凍らせたバナナで釘を打つという行為は日本人であれば誰しもが憧れる。そして我々ドラクエプレイヤーは常に高みを目指す存在。
「バナナで釘を打てるのはわかったけど、ドラクエ界のスーパーモンスター、スライムだったらどうなの?あんな軟体だけど、凍らせればやっぱり釘打てるんじゃないの?」
そう思ってるだろう?
わかる!わかるぞ!!
今回はそんな好奇心抜群の君の為に実験してきた。
まずスライムを用意します。
何はともあれ、釘を打つためのスライムを用意しなければ始まらない。どうせなら童心にかえって、ホウシャを使ってスライムを作り、カメラのフィルムケースに保管、ということをしたかったが、めんどくさいなと思ったので100円ショップに行ってきた。
正直スライムの既製品が一番好ましかったのだが、ゼリー粘土?クリアジェル?え、これスライムなの?わからんわからん、となり、お、スライムって書いてあると思っても、口から出なくていいから!おならの音とか鳴らなくていいから!と若干の苛立ちを覚え、泣く泣く自分でスライムを作成するキットを購入。結局自分で作る羽目になってしまった。
いい大人が100均のおもちゃコーナーで、眉間に皺を寄せながらスライムらしきものたちを手にする夜の19時。
ということでさっそくスライムづくりをスタートさせる。作り方は箱の内部に書かれているので安心だ。お湯を使う場面もあるので大人と一緒に作るよう書いてあるが、自分自身がいい大人なので問題なく作っていく。そんな夜の20時。
付属の粉と水を混ぜてみると、だんだん粘性の帯びた何かになっていき、あースライムってこんな感じだったかもな~と幼き日の記憶を辿っていく。
が、制作途中のスライムなどスライムではなかった!いざ出来上がってみたときに、あまりに懐かしい感触に
「ああ~~~~、スライムだ!こんなんだったこんなんだった!!」
と声をあげた、わりと大きめに。
せっかくなので色も付けてみた。他に使う機会もないのにこれまた100均で12色の絵の具を買ってしまったわけだ。
あと、かき混ぜ方がよくなかったのか、卵のカラザみたいなものが出来てしまった。カラザには栄養がある。なので取り除く必要はないが、食感が気になる、見た目を美しくしたい、というのであれば取り除いてもいいだろう。ミカンのスジのようなものだ。栄養はあるが、気になる人は取り除いてしまう。
スライムを凍らせます。
さて、スライムが出来上がっただけで喜んでいてはいけない。あくまで目的は「凍らせたスライムで釘を打つこと」だ。
ということで凍らせなければいけないのだが、こいつはあくまでドラゴンクエストのスライムだ。玩具のスライムではない。玩具のスライムだけど。
なのできちんとスライムの形に成形しよう。
そこで役立つのがこいつ。
2017年にローソンで発売されていた「でからあげクン かいしんのいちげき味」!のふた!
巷ではこのふたでゼリーやプリンを作る人もいるようで、ほぉ~と感心していたものだ。しかし自分は特に何かに使うでもなく飾ったままだった。
しかし!とうとう日の目を見る時がきたのだ!まさかこんなにも役に立つ日が来るとは、2017年当時の自分は思いもよらなかっただろう。さぁ、このふたにスライムを流し込むぞぉ!
なお、「固まったときにスライムがうまく外れないのではないか」「いつかこのふたでゼリーを作りたい」という二つの思いから、しっかりとサランラップをかませる。
ううむ、まさかのぴったりサイズだった。余るだろうから久しぶりにスライムで遊ぼうなどと思っていたのだが、一切余らなかった。まぁいい、スライムではしゃぐようなお子様ではないからな。
この状態でしばらく冷凍庫にINだ。たしか液体は不純物が多いほど早く凍る。ならばスライムは相当の早さで凍るだろうな。たのしみ~。
液体は固体になると体積が増える。その事実を冷凍庫に入れた後に思い出したが、まぁ大丈夫だろうと高をくくりそのまま放置。そして寝た。
冷凍スライムで釘を打ちます。
早く凍るんだろうなぁとわくわくしていた割に、そのまま一ヵ月ほど放置してしまった。いや、正確には、体積が増えたことにより容器から外せなくなっていたら困ると思い、わりと早い段階で容器からは取り出していた。取り出せたことに安堵し、その後放置したのだ。
およそ一カ月間、家の冷凍庫にはガチガチに凍ったスライムが入っていたのだ。
いい加減スライムを取り出して釘を打たなければ。ようやく重い腰が上がり、休日に友人を呼びつけて釘を打つことにした。
スライムで釘を打つから公園に集まろう、なんて提案をいい大人になってからするとは思わなかった。駆けつけてくれた友人には感謝したい。
さて、これが冷凍させたスライムだ。
すごく天気がいい。暖かい午後の日差しを受けた冷凍スライムだ。あのプルプルなスライムはどこへやら、完全にガッチガチであり、素手で持ち続けるのがつらいほど冷たい。
陽光を受けて溶けていくとまずいので、さっさと釘を打つことにする。
わざわざこの時の為に釘まで買った。地味~な出費が多い。準備に余念がなかったはずだが、ここで釘を打つための板を買ってきていないことに気づいた。
仕方あるまい、公園に転がっているいい感じの太さの枝にでも打つことにした。
さぁいざ出陣!
なんという躍動感!今まさに、冷凍スライムが釘との接触を果たそうとしている!!
がち~~~~ん。
お?確かな感触。
そのままさらに数度スライムを打ち付けてみる。凍っているスライムは悲鳴も上げられない状況だ。
休日の昼下がり、青い物体で一心不乱に釘を打つ大人と、それを至近距離で撮影する大人。これは理想の休日の過ごし方なのか?と頭をよぎったが、右手から伝わるスライムの温度が、それをすぐに忘れさせた。冷たい。ただただ。
そしてある程度打った釘がこちらだ。
枝の割れ目に打ったとはいえ、わりとそこそこしっかり打ててしまった。
正直、ファーストインパクトの時点で割れてしまうと思っていたのだ。ある程度粘度があるとはいえ、所詮液体なのだから。だがそんな想像を超えてきた。スライム、お前凍ると結構な強度があるな。
どことなくスライムが誇らしげだ。
これ以上深く釘を打ち込むと、あとで抜くのが大変になってくるのでここまでにしておいた。刺さった釘をきちんと回収し、公園を後にした我々は大変満足気だっただろう。最高の休日だ。
実験をしてみた結果、どうやらある程度柔らかい材質にならスライムで釘が打てることがわかった。金槌がない場合は代用できるかもしれない。ただ、わざわざそんなことせずとも普通に金槌を買った方がいいとは思うが。
我々ドラクエプレイヤーの飽くなき探求は終わりを告げる事はないが、また一つ疑問を解消できたのはとても喜ばしい。
とりあえず、このためだけに買った12色の絵具と、28本の釘のこれからの処遇に頭を悩ませることにした。
(文・やなぎアキ)
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