ええ!?
坊ちゃん、いえ、王!本気ですか!?
そ、そんな……。
坊ちゃんが奥方様を追ってこの城を出てから今日まで、このサンチョめは坊ちゃんを探すために幾度となく死線を潜り抜けてまいりました。
かつては私も一人でサンタローズからグランバニアまで渡った身。城の兵士だけに任せていてはいけないと一念発起し、世界中を探し回りました。
その中で私は以前よりもずっとずっと強くなっていったのです。まだ幼かったお二人を連れ、決してケガをさせないようこの体を張って守ってまいりました。
このサンチョめは自信を持って言えます。必ずや坊ちゃんの旅で役に立つでしょうことを!
それなのに!それなのに!
なぜ連れて行ってくださらないのか!
なぜルイーダさんのところで私めを呼んでくださらないのか!
私言いましたよね!?
このサンチョめ、まだまだ現役と!坊ちゃんが石になっていた8年間、誰よりも戦っていたのはこのサンチョめです!
坊ちゃんのモンスターたちはこの8年間城でぬくぬくしていただけです!少なくとも、馬車でずっと待機しているようなスラリンよりは役に立つと思うのですが!坊ちゃん!
それに私を連れて行けば、町の宿に泊れない野宿の夜でも温かい食事をお出しすることが出来ます!洗濯も率先して行います!お使いだってなんだってしますよ!
戦闘以外でも役に立つこと請け合いです、モンスターよりも役に立つ自信があります!
それなのに何が!このサンチョめの何がいけなかったのですか!
あれですか!
やはり装備がシルクハットとステテコパンツだけだったのが良くなかったのですか!石化がとけた坊ちゃんが私を見たときの驚きようからうすうす察してはいましたが……。
たしかにこれは自分でもちょっとないなとは思ったのです……。しかし!坊ちゃんを探す旅はあくまでも私のエゴ!装備に過度にお金をかけるくらいなら、幼いお二人の養育費に全てかけたかったのでございます!決して私の趣味ではありません!
グランバニアの品を疑われないように、道中はちゃんと正体を隠していましたから、その点はご安心ください!
あとこのおなべのふたは長年愛用している鍋の蓋が盾にちょうどいいなと思って持ってきただけでございます!
これがよくなかったのであれば、服を着ます!このシルクハットに合うような服をちゃんと来てまいります!
なので、なのでどうかこのサンチョめをパーティーに入れてください……!
帰ってきたとたん、留守番だなんてサンチョめは寂しゅうございます。パパス王も結局私を連れて行ってくださらなかったというのに……。
なんていうことを坊ちゃん本人に言えるはずもなく……。
私は今日もグランバニア城の外でシチューを作っているのです……。
(文・深々シン)
関連記事