ドラゴンクエストナンバリング初(リメイク除く)の携帯ゲーム機での発売。それだけでもドラクエの幅が広がったと言えるが、それ以外にもドラクエ9が試みたものは大きい。
今回はドラクエ9がドラクエの幅を広げてくれたと思う要素を考えてみる。
※あくまでも「ドラクエ」の幅の話です。「そんなのとっくに○○ではやっていたよ」というのは本記事の趣旨とは違いますのでご了承ください。
マルチプレイ
ドラクエ9はローカル通信を用いたマルチプレイが可能である。ローカル通信のため遠くの友達とオンラインで遊ぶということはできず、筆者のような周りでドラクエ9をプレイしていた友人が皆無だったプレイヤーには全く縁のないものだったが……これは目玉要素の一つだった。
それまでのドラクエは一人でプレイすることが当然であり、友達とはどこまでプレイしたかを話す程度で終わってしまっていただろう。それがマルチプレイができるようになったことで、冒険の楽しさを直に共有できるようになったのだ。このマルチプレイができたかどうかによってドラクエ9の評価というのは大きく変わるだろう。携帯ゲーム機の利点も大きく活かしている。ローカル通信とあらば、友達とゲーム機を持って集まらなければいけないため、据え置き機では無理がある話だ。
そして後続のドラクエ10はMMORPGとなり、まさしく誰とでも一緒に冒険できる新しいドラクエが誕生したのだ。
他にも、すれ違い通信によって宝の地図を取得できるというのも目玉要素だ。
このようにドラクエ9は、それまでのナンバリング作品が自身のみで完結していたのを、他者とのかかわりがあることでより面白くなるように作られている。それがその後の作品に影響している部分は大きいだろう。
シンボルエンカウント
ドラクエ9はナンバリングでシンボルエンカウントが採用された初めての作品である(外伝を含めるとモンスターズジョーカーが初)。
当初は、これまで慣れ親しんだランダムエンカウントがなくなることへの抵抗感や、敵を避けることができるということは、避けすぎて途中でレベルが足りなくなるのでは?という懸念点があったが蓋を開けてみれば案外よかった。避けられるということは無駄な戦闘をする必要がなくスムーズに進められるということでもある。その後のドラクエ作品は基本的にシンボルエンカウントであることから、ドラクエ9の残した功績は大きいのだろう。
また、シンボルエンカウントになったことで、フィールド上のモンスターたちから生態がわかる(じめっとしたモンスターはやはり湿地っぽいところに出現するとか)ようになったのが嬉しい。のちにドラクエ11では、多くのモンスターが個性的な姿を見せてくれた。
やりこみ
それまでのドラクエはクリアしたら、もしくは裏ボスを倒したら終わりであり、わざわざレベルを99にしたりステータスをカンストさせたりするのは、カンストさせたい人だけだった。
が、宝の地図のボスの登場により、ドラクエでレベル99にすることの意味が生まれた。クリアしたあともやることがある、そしてそれには終わりがないというのはそれまでのナンバリング作品では非常に画期的だった。そして、どれだけそこに心血を注いだが、どれだけ自分のキャラクターを強くしてレアアイテムを集めたかを、誇示できるのが強い。
クリアしたら終わり、ではなくクリアしてからが本番。それまでは魔王のような世界を脅かす存在を倒したら終わりであり、ゲームを再び再開させると魔王を倒す前に戻ってきてしまっていた。しかしドラクエ9は世界に平和を取り戻した後の世界を旅できるわけだ。ドラクエは勧善懲悪の物語であるが、それ以前に冒険の楽しさを教えてくれる作品でもある。それを見事に体現したのがドラクエ9だろう。
そして、このやりこみは携帯ゲーム機であるDSだからこそ実現したのかもしれない。場所を問わずどこでもできるという点は、やり込み要素の強いゲームと相性がいい。
ドラクエ9はシステム面において、それまでのドラクエにはなかった様々な可能性を示してくれた作品だろう。
ただ、だからこそ地域格差によってその思い出にも格差ができたことは否めないが。
それでも、この作品が携帯ゲーム機であり様々な挑戦をしたからこそ、多くの層がプレイすることになったのだろう。現にドラクエ9の売り上げは歴代の中でもトップクラスであり、9からドラクエに入った・9だけやったことがあるという人も少なくはない。
そんなドラクエ9。
ところでリメイクはいつです?
(文・やなぎアキ)
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