いわゆる、補助呪文というやつ。
今考えると、あまり使っていなかったように思う。ボス戦ならいざ知らず、雑魚戦ではほぼ全くと言っていいほど使っていなかった。
バイキルトやスカラに限らず、マヌーサやラリホーなども使っていなかった気がする。
子供のころの思考は単純だったので、戦闘というのはやるかやられるかというシンプルな構図でしかなかった。モンスターのHPを減らすか、こちらのHPが減らされるかだけだった。HPの増減に直接かかわってこない補助呪文など眼中になかった。
なぐれば勝つ!なぐられれば負ける!それしか理解できていなかった。野生か。
まさしく物理攻撃至上主義。強かろうが弱かろうがひたすら物理だった。
補助呪文?そんなものをかけているうちに、一体どれほどのダメージを相手に与えられる?時間の無駄だ!無駄でしかない!さぁほら戦え!!
水見式をやったら確実に水の量が増えていただろう単純一途なプレイスタイルだった。
しかしそうも言ってられなくなった。ひたすらAボタンないし〇ボタンを連打していてもいけないのだと気付いた。
そしてようやく補助呪文の重要性に気づく。
補助呪文というのはせいぜい、ボス戦で使うものだと思っていた。ボスの多大なHPを削る為にバイキルトを使ったり、ボスの尋常じゃない攻撃を防ぐためにスカラを使ったりフバーハを使ったり。
大した攻撃をしてこない雑魚共にそういった補助呪文を使う必要があるのか……?
ある!!
補助呪文を有効に使うことで、戦いを有利に進めることができる!
さまようよろいが複数体あらわれた!これまでであればボタン連打で敵と戦っていたが、もうそんな自分とはおさらばだ!さらばAボタン連打!こんにちはスクルト!いらっしゃいマヌーサ!なんてこった、なんて快適に戦闘が進むんだ!
防具を頑張って買いそろえなくても、呪文を駆使すればカバーできる!
攻撃力に満足がいかなくても、バイキルトがあれば有用なダメージソースになる!
すごい、すごいぞ補助呪文!
これまでストーリーを追うことと、ボス戦くらいしかやることがなかったドラクエが、補助呪文を使うことによって雑魚戦すらも高尚な楽しみに変えてくれる!
脳筋プレイしかできなかったあの頃にさようなら!これからは知力戦だ!今水見式をやれば、葉っぱがゆらゆら動くに違いない!
これが、大人になるということか……。ボタンを連打して戦っていた子供のころも、全力でドラクエと向き合っていたが、その時とは違い頭を使って敵と戦う今も全力でドラクエと向き合っている。戦いのスタイルが変わっても、ドラクエが楽しいことには変わらない。またそのうち戦いのスタイルが変わることだろう。
ただ、今も昔も変わらないことがある。
ボミオスの使いどころがわからない。
(文・やなぎアキ)
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