久々だ。
最初から最後までしっかり通しでやったのは何年ぶりだろうか。
私にとってのドラクエは、このSFC版のドラクエ1から始まった。
随分前にドラクエ1を初プレイしたときの思い出を書いたが、あの頃の私とはもう違う。
攻略チャートは頭に入っているし、町の人の話なぞ聞かなくても重要アイテムをすべて見つけられる勢いだ。
そんなこんなでドラクエ1をサクサクとプレイすることにした。
子どものころはあんなにも孤独感をあおられて辛かったフィールド曲「広野を行く」も、今となってはあまりの名曲にニヤニヤする、そんな大人になった。
王様からもらう120Gに対して、文句をもらさずいかにやりくりするかを考えるような大人になった。もらえるだけありがたい。
ガライまでは楽勝だった。あまりにも楽勝だった。
しかし、マイラに向かおうとして気づく。
フィールド広すぎじゃね?
すっかりと最近のドラクエになれてしまった私は、移動手段が徒歩しかない勇者及びランダムエンカウントによりひっきりなしに現れる魔物に早々に音を上げそうになった。
め、めんどくせぇ。
めんどくせぇと思ってしまった、ドラクエに対して。
これが現代のゲームに飼いならされた社畜の姿。それをまざまざと痛感する。
これほどまでに岩山にイライラしたことはない。岩山により進路を阻まれ道を間違えしかしその間違いに気づくのは行き止まりにたどり着いてから。
このなかなかたどり着かない道中を昔はもっと楽しめた、楽しめたのだ。しかし今の私は、「景色も大して変わらないし歩くだけでモンスターは出てくるしで楽しみがない」と思ってしまっていた。あまりにも愚か。
ドラクエ1のフィールドなんて大した広さもないのだが、いかんせん覚えている町の場所がなんとなくなのである。
よくもまぁ幼き頃の私はやりきったなという気持ちである。
そんな風にドラクエ1をプレイしていると、改めてこのゲームの秀逸さというのがよくわかってくる。
ドラクエ1はストーリーを進める順番というのは特にはない。モンスターの強さが橋を渡るごとに強くなるので必然的に進む順番は決まるのだが、腕に自身があればいきなりドムドーラでロトの鎧を手に入れてもいい。
しかし、そこをうま~く想定した順番で進められるように町の人々が情報を出してくる。それがあまりにも美しい。
最初はまずラダトームの北西のガライの情報がラダトームの町で聞ける。道中洞窟があるが、入るか入らないかは自由だ。しかしガライにたどり着いたとき、途中にある洞窟はロトの墓であると教えられることで、漏れを防ぐことができる。
そしてガライにて、さらわれたローラ姫の情報を聞き、今度は西に向かうことになる。その後魔法の鍵の情報を聞いたり妖精の笛を手に入れたりと冒険を進めていくことになる。
この町の人の情報をきちんと聞いていると、ちゃんと迷わず順番通りに進めることができるのだ。
自分でしっかりと情報を整理して、次はどこに何をしにいくべきだ?と考える。これがRPGだ。
別に町の人から情報を得なくても進められたのだが、この醍醐味を味わうために全員に話を聞いた。町の人の話を聞くことはRPGでは鉄則!!
情報の出し方次第でプレイヤーの行動を制御する、シナリオの妙である。
また、町の数は決して多くないのに十二分に冒険している気になれるのは、鍵の存在もあげられる。
すべての町に鍵がないと開けられない扉があり、最初に訪れた時点では開けられないことが多い。一度訪れただけでは行けない場所が多くあることで、同じ町に複数回行かなければいけない。フィールドを縦横無尽だ。
ルーラではラダトームにしか戻れない本作において、ランダムエンカウントのフィールドを何度も行き来するのはやはりめんどくさい。しかし、それがドラクエ1の面白さであり、それが世界中を冒険することだと思うと、かつてのワクワクした気持ちが蘇ってくる。自分は今まさに、世界のありとあらゆる場所を冒険しているぞ!と。
ワールド構成が絶妙だ。
洞窟のあの暗闇も、スムーズに進めないことからめんどくささを感じるが、狭い洞窟を存分に生かしたギミックであると考えると興奮さえしてくる。
そして常に流れる名曲たち。
恐ろしくもどこか可愛らしいモンスターたち。
天才だ。
天才が作った作品だこれは。
最初は、すべてわかりきっているからサクサクプレイしようと思っていたのに、気づけばこの完成された作品を全力で楽しまねばという気持ちになった。
わかってはいるけど町の人の話を聞く、わかってはいるけどメルキドに行ってからよろいを手に入れる、わかってはいるけど王女の愛でしるしを探す。
そうしていると、ドラクエ1の完成度がよくわかる。当時のプレイヤーが頭を悩ませ冒険していた様子がよくわかる。
そしてりゅうおう(変身前)にベホイミを連発され、りゅうおう(変身後)に倒されたとき、サクサクプレイなどと慢心していた自分が恥ずかしくなった。
天才の作った作品に慢心などいらぬ!全身全霊で挑め!と改めて思い、全身全霊でひかりのたまを取り戻したのだった。
ドラクエ、楽しい。
(文・やなぎアキ)
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