
長い旅路も終わりが近づき、勇者一行はオーブを携え聖地ラムダへ。
双賢の姉妹であるベロニカとセーニャにとっては久しぶりの故郷だ。
ここに帰ってくるまでに二人には色々なことがあった。勇者や仲間たちの出会いはもちろん、姉ベロニカが子供になってしまったことも大きい。
みんな驚くことになるだろう。
とりあえず、長老に会いに行こう。

おっと、どうやら今まさに新しい命が祝福を受けようとしているところのようだ。
長老が祈りを大樹に祈りを捧げている。

とてもいいときに来たようだ。自分たちも是非、この新しい命が健やかに育っていくことを願いたい。

どうやら長老がこちらに気づいたようだ。

明らかな身長差……。
ラムダを出る時は絶対こうではなかったはず。一目瞭然で、ベロニカが縮んでしまったことがわかる。さぞ驚くことだろう。

まさかのスルー。
というか、子供化したベロニカを見て、すぐ双賢の姉妹って言えるのすごい。双賢って言うくらいだから、双子前提で見えてるはずなのに視覚情報が機能していない。いくらベロニカの子供時代を知っているとは言え、目に見えておかしいのはわかるはず。
たとえ目が悪かったとしても、ものの大きさはなんとかわかるだろうに。

こんなにも変貌を遂げているのに。
セーニャのことしか見えてないんじゃないかこの長老。下にいるベロニカまできっと見えてないんだ。セーニャがいるから、多分ベロニカもいるだろうという憶測のもと、双賢の姉妹って言ってみたんだきっと。

でもさすがに、言葉を交わしていればベロニカに気づくだろう。長老はもうだいぶお年だから、反応が遅れてしまったのかもしれないし。
さぁ驚け、人が縮んでいるんだぞ。

冷静。
「しばらく見ない間に大きくなったな」みたいなテンションで逆のこと言うな。なにが「ぬ?」だ。


「それより」。
けっこう重大なことだと思うが。しかしベロニカ本人は子供化してしまったことを当初から前向きに捉えていたことだし、別にいいのか。それよりも勇者をつれてきたことの方が彼女らにとっては重大なのだ。

ラムダの人たちにとっても勇者が訪れることは大きな事件であるはずだ。
……でもやっぱり、一緒にラムダで暮らしてきたベロニカが旅の末に縮んで帰ってきたら驚くと思うんだけど。

まぁ完全に勇者しか目に入ってないですわ。

絶対ベロニカが縮んでいることにもう興味ないだろ、長老。
長老うしろ!うしろのベロニカにもっと言及して!人が縮むっておかしくない?それともロトゼタシアでは日常茶飯事なの!?
セーニャがベロニカが縮んだことに関して能天気だったのは、天然だからじゃなくてロトゼタシアではよくあることだからなの!?

勇者も多分、「ベロニカが縮んでるのにそんな対応でいいんだ……」って思ってるよ。
しかもこのあと姉妹の両親に会いに行った時も特にベロニカが子供になっていることについて何も言われなかった。
家族なのに。
実は子供になっちゃうって大したことじゃないのか?
(文・やなぎアキ)
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