ドラクエのキャラクターについて、いくつかの観点から読み解いていく!
筆者の超個人的主観によるキャラクター辞典!
第五回目はトルネコ!
※全て筆者の主観であり、筆者のプレイスタイルによるものであることをご了承ください
見た目
まるまる太った体型に、豊かな口ひげ、およそ戦えるとは思えない軽装さ。それまでドラクエの登場していたキャラクターの中でも異質な存在と一目でわかる。
それまでは、1・2・3のいかにも旅をする、戦うキャラクターたちと、王宮兵士ライアン、武闘家アリーナ、僧侶クリフト、魔法使いブライ、と見た目からも戦って旅をしていそうな面々ばかりだった。
が、このトルネコは完全にその辺にいる気のいいおじさん。
しかし背中にしょった荷物の多さから、各地を長いこと旅していそうだぞ……!という雰囲気を漂わせる。このあたりのバランス感覚はさすが鳥山先生。
衣服の縦じまのパジャマっぽさが、いかにも町人ですよ感を出していて、この人は戦士や武闘家などではありませんよと一目でわからせてくるのが妙だ。
キャラクター
世界一の武器屋を夢見る、旅する武器商人である。
性格は見た目のまんまと言っていい。優しくておおらかである。ポポロという息子がいる一児の父親なだけあって、面倒見もいい。国同士のいざこざも、若い者の恋路であるならばと世話を焼いてしまうほどである。
しかし商人らしく、ただではそのような厄介ごとを引き受けない。それ相応の見返りがあればこそ、彼は頑張るのだ。
犬を貸してほしいから牢屋から人を脱走させる、橋を作ってほしいから大工の目を覚まさせる、自分の店が欲しいから人の恋路も応援しちゃう。
もちろん彼が優しいことは間違いない。しかし世の中損得である。商人であることは、自分の成し遂げたいことの道筋に善行があるなら面倒でもそれを行う。
そして、夢を叶えるためならば危険な目に合うこともいとわない。自分には無謀であると思われても挑戦することを忘れない。けっこうな難所である大灯台に一人で乗り込むそれは、ぜひとも勇気と呼んでやりたい。
いくつになっても、夢に向かって努力を忘れない人間なのだ。
この現代社会においては、彼の生きざまに見習うべきところはあるかもしれない。
ストーリー
レイクナバに住むトルネコは、愛する妻と息子を持つ一人の父親。武器屋の店主に雇われて日々働く身だが、いつかは自分の店を持ちたい!という夢を持つ男でもあった。
そんなある日、急に意を決したトルネコは家を飛び出し、店を無断欠勤し、自分の店を持つためのお金稼ぎ、そして物件探しを始める!!
今日に至るまで、このような目的でいきなり旅に出るキャラクターというのはドラクエではトルネコ以降現れてはいない。夢に生きるぜ!というのはかっこいい。
その後彼は見事自身の店を手に入れる。しかも世界有数の都会に!
しかし、彼の本当の夢は、伝説の天空の剣を店頭に置くような、そんな世界一の武器商人になること。自分の店は足掛かりでしかない。
彼は夢をつかむため、再び旅に出る。愛する家族を置いて旅に出る。そして、伝説の勇者に導かれていくのだ……。
か、かっこいい……。今まで実はちょっと(かなり?)トルネコがパーティーメンバーにいることを疑問に思っていたのだが、こうやって書き出してみると、めちゃくちゃかっこいい。己の夢のためだけに、魔王に立ち向かっていくその姿。父の背中は、大きかった……。
性能
商人のため、ちょっと特殊な能力の持ち主。
アイテムの鑑定をすることができ、戦闘時も独自の行動をとることがある。
命令ができなかったFC版時代はもちろんのこと、命令できるようになったリメイク版でもときたま命令を無視してこの特殊行動を行うことがある。
子守唄を歌ってみたり、相手の口をふさいでみたり、アイテムを盗んでみたり。コミカルな行動が多く、ある意味戦闘に華を添えてくれる。
能力値的には戦士ライアンや武闘家アリーナのゴリゴリ前衛キャラに比べるとどうしても見劣りはしてしまう。後衛はクリフトやマーニャなどが控えているため、なかなかスタメンにはしづらい能力値かもしれない。
ただし、ただの商人にしてはHPの伸びはよく、安心して馬車の中をまかせられる人材。一旦入れ替えて攻撃をしのごうとするならば、それなりの盾にはなってくれるイメージだ。属性攻撃に弱いのが難点だが。
リメイク版にはメガザルの腕輪があるので、トルネコに装備させていた。トルネコすらも死んでしまうようでは、他のメンバーもとっくに死んでしまってパーティーが瓦解しているだろうという考えだ。このように、私にとってトルネコはそういうキャラだ。
その他の活躍
トルネコの活躍と言えば、言わずと知れた不思議のダンジョンシリーズだろう。
ローグライクゲームの代表的作品として名をはせる不思議のダンジョンシリーズは、トルネコさんのおかげでヒットしたといっても過言ではない。国民的ゲーム、ドラゴンクエストのキャラクター、トルネコを主人公に据えたことにより、そのころはまだ一般的ではなかったローグライクゲームを世間一般に広く知らしめることとなった。その後、風来のシレンやチョコボの不思議なダンジョンなど後発のゲームが生まれた。
トルネコは他のスピンオフ作品への登場も多い。そのキャラデザと商人というキャラクターは扱いやすいのだろう。お金を稼ぐゲームいたストはもちろん、ライバルズのリーダーにも抜擢されている。不思議のダンジョンシリーズにて、異世界に行くことには慣れているためヒーローズ2での登場もテリーと同じくらい自然だった。
人気になりづらいおっさんキャラクターだが、不思議のダンジョンへの抜擢は彼にとって運命の出会いだったのではなかろうか。
総評
ドラクエ界でも異質な存在トルネコ。戦いの専門でもない中年の男トルネコ。
しかし、人一倍自身の夢にひたむきで、そのためなら誰よりも危険な道を歩くことができるのだ。
私たちは、世界を救うことはできなくても、夢を追うことはできる。
夢のために努力を忘れず、夢のために人に優しくし、夢のために時には勇気を振り絞る。
そうやって生きていきたいものである。
(文・やなぎアキ)
関連記事