親子の絆を描いた名作・ドラクエ5。
主人公の父・パパスの生き様に涙したプレイヤーも多かったのではないでしょうか?
今回は、そのストーリーの中でも重要な役割を担っているアイテム「パパスの手紙」が、もしもなかったとしたらどうなっていたかを考えていこうと思います。
まずはパパスの手紙の内容を振り返りましょう。
「○○よ、お前がこの手紙を読んでいるということは何らかの理由で私はもうお前のそばにいないのだろう。すでに知っているかもしれんが、私は邪悪な手にさらわれた妻のマーサを助けるため旅をしている。私の妻 お前の母にはとても不思議な力があった。私にはよく分からぬがその能力は魔界にも通じるものらしい。たぶん妻はその能力ゆえに魔界に連れ去られたのであろう。○○よ! 伝説の勇者をさがすのだ! 私の調べたかぎり魔界に入り邪悪な手から妻を取りもどせるのは………天空の武器と防具を身につけた勇者だけなのだ。私は世界中を旅して天空のつるぎを見つけることができた。しかし、いまだ伝説の勇者は見つからぬ……。○○よ! 残りの防具をさがし出し、勇者を見つけわが妻マーサを助け出すのだ。私はお前を信じている。たのんだぞ ○○!」
これによって主人公は
- 母親(マーサ)が生きていること/マーサが魔界にさらわれていることが確定する
- 伝説の勇者と呼ばれる存在がいることを知る
- 天空の防具を探し出す必要があることを知る
といった状態になります。
パパスのアツい想い、そして自らに託された宿命を知る手紙ですが、ゲームのストーリー上でも「今後やるべきこと」が明らかになるという意味でも非常に重要な手紙です。
これを読んだことで、主人公は目的のはっきりした旅に出ることになります。
天空の防具を探さないと世界は詰んでいた可能性も
ゲームのストーリー的には母親の件や勇者の件が非常に重要ですが、RPGのシナリオ上で欠かせないのが「天空の盾を探す」という行為そのものです。
なぜなら、天空の盾があるからこそ、ルドマンのもとに行き、フローラ争奪戦に参加することになるからです。
天空の盾が必須アイテムだと主人公が知らない場合、たとえフローラ争奪戦を知っていても「副賞の防具はなかなか良いアイテムらしいぞ」程度で終わってスルーしていた可能性があります。
実際のストーリーを進めていけば、結果的に天空の武器と防具を身につけることは必須事項ではなかったことが判明するのですが、問題はそこではありません。
ではポイントは、どこにあるでしょうか?
それはフローラ争奪戦そのものです。
結婚騒動がないと、主人公はきっとなかなか結婚しません。
つまり、伝説の勇者が生まれないのです。
これが、一番マズい。
頑張って奔走し、ゲマらと対峙し、石にされた挙句だれも助けてくれないで終わる流れになっていたかもしれません。
そう考えると、不純な動機(?)で参加したフローラ争奪戦も、結果的には世界を救うことに繋がった大事なイベントだったというわけですね!
主人公が復讐の鬼にならずに済んだ
もし主人公がパパスの手紙を読んでいなかった場合、主人公のメインの目的は父親の復讐を果たすことになっていたのではないでしょうか。
憎きゲマへの復讐ももちろん主目的のひとつではありますが、それだけしか生きがい(?)ないのと、魔界から母を救うために奔走する必要があるとでは、気持ちが全然違うはずです。少なくとも、前向きになれます。
父からの「お前を信じている」に応えるためにも、過去にばかりとらわれずに頑張る必要が出てきますからね。
ゲマを倒すのが執着地点ではなくなり、魔界を常に睨みながらの冒険になったことで、スケールの違う旅になっていきました。
「伝説の勇者」については、もしかすると主人公自身なのでは……程度の印象しか抱かないのですが、こちらも伏線になってくるわけですから、情報がギッシリ詰まっている手紙になりますね。
最期に思いっきり叫べた
パパスが手紙を書いていなかった場合、最期のリンチで主人公に色々伝える必要が出てきます。
「ぬ私は邪悪なわ手にさらわれたー妻のマーサをー助けるためっ旅をしてっいる!! ぬ私のわ妻お前のー母にはーとてもっ不思議なっ力があった!! ぬ私にはわよく分からぬーがその能力はー魔界にもっ通じるっものらしい!! ぬたぶん妻はわその能力ーゆえにー魔界にっ連れ去られたっのであろう!!(息絶える)」
みたいにならなくて良かったです。
……やはりあらかじめ不慮の事故を考えておいて、メッセージを残しておくのは大切ですね。
さすがパパスです。
(文・深々シン)
関連記事