やぁ!ぼくは各地の道具屋でショッピングをするのが大好きな道具屋太郎さ!
今日はどこの道具屋でショッピングをしようかなぁ?
お!あんなところにお城があるぞ!あそこに行ってみよう!
ははぁ、すごく荒廃しているお城だなぁ。
人の気配なんてしやしない。
こんなところに道具屋なんてあるだろうか?
いや!道具屋太郎の勘が言っている!ここには道具屋がある!
ほぉらあった!
気さくなお兄さんが店番をしているぞぉ!
早速買い物と行きたいところだけど、まずはレポートのために店の外観を撮らせてもらおうかな。外観、めちゃくちゃ荒廃してるけど。これはこれで趣があるしな!
ということでお店を撮らせてもらってもいいですか?
え?あ、いや、買い物したいとは言ってないです。あの、お店の外観をね、撮らせてほしいなって。そのあとでちゃんと買い物しますから。
すいません、撮らせてもらってもいいですか?NGでしたらNGでいいですので。
そのあとちゃんといくらでも買い物しますから、ね?
ええ!?いや、言ってない言ってない!やくそうくださいなんて言ってない!いや、やくそうも買うつもりでいたけど!外観を撮らせてくださいって言ってるんです!
そもそも品ぞろえをまだ見せてもらってないんですけど!
え?なに?こわ……。この人こわい。
ど、どんどん話を進めていく……。なんなんだ?各地の道具屋でショッピングをし続けて8年……。この道具屋太郎、こんなに強引な道具屋に出会ったのは初めてだ。
ここはおとなしく8ゴールドを払った方がいいのかもしれない。すごい拳をにぎりしめて要求してくるし。
もしかしたらすごく困窮している道具屋なのかもしれない。城自体がすごく荒廃しているのだから、道具屋にまったく稼ぎがない可能性はある。
そうだな、ここはおとなしくやくそうを買って、そのあとでお店の外観をゆっくり撮らせてもらおう。
はい、どうもありがとうございます。道具屋さんも大変ですね……。
ちょっとした恐怖ではあったが、どうせやくそうは買うつもりでいたからな。これで目的の一つは達成だ。
また新たなやくそうコレクションが増えたぞ。
え?
え?
あの、すいません。これやくそうというよりかは、どう見ても枯れ草なんですけど……。
間違ってませんか?
[道具屋は虚空を見つめたまま何も言わない!]
こ、これは道具屋太郎の勘が言っている……。この道具屋、いや、この城はやばい……。
急いでこの場をあとにしなければ!
何かとてつもない不安感が襲ってくる!!
これがこのぼく、道具屋太郎が実際に体験した奇妙な物語のすべてである。
あれから再びあの城を訪れてみたが、道具屋の姿はどこにもなく、荒廃した城には争った形跡が見られた。
あれは夢か幻だったのか。
しかしあのときの枯れ草は、たしかに今も手元にある。
(文・鎖骨戦士ヤマネ)
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