RPGというジャンルでしばしば話題になること。
それは、
勇者のくせに他人の家に勝手に入り込み、しかも勝手にタンスを開けたりツボを割ったりして物を奪っていくのはいかがなものなのか
という問題である。
ゲームをしている最中は特に気にも留めないが、一度気になりだしたらこの手の話というのは色々と思うところがある。
勇者、やってることけっこう野蛮じゃない?となるわけだ。
この、「勇者だからって何やってもいいわけではないのでは?」という点に関して皮肉ったゲームが、プレイステーションで発売された「Moon」なわけだが。
長いRPGの歴史の中でも、ドラクエは一貫して勇者(ないしは主人公)は他人の家に無断で入り勝手にものを持って行ってしまう。
どうしてそのような行為が許されるのか。
勇者という肩書があれば、勇者特権である、で済みそうだが、そうでない主人公も多い。
とりあえずの理由として、ドラクエ世界では世界を救う勇者や、そうじゃなくても旅人のために家の中に冒険に役立つものをしまっておいて「とってもいいですよ」としているのかもしれない。
やくそうやキメラのつばさはわかるが、普通に衣服やトイレットペーパーを持っていかれるのはさすがにドラクエ世界とは言え住人は困るだろう。なので、持って行ってもいい物というのをタンスなどに入れておき、勇者たちもタンスをあけたときに「これは持って行っていいものだな」となっているのかもしれない。
そう、「冒険で使う持って行ってもいい物」と「冒険には使わないであろう持って行ってはダメな物」がタンスには入っているのだ。
そして勇者たちはタンスを開けてそれを瞬時に見分けている。
だとしても。
だとしてもだ。
ステテコパンツを勝手に持っていくのは違くないか?
いやほんと、ステテコパンツて。
パンツよ?
無断で家に入って、タンスを開けて漁って、そうした挙句に手荷物に入れるものが、ステテコパンツて。「ステテコパンツを見つけた!」て、どうしてそんな喜べるの。人んちの下着を意気揚々と持っていくの、冷静に考えてやばいよ?
タンスの中には、多分普通に住人が愛用しているステテコパンツもあると思うわけなんですよ。これは俺が普段から使っている下着だ!って。なんなら、あの世界の男性はかなり多くの人がステテコパンツを下着として愛用している可能性もあるわけですよ。ボクサーとかブリーフとかあんまないかもしれないんですよ。
その場合、勇者たちはタンスを開けるたびにステテコパンツを見つけた!ってやってしまうわけで。
でもそれだとドラクエ界の男性下着というのは、いくつあってもすべて勇者の荷物に吸い込まれてしまうんだ。
ああ!またステテコパンツをあいつらに取られちまったよぉ!ってドラクエ界の男性たちは嘆いているわけだ。俺は今日何を履けばいいんだよぉ!
でもそうはならない。
つまりは、タンスを開けてステテコパンツを見つけたときに
これは持って行ってもいいステテコパンツだ!
ってなっているわけでしょう?
何?持って行ってもいいステテコパンツって。そんなのある?贈呈品みたいな形でステテコパンツがしまわれているってこと?ちなみにそれは未使用?使用済み?使用済みステテコパンツの可能性が0であると言い切れないのが恐ろしい。
てか、他の衣服は持って行かないのに、なんでステテコパンツだけ持っていくの?なんでよりによってパンツを持っていくの?
ほーん、このタンスの中にはコートにマフラーにいくつかのボトムスと、セーター、それに……あ!ステテコパンツだ!これは持って行っていいやつだ!
いやいやいやいやいやいやいや。どんな世界観だよ。
住人も、なんで持って行っていいものとしてステテコパンツを選ぶの?そんな状況ある?やくそうとか旅人のふくとかはまだわかりそうな気がする。これはもしかしたら冒険者の役に立つかもしれないなぁと思える。でもステテコパンツでもって、これは冒険者の役にたつかもしれないなぁってなる?むしろ、このステテコパンツもういらないなぁってときじゃない?もはやごみ処理的に使っていない?冒険者を。
どうしてもタンスを漁ってステテコパンツだけふくろに入れる勇者の姿を想像すると、納得がいかない部分が多い。
勝手に人の家のステテコパンツを持っていく勇者たちも勇者たちだが、彼らにステテコパンツを持っていかれても何も思わない住民たちも住民たちだと思う。
(文・やなぎアキ)
関連記事