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【ドラクエ7】ダイアラックのイベントを始めて見たときの喪失感、そして

ドラクエ7、ナンバリング屈指の重イベントの宝庫。

その中の一つ、ダイアラックについて今日は語っていきたい。

 

ダイアラックは序盤のイベントだ。ウッドパルナ、エンゴウを経て、だいぶ冒険に慣れてきたところで来るイベント。

小さな小さな島に一つだけある町、それがダイアラックだ。

 

町に入るとすぐさま異変に気付く。

町の人たちが、ただ一人の老人を除いて全員石化している。原因は灰色の雨。水不足で苦しむ町の人々が必死に神に祈りをささげて雨ごいをした結果振ってきた恵みの雨。その雨のせいで町の時間は止まってしまった。

なんて恐ろしい出来事だろうと思ったものだ。

 

やっと降ってきた雨に人々は喜んだだろう。しかしその喜びは一瞬で体の異変によって消え去り、逃げる間もなく体は石となり動かなくなってしまった。

人々の意思はどうなったのかわからぬが、夜になると彼らはかつての記憶を輝かせる。無念だと言いたいのか、私たちはここに生きていたのだと残したいのか。

 

主人公たちはそんな悲劇を目の当たりにする。

ここまで、悲しい出来事はあれど二つの島を復活させてきた彼ら。自分たちの働きで人々を救えるのだと希望に燃えていた彼ら。

もちろんダイアラックも救えるのだろうと初めは思うだろう。しかし町に唯一残された老人は言う。「救うには遅すぎた」と。

 

いやそれでも!

老人は試していないのだろう?試せば何か変わるではないか!諦めない!もしかしたら彼らを救うことはできるかもしれないではないか!

そんな青さで私は天使の涙を天高く振りまいた。

 

空が明るくなる。

ほら!救えるじゃないか!

そう思った次の瞬間、石になった人々が元に戻ってはいないことに気づく。

 

え?す、救えないの?

 

ショックを受けた。

空は明るくなって音楽も明るくなって、でも元には戻らないの?

地下から少年が出てくる。地下にいたため風化せずに済み、それゆえに元に戻ることが出来たヨゼフだ。

だがその姿を見ても私の心は晴れなかった。なんならさらに辛かった。

 

この子は、自分以外はもういないという現実を突きつけられてしまうのか、と。秘密基地に潜り、友達のレナに新しい秘密基地を教えるんだとワクワクしていただろう。それが一瞬にして壊されてしまったのだ。その恐ろしさは、当時の私にも痛いほどわかった。

そして思った。

 

全部救えるわけではないんだ……と。

 

ある意味驕っていたのだと思う。

自分は過去にさかのぼってそこにいる人々を助けることが出来ると。そうして世界を元の姿に戻していく英雄なのだと。

ウッドパルナ、エンゴウを経てそう確信していたのだ。

でも違った。

取り返しのつかないことは、本当に取り返しのつかないことなのだ。ただの自分ではどうしようもないことがあるのだ。

 

村にいた老人、クレマンはヨゼフが生きていてくれたことを喜んでいる。

そして、人が生きていれば町は死なないと信じ、彼らはダイアラックをあとにすることになる。

良かったなと思わなかったわけではないが、やはり少し悲しかった。石になった彼らは、あのまま取り残されるのだなと。ダイアラックは、あのまま結局なくなっちゃうんだろうな、と。クレマンは、それでよかったのかな……。

 

 

しかし今はもう少しあのイベントをすっきりと見るとこができる。

たしかに町の人のほとんどは救うことができなかった。だがクレマンの喜びよう、クレマンの言葉はわかる。

50年の月日は、長すぎた。

50年、町は死んだと思い込み、自身も町と共に滅びようと思って生きてきた彼だ。そこに来て、誰か一人でも生きていてくれたというのは彼にとってまさしく希望の光だったのだろう。一人でも生きていてくれた、それだけで、この町がある意義があると。自分だけではダイアラックという町の存在意義が見いだせなかったかもしれないが、ヨゼフがいてくれたことで町は未来を見出せる。50年を無為に過ごすことしかできなかった彼では紡ぎだせない未来が、ヨゼフなら生み出せる。

 

クレマンは町を守るということは場所を守ることではないと言った。そうして彼らはダイアラックをあとに旅立っていく。

ダイの大冒険のレオナのセリフに「国とはそこに生きている人々である」というものがある。

まさしくこれだろう。

かつての私は、結局ダイアラックは滅んでしまうではないかと思った。現に現代にダイアラックは残っていない。

しかしクレマンにとってそれは重要なことではないのだ。

クレマンとヨゼフが町を出て行ったとしても、彼らはずっとダイアラックのことを語り継いでいく。そうしていれば、ダイアラックはずっと生き続ける。レオナの言うような、「そこに生きる」ということはせずとも、ダイアラックという町の記憶はクレマンたちの手によって各地に残り続けるだろう。場所を守っているだけでは、本当にダイアラックはただ死んでいくだけだったはず。だからこそ、町を生かすために、場所ではなく記憶を取ったのではないだろうか。年老いた自分だけでは無理でも、未来のあるヨゼフがいればそれが可能だと。

 

主人公たちが天使の涙を使って封印を解いたから、あの島は現代まで残った。それが第一なのだが、クレマンたちの功績によるところもあると信じたい。

彼らがダイアラックの記憶を語り継ぎ、人々がそれを覚えていたからこそあの島は残ってくれたのだろう。町は生きていたのだ。滅んだのではない。

現代には残ってはいないが、ダイアラックは生きている。そして新しいダイアラックになる。それが移民の町だ。

 

あの頃感じていた喪失感はもうない。

町は死んでいない。生きている。それは間違いなく主人公たちが成し遂げたことなのだから。

 

(文・やなぎアキ)

 

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