ドラクエ9の仲間は、なぜ何も言わずに主人公について危険な旅をしているのか。
なにかイベントが起きようとも始終ノーリアクションを貫き、目に見えないナニカ(サンディ)と話す主人公についてどう思っているのか。
いやそもそも、もっと大事なことがある。
みんなエルギオスと戦うときどういうモチベーションなの!?
もし私がルイーダの酒場で9主人公に誘われたとして、なんやかんやでエルギオス、というかそんな名前も知らんわけですよ。だってイベント参加してないから。天使界とかいったことないから天使の事情とか知らんし。そんなわけでなんだかわからないやばい生き物(エルギオス)とおっしゃー世界の為に戦うぜぇ!みたいな雰囲気になっても
こんなことになると思わなかったなぁ。もっと楽な旅をしたかった。各地の美味しいもの巡りとかでよかったのに。
って現実逃避しながら思っちゃうわ。
いや、この魔物、誰?やばそうなのはわかるけどなんで倒さなきゃいけないのか教えてくれない?
って説明なしに強そうなやつと戦う意味を心の中で問うちゃうわ。
え?こいつ人間になったの?待って人間になるってどういうこと?天使?え、天使だったの?もしかしてやばいやつに雇われてた?
ってこの究極の場面で今まで一緒に旅してきた仲間への言い知れない不安感押し寄せてくるわ。
なんかこいつ、すっげぇ意気込んでるけど、こっちもそれくらいのテンションにならなきゃダメ?なんもわからないんですけど?
って隣で目をギラギラ燃やしている9主人公にドン引きしちゃうわ。
今ここで逃げ出すということはありなんだろうか……。
って遠い目でこの場を切り抜けるための考えを巡らせるわ。
あ、洗濯物干しっぱなしだわ。雨降る前に帰れるのかな……。
って、非日常すぎて逆に日常に無理やり還ろうとするわ。
ゲーム中一切表情を変えない仲間たちがエルギオスを前にしたとき、内心こんな風に色んな思いが頭をぐるぐる回っていたら傑作。
いやでも本当に、どんな気持ちだったんだろう。ゲーム中描かれていないだけで、9主人公はちゃんと仲間に説明していたのだろうか。あの世界は天使という存在がしっかりと根付いているからわりとすんなりと受け入れてもらえたのだろうか。
だとしても、このままじゃ全人類まずいから僕と一緒にエルギオスを倒してくれ!って頼まれてもそれに応えられるだろうか。一介のルイーダの酒場の登録者なら、「いやそういう責任重大なのは他の人にお願いした方がいいんじゃ」とかならないんだろうか。一人くらいそういうのがいてもいいのでは。
怖気づいたとか、命が惜しくなった臆病者と思ってもらってもかまわない。オレは降りるぜ……。
絶対そんな考えのやつがいたはずだ。自分が戦う義理が見つからない。
最終決戦目前になっても誰もパーティーから抜けないあたり、知らないだけでやっぱり9主人公と仲間との絆というのはちゃんと育まれていたのかもしれない。ずっと無表情だけど。
(文・やなぎアキ)
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