どのシーンのことかわかるね?
そうだね?
ドラクエ7はプレイステーションでの発売ということもあり、これまでとは様相が違った。
主に見た目の変化が多く、3Dマップを始めて採用し、魔物たちもドラクエ6のよきよりも動くようになった。
そしてそして、ムービーが入るようになったのだ!
OPからしてがっつりとしたムービーが入ってきたのだ!
とはいえ、ストーリー中そこまで多くのムービーがあるわけではない。ここぞという見せ場の時に入ってくる。
エンゴウの噴火シーンや、ティラノス復活のシーン。
そして、ユバールの神の踊りだ。
ストーリー序盤がようやく終わる頃の最大の見せ場にして、大きく話が動くのがユバールのイベント。
失われた神を復活させるために放浪の旅を続けている運命の民族ユバール族。そんな彼らが神の復活を求めて大地のトゥーラによる音色と共に、神の踊り手が聖なる衣をまとって踊るという神秘的なイベントだ。
神の踊り手ライラはキーファが思わず惚れてしまったほどなのだから、さぞ美しい人なのだろう。そんなキーファに対抗心を燃やすジャンも、ライラの結婚相手なのだからきっとイケメンのはず。
そんな二人が織りなす聖なる踊り。
それがムービーとして見れる!ドット絵でちょこまか動くのではなく、ムービーで!
その結果が!!
そうだ、あれだ。
あの悪魔のムービー。恐怖のムービー。しのおどり。
鳥山明氏のイラストを想像しながらこれまでの冒険に励んできたプレイヤーの心を完全に折って来た。
やたら彫りが深く、血が通っていないように見えるジャンとライラの顔。
瞬き一つせず謎の踊りを踊るライラの姿は不気味という言葉があまりにも似合う……。NHKのみんなのうたでこういう映像流れたことがあるようなないような、そんな気持ちになる。流れたら絶対に子供たちのトラウマになるだろうが。
神を復活させる踊り、選ばれし者しか踊ることが許されない踊り。さぞ神秘的なものなのだろうが、ムービーのせいで台無しである。上半身をのけぞる振り付けなぞ、言いようのない恐怖を覚える。
しかしなぜか族長の顔はそんなに怖くない。なぜなのか。若い男女の方が難しいのだろうか。恐ろしさの中でその疑問がぐるぐると渦巻く。
ど、同時期に発売されていたゲームだって、もうちょっとましだったと思うのだが……。
という苦しみが、なんともう一回訪れる!
現代世界にて再び行われる神復活の儀式。
今度はヨハンとアイラだ。
最初はほとんど同じようにムービーは進むが、途中でヨハンと族長の顔がアップになり最後にアイラの顔がアップになっていく様は、「なぜそうしたのか」としか言えない。
ヨハンは女性にモテるというキャラなので、さぞイケメンなのだろうと思うが、なんならジャンより怖いかもしれない。なんだよその髪型……。もうどうしようもなくなったクロノ*1かよ……。
多分開発者もあの出来には納得できていないと思う。それでもプレステでドラクエを作るのならば、他のゲーム同様ムービーを入れなければならないという制約があったのかもしれない。「ない方がよかっただろ」と簡単に切り捨てられるものではなかったのかもしれない。と今になっては思う。
あと、この時代特有の気味の悪い3DCGを使ったムービーというのはなかなか貴重である。それを国民的RPGであるドラクエがやっているのである。正直おいしい。
どうあがいても擁護できないほど怖いのもいい。22年も前のゲームに何を求めているのだと思うかもしれないが、同時期に発売されたFF9のムービーを見れば擁護できないのも一目瞭然。その辺の低予算ゲームでもない、ドラクエだぞ?鳥山明氏のイラストを再現するのは当時の技術では難しかったというのはあるのだろうが、だからといってあの不気味さを演出していい理由にもならない。それほどまでに怖い。だからこそみんなで「あのムービーはやばいよな~」と言い合えるのもいいのだ。
あとになって周回プレイ中に謎の既視感を感じた。
そしてある日ふと思う。
ディズニーシーのシンドバッドの冒険の人形たちに似ているな……と。
あの人形たちも、子供からするとちょっと不気味だったりする。特にリニューアル前のシンドバッドはなかなかいかつい顔をしていたのだ。あれになんとなく似ている。
そう思ってみると、ある種のアトラクションのようにも思える。なんともいえない体の動きも、人形がしているのだと思えば違和感がない。そうすれば、そこまで怖くはないかもしれない、恐怖ではないかもしれない。
いややっぱりライラの正面画は怖いわ。
(文・やなぎアキ)
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*1:クロノトリガーの主人公