ドラクエにはゲームオーバーは基本的に存在しない。
ただし、全滅ペナルティとして、所持金の半分がボッシュートされる。
ではその半分はどこに行ったのか?
それはどうやら、魔物たちが奪っていっているらしいのだ。
(参考作品・ドラクエ4)
律儀に半分奪っていっているのだ。
律儀に半分。
計算すると、割る二。
別に難しい計算ではない。だが、金額によってはめんどくさい計算になる場合もある。そんな計算を魔物が行う。
そして、主人公たちを全滅させてくる魔物というのは特定の誰かではない。誰しもが彼らを全滅させることができる。可能性は低いが、スライムでだって可能だ。
この二点から何がわかるか。
魔物は皆、割り算ができるということだ。
知性。知性を感じる。
知性を感じるとともに、
なんで全部じゃなくて半分なんだろう???
と思ってしまう。
いや、全部を奪われたらゲームの進行が困難になるかもとかそういうシステム面はわかるのだが、魔物が奪っていると考えたら途端に気になってしまう。
あれだろうか、魔王側で、勇者を倒した場合においても所持金の半分しか奪ってはいけないとかって契約を結んでいるのだろうか。乙は甲に対して、いかなる場合も所持金の100%を奪うことはしてはいけない。みたいな。その契約を結ぶことによって一体魔王側にどんなメリットがあるのだろうか。魔物の斡旋とかかな。
じゃあ勇者を全滅させた魔物たちはどんな会話をしているのだろう。
──
よっしゃー!勇者たちを倒したぞー!
きっと魔王様から臨時のボーナスが出るな!
そうだなそうだな!おっと、お金を奪っていかないとな!
あ!馬鹿お前!新入りか!雇用契約書をちゃんと読んでないな!いくら勇者であってもお金を全部奪っちゃいけないんだぞ!半分だけだ、半分。
え!そうだったのか!えーとじゃあ、こいつは、1560G持ってるから、えーと。
こういう計算はさっさとできるようになって置いた方がいいぞ。780Gだな。これが俺たちの臨時ボーナスになるんだ。
──
勇者及び仲間がそれぞれでお金を管理していたらもっとめんどくさそうだ。
──
よし!これで、これで全額だな!?(ゼェゼェ)
この神官、帽子の中なんかにゴールドを隠しやがって!
おいおい死んでいるからって蹴るな蹴るな。じゃあ計算するぞ……。20567Gだ!
あ!もしかしたらと思ってこのピンクの鎧のおっさんの靴下を脱がせてみたら、ゴールドが出てきたぞ!
あ!こっちの踊り子もこーんなところに隠していたぞ!
なんだって!また計算しなおしじゃないか!……ってばっかもーん!それはゴールドじゃなくてカジノのコインだ!
──
靴下の中に入っていたゴールドなんか欲しくないが。勇者も関知していないへそくりもモンスターたちは見つけ出さないといけないのか。
まさか自分が勇者を倒すとは思っていなかった魔物の場合だと焦りそうだ。
──
え、どうしようどうしよう、まさか僕みたいなのが勇者を倒すことができるなんて。えーと、これはどうするんだっけ。あ、そうだ、所持金の半分を奪うんだったな!
えっと、所持金が○○Gだから、えーと……ああこんなことならもっとちゃんと計算練習しておくんだった。まさか自分がこれをすることになるとは。一流の魔物はこの計算も早いって言うもんなぁ。ボクの稼ぎだと、デンタクっていう計算機を買うこともできないし……。
でもこの計算をちゃんとやらないと、契約違反で解雇なんてこともありえるもんなぁ。せっかく魔王軍に配属されて田舎の母ちゃん喜んでくれたんだし、帰りに計算ドリルでも買って帰ろうかな……。
でも僕の実力じゃ、今後もまた勇者を倒すなんてできそうもないんだよぉ。
──
倒したら倒したで大変なんだなと思う。
最後に
──
よーし!倒したぞ!大して強そうでもないのにたった一人で旅をするなんて、ばかだなぁこいつ。しかも荷物がめちゃくちゃあるぞ、こりゃたんまりゴールドを持っていそうだ。
えーと、財布財布。
!?こ、こいつ、鉄の金庫持っていやがる!くっそー!せっかく倒したのに臨時ボーナスなしじゃねぇか!
こんなやつ倒してもいいことなんかねぇぜ!
──
という感じでしばらくは魔物にやられず旅ができていたトルネコさんだったが、いつの間にか手放していた鉄の金庫のうわさが魔物に広がって、我先にとトルネコさんを倒したくて彼は狙われていたっていうのはどうだろうか。
計算が大変そうなので、なるべく全滅しないであげたいところだなぁ!
(文・やなぎアキ)
関連記事