかいうその場しのぎじゃなくて、もっと継続的な案を出せ。国宝も無限じゃないんだぞ。
サマディーは嫌いではないが、この王のことを考えると住むには少々不安が残る。ファーリス王子が即位したら、あるいはなんとかなるだろうか。
と、あまりにも王として不安があるサマディー王。ファーリスにはまだそうするだけの理由があったわけだが、サマディー王はなぜこうなのか……。多分生来の性格なんだろうが……。
一応騎士の国の王なだけあって、若い頃は勇敢な騎士だったという話を聞くことができる。また国民からもこれといって悪評は聞かない。息子とお金のことになると色々杜撰になるのだけで、普段はいい王なのだろうか。
だが各国の王が集まる四大国会議での様子を見るとそうとも言えない。各国の王はみな賢そうで、さすが国を任されているだけあると思わせてくれる。が、サマディー王だけはなんだか話についていけていなかったり、どこか抜けた態度だ。
これが次世代の四大国会議となれば勇者・マルティナ・ファーリス・シャールというメンツになるわけだが、この中でたしかにファーリスだけやや頼りないものの、うまくファシリテーターとして会議を回してくれそうな気もする。そう考えるとやはり、サマディー王……と冷ややかな目で見たくもなる。
考えれば考えるほど、ダメ王子であるファーリスよりもよっぽどダメ王である。
とはいえ、あのチャゴス王子という化け物を生み出してしまったクラビウス王のことを考えると、いずれ王位を継ぐファーリスがあのように育っているのだからサマディーの未来は明るい。この辺はもしかしたら王妃のおかげなのかもしれないが……。
(文・やなぎアキ)
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