※ドラクエ10オフラインを元に書いています。
ダストンとチリ。
血のつながらないこの親子は、主にはダストンの変人っぷりのおかげで非常に奇妙な関係となっている。
ある日いつものようにガラクタ漁りをしていたダストンは、ウルベア地下遺跡に捨てられていた赤子を拾ってくる。何の役にも立たないガラクタが好きなダストンにとって、泣くだけで何もできない赤ん坊もまた魅力的に映ったわけだ。赤ん坊はチリと名付けられすくすくと育って行った。
しかし時が過ぎ、立派に成長したチリが父のためを思って色々おせっかいを焼きだすと、ダストンは怒り、結果大げんかの末彼女は家を出てしまった。
そんなわけで二人の親子の縁は切れてしまったかに思えたが……。
チリは怪盗ポイックリンとして父が危ない目に合わないよう彼からガラクタを取り上げていた。それを知ったダストンは自身の身を案じてくれるチリに感謝をするどころか、やっぱり怒ってしまう。
それでも彼はチリのことを娘と呼ぶ。彼にしても、チリのことを勘当したわけではないようだ。チリもまた、娘と呼んでくれた父に感謝する。
二人は(というかダストンは)不器用なだけで、親子としての絆をしっかりと育んでいたのだ。何年一緒に暮らしてきたと思っているのか、というダストンの発言からもそれは感じ取れる。およそ他人には無頓着なダストンなのに、チリが自分のことを理解していないようだとなると呆れるんだから、なんだか微笑ましくて笑ってしまう。
その後仲間になったダストンは、相変わらずガラクタにご執心。
見つけるもの出会う人が、自分が気に入るガラクタ基準にあるかどうかがひたすら興味の対象である。
そんな中キーエンブレムを手に入れるため再びチリと会う。そこで彼女はドルワーム王国の研究員として立派に働いていることを知る。ここでもダストンは「どーでもいいんですっかり忘れていた」などと言いつつ「相変わらず人の役に立つとかくだらないこと言ってるんですね」と娘の近況を知れたことを彼らしく嬉しがっている、ようにも見え……ないか。
どーでもいいのは別に嘘ではないとは思うが、知れたら知れたでちょっと嬉しい、のを本人も気づいていない状態ではなかろうか。
そしてそこで明かされるチリの本当の出生。
なんとチリはドルワームのウラード国王の実子であり、つまりはお姫様だったのだ。
どひゃー。
諸々色々解決したあとで、国王はチリに一緒に暮らそうと申し出る。が、王宮暮らしは自分には合わない、それに自分にとっての父はガタラの養父だけだと申し出を断る。父のように自由に生きたいのだ、と。いい子。
これを聞いていたであろうダストンに話しかけてみると「何も見なかった、何も聞かなかった」と言ったのちにこんなことを言う。
お父さん……。
親としては至らないところだらけのダストンではあるが、この不器用な愛情がチリに伝わっていたからこそ、彼女はダストンのことを父として慕っているのだ。
「どーでもいい」と言いつつ「今までもこれからもわしの娘」と断じることができるダストン。娘が王族であることを全く気にせず、そんな安っぽい価値観どうでもいいとまで言っている。ガラクタ好きなダストンにしてみれば、国のために働く王族などたしかにこれっぽっちも興味がないだろうが、それゆえにチリはチリであるという色眼鏡なしの見方が出来るのだ。
また、同じタイミングでフウラに話しかけると「ダストンさんさみしい?」と質問している。
それに対してダストンはこう答える。
「どこへでも行って、好きなことをしてればいい」というのは、チリの「父のような自由な生き方をしたい」と全く同じことである。何も見てない何も聞いていないという割には、娘の今後の生き方を尊重しているのだから本当にこのお父さんは……まったく。
一見、娘のことなんてどうでもいいからこその好きなようにすればいいという発言でもあるが、娘も自分みたいに好きに生きればいいんだ、生きて欲しいという願望にも思える。他人を気にせず好き勝手に生きているダストンだからこその、愛情の示し方だ。
「今までもこれからも親不孝者のわしの娘」はぜひともチリ本人に聞かせてあげたいものだ。ダストンは絶対にいやがるだろうけど。
この親子、好きだなぁ。
(文・やなぎアキ)
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