ドラクエのカジノは作品によって特長がある。
どの作品のカジノも思わずはまってしまう。
たとえばドラクエ5。
ドラクエ5のカジノで遊べるゲームは、
・スロット
・モンスター闘技場
・スライムレース
・すごろく場(リメイクのみ)
・ポーカー(リメイクのみ)
リメイクのみで遊べる二つのゲームは置いておくと、3つだ。
その中で私が一番好きなのはモンスター闘技場だ。
稼ぐのなら断然スロットがいいのだが、モンスター闘技場はロマンがある。物語がある。
複数のモンスターたちが争い、最後まで生き残るのは誰なのかを当てるものだ。モンスターの権利など一切合切無視した娯楽だ。これを果たしてまもの使いとしてモンスターと仲良くしている主人公は一体どんな心境で眺めているのだろうか。それがもう面白い。
モンスターを愛ある拳で改心させ、一緒に旅をしている一方で、モンスターたちが血で血を洗う戦いをしている様子を熱のこもった拳を振り上げて観戦しているのだ。情緒どうなっているんだ。
スラリンやブラウンは、そんな主人の姿を見て何を思っていただろうか。かしこさが20を超えてしまった彼らがそれを理解したときを思うと切ない。大穴狙いでスライムに賭けた主人が、案の定やられていくスライムを見て落胆する姿、絶対に見たくないだろう。ピエールはそれでもそんな主人に忠誠を誓うというのか……。
結婚した彼女も驚いただろう。父親の意思を継ぎ母親を探す旅をずっと続けているという主人公。そんな彼についていくと決めた彼女らが目の当たりにしたのは、有象無象のモンスターたちが戦っている姿を白熱しながら見ている夫の姿である。しかも一緒に戦ってくれる仲間であるモンスターたちと変わらぬ姿をしているというのに。
傍らにいるスライムと、闘技場で戦っているスライムを二度見すること間違いなし。
モンスター闘技場という娯楽のことは知っていても、まさかまもの使いである主人公がそれを楽しんでいるだなんて……。どういう感情で見ているの?と疑問に思ってもおかしくない。
これだけ過酷な旅をしているのだから、きっとどこかで倫理観が壊れちゃったんだわ……。
さらには子供たちだ。リメイク版の情報ではあるが、娘の方は父に似てモンスターと仲良くなれる素質がある。そんな娘が、モンスターが殺し合っている場を見て、それだけではなく、尊敬する父がそれを白熱しながら見ている事実を突きつけられてしまうのだ。意味がわからない。かわいそう。トラウマになる。こんなものを見せられて、一体この子たちはどんな大人になるのだろうか。
モンスター闘技場は、ドラクエ4から、いや名称は違うが厳密にはドラクエ3のころからある。だからドラクエ5のカジノにも入れてみただけだとは思う。しかし、5の主人公はまもの使いなのである。倒すだけの存在だったモンスターも、愛を持って倒せば人間たちと同じように協力してくれるようになる。人間たちと同じように仲間として一緒に旅をすることができる、そんな根本があるというのに、モンスター同士の戦いを賭け事にしてしまったのだ。
やば~。たまらん~。好きだ~。
まぁモンスター闘技場がなかったとしても、石になった嫁が行方不明になっている状態で、8年ぶりに再会した子供たちと一緒にカジノに行っている父親、という図がもうアウトなのだが。
ゲームだからと言わず、こういう事実に真っ向から向き合ってみると本当に異質な姿で面白い。これだからドラクエはやめられない。
(文・やなぎアキ)
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