きりかぶこぞうから頭の切り株を奪ったらただのこぞうになる。
まほうじじいが魔法を使えなくなったらただのじじいになる。
おにこんぼうが鬼じゃなくなったらこん棒になる。
ダンビラムーチョからダンビラを奪ったらただのムーチョになる。ただのムーチョ、とは。
じゃあおおきづちから大木づちを奪ったらどうなるんだ?
仮説1.「おお」になる
おおきづちから大木づちを奪う、についてだが、要は彼が手に持っているトレードマークのあの武器を奪うことになる。
しかし、もしかしたら、あれは「大木づち」ではなく、「木づち」なのではないか?
おおきづちの体を考えると、大きいかもしれないが、よく考えたらそこまで大きい木づちか?ただの木づちの可能性、おおいにあり得る。
であれば、彼から木づちを奪うとつまり、「おお」になる。感嘆詞だ。おおきづち、感嘆詞になる。木づちを持っていない大木づちが目の前に現れた場合、「わぁ!おお!」となる。感嘆詞が連続。
「わぁ!おお!びっくりしたぁ!」めちゃくちゃびっくりしてるな、こいつ。
仮説2.「大きい木」になる
先ほどは、あの木づちは実は大きくはないんじゃないか?と考えたが、さらに深読みをしてみる。
もしかしたらあの槌は、「木」でできてはいないんじゃないか?木っぽく擬態させているだけで、本当は別の素材でできている槌の可能性がある。おおいにあり得る。
そう考えた場合に彼から槌を取り上げると、「大木」、そうたいぼく、大きい木が残る。おおきづちが立派な木になるのだ。
あんなに小さくて可愛らしかったおおきづちが、ひとたび武器を失うと瞬時に大木になってしまう。世界樹もびっくり。
おおきづちは「槌」を依り代にしてこの世界に存在してくれているのか。神様かなにかなのか、おおきづち。
仮説3.あとかたもなく消えてなくなる
さんざんおおきづちが持っているものは「大木づち」ではないんじゃないかと言ってきたが、やっぱりあれは「大木づち」なのかもしれない。
そうなると、おおきづちから「大木づち」を奪ってしまうと、「おおきづち」には何も残らなくなる。
「」←これだ。無だ。
大木づちを奪われた瞬間、おおきづちはサラサラ~っと消えてなくなり、そこにはただ日差しが差し込めるだけだ。おおきづちとのそれまでの思い出も頭の中からは消えてなくなり、ただ胸に少し穴があいたような、ちょっとした空虚さを感じるだけだ。
そのちょっとした空虚さはすぐさま感じなくなり、おおきづちがこの世にいたことは完全に忘れ去ってしまう。それは安易におおきづちから「大木づち」を奪ってしまったものの罰とも言えよう。
仮説4.そんな発想をするお前が消えてなくなれ
おおきづちのトレードマークでもあり生涯の相棒ともいえる「おおきづち」を取り上げてやろうなどと考えるのは、なんとも冷酷で残虐、非人道的、いや非おおきづち道的。
そんなやつはおおきづちのおおきづちを取り上げる前に消え去るべき。
どの仮説が一体正解なのだろうか……。謎は深まるばかり。
あと、ムーチョはスペイン語でたくさんという意味らしいので、ダンビラムーチョからダンビラを奪うと、ただあの黄色い生物が沢山になるんだと思う。こわい。
(文・やなぎアキ)
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