ドラクエ6で主人公の頼りになる相棒、ハッサン。
そんな彼は、実家が出てくる仲間である。
実家や地元が出てくる仲間キャラといえば、ヘンリーやキーファのような王族や、ゼシカやベロニカ・セーニャのように特別な背景を持っているパターンが多い。同じドラクエ6で登場するチャモロも、そのパターンと言ってよいだろう。
だが、ハッサンは違う。
ハッサンは大工の家庭に生まれたキャラクター。
家を出て行ったハッサンを案じるお母さんと、少し意地っ張りなお父さんが、ハッサンの実家で暮らしているのだ。
しかしドラクエ6オープニングでムドーに敗れたハッサンたちは、記憶を失い夢の世界へと飛ばされる。なんとか脱出し元の世界に戻ったハッサンたちだったが、記憶は戻っていなかった。
ゲームでハッサンの両親が初登場するのは、そんなタイミングである。
記憶喪失中
いつものように新しい街で情報集めを始めた時だった。
「ハッサン!」でも「ハ、ハッサン!」でもなく、「ハ ハ ハッサン!」と叫ぶお母さん。
プレイヤーも、いきなりハッサンを知る人が現れて驚くシーンかもしれない。
「帰ってきてくれたのね」の一言に、二人の関係性が詰め込まれている。
お父さんを呼びに行く時も、動揺と興奮が抑えきれないご様子。
やっぱり「帰ってきた」と……
そうか、この家はやはり……
プレイヤーたちの脳も、驚きから気付きに変わっていく。
狸寝入り(?)のお父さん。
一方、主人公たちは隣の部屋にいるご両親に対して、キョトンとするばかり。それもそのはず、記憶は失われているのだから。
ミレーユが逆説的に違和感を指摘。
「このご夫婦の息子にもハッサンって奴いる!?」
「見間違えるほどハッサンに似てるって奴いる?」
「いねえよなぁ!!?」「愛美愛主潰すゾ!!!」
主人公たちの違和感を知ることもなく戻ってくるお母さん。ハッサンを息子として普通に扱っています。心が痛い……。
そしてついに、ハッサンが口を開く。
「ちょっと 待ってくれよ」
「わるいけど 人ちがいだと思うぜ」
この2行からも伝わる、ハッサンの気まずそうな雰囲気。つらいシーンだ。こんなに喜んでいる人に、ぬか喜びであることを告げなくてはならないなんて……。
いくら屈強で頼りになるハッサンでも、かなり心苦しいに違いない。
驚くお母さん。
「オレは 旅の ぶとう家で……」という語り口に、ハッサン自身の混乱と逡巡が感じられる。
みんな不幸だ……。
自分が誤解したのではなく、ハッサンが『どうかしてしまった』と判断するお母さん。結果的にはその判断は正しく、ハッサンが記憶を失っているだけ。
戸惑いだけが残る、心苦しいエピソードだ。
記憶回復後
自分の実体を取り戻し、記憶も戻ったハッサン。
お母さんとの感動の対面。
いつも頼りになるハッサンの親子の情が垣間見られたワンシーン。
お母さんの優しい反応も、心にグッとくる……。
狸寝入りしていたお父さんにも、当然声をかけに……
あーーーーーー
男の意地がーーーーーーー
でもすでに、涙腺が……
しかしまだ、ハッサンはこの家でゆっくりすることができる立場ではない。冒険は、まだまだ続くのだ。
ハッサン!
ずっとお母さんに心配をかけて、謝り続けているなんて……
記憶を取り戻す前も後も、どうやら息子というのは母親に弱いものらしい。
決意と申し訳なさが同居したセリフだ。
理解を示してくれるお母さん。
すごく背中を押してくれる……!
以前、記憶を失っていたときよりもずっと清々しい雰囲気。
表情まで浮かび上がってくる、このセリフたち……
父と息子の距離が良い!!!
ハッサンも、お母さんの後押しで吹っ切れたご様子。これからの冒険に、全力で挑めることだろう。
チャモロの「ハッサンさん」呼び、好き。
……さて、気持ちの整理もついたし、いざ冒険へ。
その前に、一声だけお父さんにもかけておこう。
素敵。
お父さんの言葉の奥底にある「お前ならやれるさ」という信頼、尊いです。
まだまだドラクエ6はここから。
これから大いなる冒険が待っているタイミングでの一幕に過ぎない。しかしそこから伝わるハッサンとご両親の人間くささ、そして魔王の暗躍は許せないんだという気持ちに改めてさせられる──そんな、ハッサンと両親のエピソードが、たまらなく好きだ。
(文・鎖骨戦士ヤマネ)
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