ドラクエのテキストには遊び心が多い。堀井節ともいえるそのユーモアは、読んだものの心をつかむ。
そう、たとえばポツンと置かれた立て札。
正面から調べれば、何が書いてあるかがわかる。それはあるいは冒険のヒント、あるいは本当にどうでもいい情報。
そして立て札の裏側を調べると。
○○は立て札を読んだ!
しかしこっちはうらがわ。
かいてあるもじがよめない。
うるせ~~~~~~~。
読ませろ~~~~~~~。
一旦「読んだ!」って言っているんだから、読ませろ~~~~~。
そんな細かいこと凝るな~~~~~。
立て札というオブジェクトに対して、裏側から読んだ時だけ出てくるテキストを変えるって、遊び心がとんでもないよ。
これはもう、「立て札を裏側から読むことなんてできるわけないだろうが、ばかめ」という意志が透けて見えてしまう。いや、その通りなんだけど。このメッセージが出てくると、「そうですよね!私が悪かった!」と思わざるを得ないんだからすごい。
そして、「せっかくだから裏側から読んだ横着者のためのテキストを用意しておこう」という結論に至るのがすごい。
妙な現実世界とのリンクがここで発生する。
大体、作り手からしても、どこから調べても一様にメッセージが表示される方が作りとして簡単なはずなのに、この地味なこだわり……。
立て札が初登場したのはドラクエ4。FC時代のドラクエは容量との戦いでもあったはずだが、ドラクエ4くらいになるとある程度余裕が出てきたのか、こういう遊び心が見られて楽しい。もしこれがドラクエ2やドラクエ3だったら、実現できなかったかもしれない……。そして、一度裏側からも読むことが出来る立て札ができてしまっては、このような「しかしこっちはうらがわ。かいてあるもじがよめない。」という名言は生まれなかったかもしれない。
ドラクエ4にて生まれた立て札は、生まれるべくして生まれたのだ……。
でもたまに鬱陶しく思ったりもする。
いや読ませろよ!わざわざ回り込むのめんどくさいよ!と。
でもそんなわずらわしさがあるからこそ愛すべきドラクエでもある。
今はグラフィックが向上し、ドラクエもほとんどが3Dマップになった。そんなとき、あのメッセージのおかげで「2Dのときはどこからでも読めたくせに、3Dになると正面からしか読めないのかよ~、めんどくせ~」というギャップが生じなくなったというメリットもある。……メリットか?
まぁとにかく、平面2Dも立体3Dも同じ世界であるということに一役買っているようには思う。
ちなみに、ドラクエの名言を集めた『ドラゴンクエスト名言集 しんでしまうとはなにごとだ!』にもしっかりと収録されている言葉。
それだけプレイヤーの心に残ったシステムメッセージであり、名言なのだろう。
(文・リモート侍)
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