イシの村。
勇者の生まれこそユグノアだが、彼は生まれてすぐに故郷を追われこのイシの村に流れ着いた。そして自身の出生を知らぬまま、彼は村で育てられる。
つまりイシの村は勇者にとって第二の生まれ故郷なのである。
イシの村は人里離れた地にある。
そこに住む人々は皆村で生まれ村で育ち、そのまま村で死んでいく。外からの来客はほぼないに等しく、閉鎖的といえば閉鎖的な村だ。しかしそこに住む人々は皆優しい。来訪者があれば優しく出迎えてくれるのではないだろうか。
だが、この村は外にはあまり知られていない。物知りなカミュですらこの村の存在を知らない。
勇者がデルカダールに赴き自身の正体を明かすと、デルカダール王は彼にどこからやってきたのか尋ねる。勇者は正直にイシの村であることを答えると、王もまた、そのような地に集落があったことを知らなかった様子を見せる。イシの村に一番近い町であるというのに、存在を知らないのだ。勇者に教えてもらって初めて、その存在を知り、そして勇者を育てた悪しき村としてホメロスに焼き討ちを命じる。デルカダール王、もといウルノーガは勇者の存在を恐れていたはず。世界中を探していただろう。そのさなかにイシの村を見つけていれば、必ず目をつけていたはず。しかし実際には、勇者自身が出向いてその存在を明かすまで全く知らなかったのだ。
それほどまでにイシの村は辺境の村なのだ。人里離れた集落なのだ。
いや、言うほど人里離れているか……?
断崖絶壁に囲まれているとか、山の奥深くとか、そういうところにあるならまだわかる。
しかし、勇者が旅立ってからデルカダールまでの道のりを思い出すと、驚くほど平坦。平坦且つ平和的。弱いモンスターしかいない(これはゲーム的都合ではあるが)し、途中に商人がいてキャンプ地まである。
馬に乗って、いや馬に乗らずとも人間の足で余裕でデルカダールにたどり着くことが出来る。と言うことは逆もしかり。デルカダールからイシの村までは簡単に行くことが出来るはずだ。
なのに誰も知らないのか?どういうことだ?もっとみんな外に出ろ?
キャンプ地なんかが各地にあるくらいだから、外に出る人がまったくいないわけじゃないんだろ?なんでみんなイシの村知らないん?
村の入口が狭く、山間部にあるため確かに見つけにくいかもしれない。が、ご丁寧に門のような囲いがあったりするし、村人が見張りなのか何なのか立っていたりもするし、そこまで見つけるのに難易度が高いようにも思えない。
ウルノーガはもっと必死になって探せ。灯台下暗しとか言っている場合ではない。
勇者が生まれ育った辺境の村といえば、ドラクエ4の山奥の村だろう。この村は明らかに勇者を魔物たちから隠すように育てている。そのため外から来た者にもよそよそしい。山奥の村という名称からして、そうそう見つけられない場所にあるだろうことは予想できる。
南下すればすぐにブランカに着くことになるが、これをイシの村とデルカダールと同列に語ることはできない。なんせドット絵だ。山奥の村とブランカの間にどれだけの隔たりがあるかはわからない。プレイヤーからすればすぐなだけで、実際はもっと鬱蒼と生い茂った山の奥深くから旅立ち、相当歩いてようやくたどり着いた城なのだろう。
ドット絵であれば、人里離れた集落も容易に表現できる。
しかし、同じ条件下のイシの村とデルカダールは、あくまでも冒険の始まりの地であるからそこまで複雑な道のりにはできない。割とすぐにデルカダールに到着しないと間延びしてしまう。そういった制約があるため、「こんなに近くにあるのに見逃すかね」という状態になってしまった。
ゲームの表現がリアルになると、こういった部分で難しさが出てしまうのだなぁ。
(文・やなぎアキ)
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