伝説の英雄・メルビン。
草原の哲学者・モガマル。
奇跡の出会いを、刮目せよ。
1.出会いはいつも、突然に。
ひとりの老人が(割とすごい勢いで)モガマルを呼び止める。その声は力強く、まさに運命という激流の中を歩んできた人間の為せる業であった。
そのシワのひとつひとつが、彼の円熟した人生を感じさせる。
老人は、歩み寄り──モガマルの顔を、懐かしそうに眺めた。まるで眩しいものを見るかのように、目を細めて。
一方で、モガマルはまだ訝しむ顔を見せていた。
モガマルと老人の、趣の異なる視線が絡まり合う。
老人は、そっと問うた。
モガマル「いいえ」
いや、ただのナンパかい!!!
モガマルの「?」も納得だわ。
2.論点をずらして生きてゆく。
老人はメルビンと名乗った。
数々の老害が、色とりどりの武勇伝をダラダラと語るこの世界で、彼は自分をシンプルに表現する。
「英雄でござる」と。
武勇伝を話す必要もない。
虚勢を張る必要もない。
ただただ、彼は英雄なのである。
「ワシは若い頃になぁ、めちゃくちゃモテてなぁ……」
「今の若者はなってない!昔は時速180kmの豪速球を簡単に投げておったワィ!」
「若い奴らは礼儀がなってねぇんだよな。そもそも社会とは何かを知らねぇんだ」
……そんな小手先の説明は、不要だった。
英雄。
たった二文字が、彼がどれほどの偉人かを教えてくれた。
モガマルはシンプルな自己紹介を済ませると、ふと疑問を投げつけた。既に「メルビン」と呼び捨てるモガマル。
2人の距離は、急速に縮まってゆく。
そんなモガマルが抱いた疑問は、シンプルなものだった。
いや、質問シンプルすぎない?
たしかにありえない事だと思うけど。
英雄はふと笑った。
シンプル過ぎる問いかけを全く気にしていないようだった。無礼講というものなのだろうか。
──その疑問はもっともだ。
そう言わんばかりの、微笑みだった。
そして英雄は、語り始めた。
モガマルの表情。
モガマルの表情。
モガマルの表情。
これは、モガマルの表情も仕方がない。
全然説明になってないもの。
あり得るのかどうかに対して答えてくれ。
3.言ってはいけないこと。
納得がいかない様子のモガマルに対して、英雄は説明を続けた。
自身のポテンシャル。
魔王の存在。
これまでの歴史。
そして、神の自らの関係性を。
──神が復活させてくれた。
これが、彼の英雄ぶりを如実に表していた。
モガマルは、それを聞いてゆっくりと口を開く。
うん、そうだね。
メルビンって大変なんだよ。
(文・OGTキシン)